第285話【鬱陶しいファン】

タコライスを食べに有名なお店にやって来た滝と黄金坂。


「いらっしゃいませー」


店員に声をかけられる。


「二人です」

「はーい、 それじゃあ」

「あー!! 黄金坂さんじゃないですかー!!」


女性客の一人が食べる手を止めてやって来る。


「知り合い?」

「いや・・・」

「ファンです!! サイン下さい!!」

「あ、 どうも・・・とりあえず何にサインすれば・・・」

「えーっと・・・じゃあこのサイン帳に!!」

「サイン帳ねぇ・・・今時・・・」

「あ、 猫ちゃんへ、 って書いて貰います?」

「猫?」

「私、 杓子 猫って言います

猫は動物の方の猫です」

「そうなんだ・・・動物じゃない猫って何だろ・・・」


サイン帳にサインをさらさらと書いた黄金坂。


「ありがとうございます!! ってあれー!?」


今度は滝の方にやって来る猫。


「な、 なんだよ・・・」

「滝 和人さんですよね!? この前のひるまで話そう見ましたよ!!

サイン下さい!!」

「サインって・・・俺は別に芸能人やタレントって訳じゃないんだが・・・」

「あー、 私は怪人ハンターのファンなんですよぉ」

「そ、 そうなんだ・・・じゃあサインを書くけど

サイン書くの初めてだから下手でも文句言うなよ」

「大丈夫ですよー!! サイン書き慣れてない人が殆どですし!!」

「そ、 そうなんだ」


そう言ってサインを書く滝。


「じゃあ俺達は飯食うから・・・」

「サインの御礼に奢りますよ!!」

「え、 いや、 悪いよ・・・」

「良いですってー!! SNSに一緒に御飯食べましたーってあげても良いですかー?」

「いや・・・うーん・・・」

「滝さん、 ここは奢られておきましょう」

「黄金坂・・・じゃあ分かったよ」

「じゃあ行きましょうか、 あ、 店員さんビール持って来て貰えますかー?」

「ビールってこんな昼間っから・・・」

「これから仕事でした?」

「いや、 仕事じゃないけど・・・」

「じゃあビールはおススメですよ!!

ここのタコライスのミートとビールの相性はもう抜群なんです!!」

「抜群って・・・」

「あ、 タコライス目当てじゃ無かったですか?

そんな事無いですよね? ここタコライスのお店ですし

黄金坂さんのSNSにも『今日のご飯はタコライスにけってーい』って書いてますし」

「・・・・・」

「・・・・・」


鬱陶しいファンに当たってしまったと思う二人だった。

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