第86話【質感】

「いてえええええええええええええ!!

いてえええええええええええよぉおおおおおおお!!」


絶叫で宝城は目が覚めた。

叫んでいるのはスタッフの一人、名前は失念してしまった。

周囲は暗く何も見えない。


「くっ・・・」


宝城はスマートフォンを取り出して懐中電灯のアプリを起動し灯を確保する。

周囲が瓦礫で崩れて埋まっている。


「何が・・・」

「いてえええええええええええええ!!いてえええええええええええ!!」


絶叫を頼りに進む宝城。

スマートフォンの灯は頼りなく薄暗いがそれでも前に進んだ。


そして

とした質感を靴に感じた。


「え・・・」


スマートフォンを下にかざす、するとそこには真っ赤な血。


「いてええええええええ!!いてええええええええええええええ!!」


絶叫するスタッフから溢れ出ていた、いや血だけではなく・・・


「っうぉおおおおえ!!」


凄惨な光景を見た宝城は嘔吐した、絶叫をしているがもうあのスタッフは助からない・・・


「はぁ・・・はぁ・・・」

「お”い”!!誰”か”生”き”残”り”は”居”な”い”か”!!」


氏家の叫び声が聞こえる。


「さっきの人!!」


宝城は氏家の声に元に駆け寄った。


「お”ぉ”!!さ”っ”き”の”ア”ナ”ウ”ン”サ”ー!!生”き”て”い”た”の”か”!!」

「えぇ!!貴方も御無事でしたか!!」

「・・・・・何だって!?」

「貴方も御無事でしたか」

「・・・・・・・・・・」


耳を指差す氏家、良く見ると耳から血が溢れている。


「耳が聞こえないのですか?あ・・・」


宝城はスマートフォンでメール作成画面を開き。

『耳が聞こえないのですか?』と入力し氏家に見せる、氏家は頷いた。


「そんな・・・」


氏家も自身の携帯電話を取り出す。

画面には『スタッフを見つけたが瓦礫の下敷きになっていた』と書かれていた。

気が付くと叫び声が消えていた、如何やらさっきのスタッフは息絶えた様だ。


「如何します?あ」


声に出して再度スマートフォンに『如何します』と入力する。

氏家も携帯電話に『とりあえず奥のシェルターに向かおう、ここだと崩落して死ぬかもしれない』

と入力して見せた。

『さっきのバイトの子は見かけなかったか?』と氏家は聞いたが。

宝城は黙って首を振った。

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