10thSEASON

第103話【墓参り】

御国神社。

そこはこの国を守った英雄達の墓所である。

この国を守ったと言うのは怪人達と戦い死んだと言う意味である。

現在も怪人ハンター達はこの墓に葬られる事が多い。

怪人と戦う職業柄、 遺体が帰って来ない事も多く空の墓も多い。


「まさかお前の墓参りするとは思わなかったよ・・・」


滝が墓参りをしている。

手には菊の花と酒瓶を持っている。


「なぁ、 白滝」


墓標に刻まれた名前は白滝 一穂。

怪人ハンターの一人だったがとある怪人に殺されてしまったらしい。

詳しい事は機密な為、 釈然としないが良く有る事である。


「お前さんも行ってれば何とかなったんじゃないのかのぉ?」


御国神社の神職の御国 江蔵が話しかけて来た。


「住職」

「神職だ」

「あぁ、 すみません・・・」

「お前さんにも同じ依頼が来ていたんじゃろう?」

「身内の葬式で・・・」

「それなら仕方ない・・・のかのぉ・・・」

「葬式で仕事休めないのは可笑しいですよ」

「仕事のぉ・・・昔の怪人退治人は人生を賭けて戦っていたと言うのに

今の怪人ハンターは仕事感覚なのかのぉ・・・」

「仕事感覚じゃないとやってられないでしょ」

「何故じゃ?」

「見て下さいよ、 この墓の数々、 供え物が少な過ぎる」

「少ないかのぅ・・・」

「怪人に命を救われた人は大勢居るでしょう

事実、 この墓には大澤 俊二の様な英雄も眠っている」


大澤 俊二とは今から30年程前に起きた【倉沢事件】と呼ばれる

怪人五体による大量殺戮事件を解決し、 五体目の怪人と相打ちになった怪人ハンターである。


「彼の方の葬儀は大層立派だったでしょう」

「そうじゃなぁ・・・あの頃は儂も若かったがそれは立派な葬儀じゃった

国の総理大臣やらが参拝して来たよ」

「今では如何だ? 墓参りする人は少なくなっているでしょう?」

「それは・・・そうじゃが・・・」

「命を賭けて戦って守ったと言うのに墓参りを碌にされない

そんな薄情な連中の為に人生なんて賭けられませんよ」

「だがのぉ、 墓参りする人が居ない訳でも無いんじゃよ」

「それはそうでしょう、 でもレアケースだ」


そこまで言うと滝は立ち上がった。


「あぁ、 滝君、 ちょっと良いかのぉ?」

「何です、 住職」

「神職だ」

「すみません」

「ちょっとお客さんが来ていてな

怪人ハンターを紹介して欲しいと言うのだがどうじゃろうか」

「はぁ・・・」

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