第383話【修羅場を潜った人々】

滝は取引場所に向かった、 時刻は大体6時位、 日が落ちて来た頃合いだ。


「・・・・・」


取引場所は倉庫だった。


「おや、 お早いおつきで」


帽子を被った小柄な男が居た。


「百万均一か、 お前も早いな」

「スピードが第一でさぁ、 世界が変わっても俺は変わるつもりはないでさぁ」

「そうか、 今回の依頼って結構凄いよな

ガソリン20リットルって百万超えるんじゃないのか?」

「いや、 そこまでの価値は無いでしょ」

「そーだなぁ、 行っても50万位だろう」


のっそのっそと巨体の男と引き攣られた子分の様な連中が現れる。


「牛尾・・・誰だそいつ等」

「俺の舎弟だ」

「舎弟?」

「まぁ色々有ったんだよ、 分かるだろ?」

「あぁ・・・まぁそうだな・・・他の連中はまだ来ないのか?」

「前金だけ貰って逃げた、 何て可能性も有るな」

「プロはそんな判断を下さない・・・」


気怠そうな隻腕の女が現れた。


「美方・・・お前その腕は如何した?」

「この半年の間にね、 我ながら油断したもんだよ」

「そうか・・・残りは黒子だけだな」


びくっ、 と滝以外の全員の体が震えた。


「黒子は・・・ねぇ・・・」

「アイツ、 来るのか?」

「気を引き締めないとな・・・」

「あれ? 如何したんだお前等?」

「滝・・・お前知らないのか? と言うか今までお前何処に居たんだ?」

「え? あー色々と流れてた」

「先月の・・・知らないの?」

「先月の? 何か有ったのか?」

「それは・・・」

「おーい!!」


黒子が手を振りながらやって来た。


「お、 久しぶりだな黒子」

「滝君久しぶり!! 元気だった?」

「お、 おう、 元気だったぞ」

「私もー」


何と言うか黒子の様子が変だった。

特に変わっていないのだが、 変わっていない事に違和感を感じる。

半年間何も無かった訳が無いのに半年前と同じ感覚である。

そして周囲の人間も明らかに黒子に恐怖している。


「・・・・・」


尋ねるべきか迷う滝、 ここは尋ねてみようと口を開いた。


「それで」

「あ、 ちょっと俺時計持ってないんだけど、 今何時だ?」

「えっとねー、 7時半位かなー」


割れたスマートフォンを見ながら言う黒子。

スマートフォンの画面は真っ黒である。


「・・・・・」


よく見ると不自然なまでに黒子は笑顔である。

あ、 こいつヤバいな、 と滝は理解した。

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