第253話【一つ飛ばして】

ハジメが案内した先には12人の職員が居た。


「老人6人に対して12人?」

「少ないと思いますか?」

「いや、 寧ろ多いんじゃないのか?」

「そうですか? 老人1人に対して2人は少ないかと思います」

「へぇ・・・」

「まず、 あそこで指示を出しているのが桃園 夏子さん」

「桃園?」

「ウチは親族経営が激しくてね、 指示を出されている三人が

桃園 路子さん、 桃園 薫子さん、 桃園 夏美さん

向こうで備品の補充をしているのが桃園 正一さん

あっちで電球の取り換えをしているのが桃園 正平さん

正平さんの下で脚立を押さえているのが桃園 正吉さん

椅子で座っているアイツを一つ飛ばして、 窓を拭いているのが桃園 正命さん

掃除をしている桃園 公子さん、 桃園 待木さん、 桃園 みかんさん

外で一郎さんを見ている田中 公男さん

先程、 気が付かなかったと思いますが向こうの部屋にも

佐々木 太一郎さんとトミー・ジョンソンさん、 張本 久仁一さんもいます」

「一つ飛ばしたのが気になるんだが・・・」


ハジメの顔が険しくなる。


「・・・アイツは田島です、 覚えなくて良いですよ」

「何故?」

「アイツ、 仕事しないですし」

「そうなのか?」

「えぇ・・・資格を持っているからと信じて雇用したのが馬鹿みたいです

アイツには近づかない方が良いですよ」

「そんなに酷い人なのか?」

「飲み会で凄い下ネタ言って来たりとか文章すら書けないとか

もう人間として駄目な人です」

「そこまで言うのか・・・」

「そこまで言われる人なんですよ、 あの人は

もう皆関わり合いになりたくないです」

「そうなのか・・・」


哀れな物を見る目でその場を離れるハジメと魚目だった。


「さて魚目さん、 これで一応一通り自己紹介は終わりましたね」

「そうなるかな」

「それでは魚目さんのお部屋に御案内しますね」

「あぁ頼む」


魚目は部屋に案内された。

そこにあったのは介護用ベッド、 小さな冷蔵庫、 テレビ、 そして机だった。

また部屋にはシャワーと風呂、 トイレも付いていた。


「病室みたいな所だな」

「大して変わらない所ですよ、 それから部屋は防音になっているので

内緒話なんかも出来ますよ」

「ほぅ・・・それはありがたいな

短い間だろうがよろしく頼む」

「いえいえ、 黒崎に宜しく伝えておいてください、 では」


そう言ってハジメは部屋から出て行った。

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