for a good cause

妃Na乃

第一章 表

第1話 現実逃避


またか。


電車移動もたまには悪くないかなんて思ってみりゃ


人身事故


「また自殺だってよ、多いなぁ」


なんて声が耳に入る


死ぬ勇気がありゃなんでもできるのにな

男か女かしらねぇけど

君を動かしたのはなんなんだよ

絶望だったり、恐怖なのか?

喜んで

「やったー!めっちゃ嬉しい!はい!死ぬ!まじ!死ぬ!うえーい!」って奴はいねぇか


なんて

ブルーシートを広げる駅員を見ながら考えていた


2〜30分で電車が動き出した


休日ってなにをしたらいいかわからなかったから

とりあえず渋谷に行ってみたら

ハチ公前で人の多さにギブ

んで帰宅途中な訳


結局やりたいことなんて俺には大してない

大切な人もいなければ

趣味なんてない

ただ

「ある事」

だけをするために生きている


ただそれがなかったら


さっきのブルーシートの下にいたのは俺かもしれない


最寄駅から歩けば約8分


ここらへんじゃいいマンションだと思う

港区でオートロックに内廊下

俗に言うタワーマンション

部屋は2ldk

かなり広いが残念ながら一人暮らし


ここは自分で購入した

俺は別にボンボンでもなければ

企業で成功したわけでもない

誰もが出来るがしないことをやってる



テレビで動画配信サービスをつける


今日もまた異世界へ現実逃避するか


今ハマってる「異世界が求める寺島さん」


上場企業に勤める49歳の独身

人事課長 寺島


寺島は残業中に居眠りをしてしまい

気づくと冒険者ギルドにいた


このギルドは冒険者で溢れてしまい大変なことになっていたが

寺島の人事力のおかげでギルドが発展して行くって話

寺島と仕事をする魔法使いのリルちゃんがカワイすぎて

現実逃避できる


〜♪♪♪


スマホから寺島さんのedが流れる


「一瀬です。お疲れ様です。」

俺は中村 一瀬(なかむら いちせ)

名前だけは気に入ってる

まぁ親がつけてくれた名だからな


会社から突然の呼び出し


車のキーをとり部屋を出た


エレベーターで地下駐車場まで降り

黒のパナメーラに乗り込み駐車場をでた


会社までは徒歩で10分くらいだが

ルールで車でないといけない


港区の56階建のビルの中に会社があり

40階から56階までは全てウチのオフィスでいわゆる保険会社ってやつ



会社の地下駐車場へはいっていく

地下最階層までおりていく

地下最階層にはシャッターがひとつあるだけ

ダッシュボードに入っているリモコンを押し

シャッターをあける


中はなにもない空間だ

あるのは車止めのブロックとカードキーのかかっている扉だけ


そこをはいると薄暗いまっすぐな廊下

先にはエレベーターの扉があり


エレベーターのなかは階数表示もなく 開と閉のボタンとカードキーをあてる場所があり

カードをあてると上昇する


ただ無音のまま上昇していき音も立てず扉が開く


扉の先は社長室だ


社長室内からさっきのエレベーターの扉を見ると姿鏡になっている


「お疲れ様です。社長。」


社長は60代前半でいかにも社長らしい風格をしている

清潔感があり

アイパーにヒゲ

スーツはインポートの高級スーツを

1000万はくだらない高級時計をつけているのに

成金のギラつきはなく

落ち着いた紳士感が漂ってる


それに比べ俺はアリダスのジャージ


そんなことはまぁ毎度のことなんだが


「休みなのにすまんな」

窓からそとを見ながら口を開いた


「いえ、特にやることもありませんので助かりますよ。」


「そうか。」

というと社長は俺に近づき

一枚の写真を手渡した


「これが今回のだ」


なんともまぁ写真を見るなりニヤついてしまう


「社長!マジすか!ありがとうございます!」


心から感謝の気持ちがあふれた


そう

俺は

俺は

この為に生きてる











「いってきます。」




































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