第48話【禍蜻蛉】

「禍蜻蛉先生のご到着です!!」


スポットライトに照らされドアが開かれ眼鏡をかけた男が入って来る。

痩せ型だが筋肉質で首にネックレスをしている、身形の良い男だった。

誰眼鏡からマイクを受け取る禍蜻蛉。


「やぁ皆、今日もオフ会楽しんで行ってくれ!!」


ファンがまばらに沸く。


「・・・まぁミステリーファンだしな叫ばないか」


誰眼鏡にマイクを返す禍蜻蛉、そして誰眼鏡は夢宮を指差し

禍蜻蛉が夢宮の元に向かって来る。


「おいおい、こっち来たぞ」

「何だ何だ?」

「やぁやぁ、君がドリーマーか、誰眼鏡から聞いたぞ

俺の熱烈なファンらしいじゃないか」


禍蜻蛉が夢宮に声をかける。


「え、えぇ、まぁ」

「大洞探偵の事件簿Ⅱの犯人の思い出の曲は?」

「マカロニヴァズウェティ」

「おぉ、正解、凄いな良く覚えている

じゃあ大洞探偵で最も好きな回は?」

「・・・・・Ⅶですね」

「分かるか!!俺も書いていて一番の名作だなと思うんだよ!!」

「最近のも好きですけどねー」


あきんどが口を挟む。


「そうなんだよ、最近の奴も良い作品の筈なのに非難する奴が多過ぎるんだ

全く何がアクション物へ路線変更だよ

シリーズⅢⅩもやっているのに今更そんな事するかっていうんだ」

「でも最近の作品は・・・」


マツが呟くと禍蜻蛉が睨みつける。


「何か文句でも有るのか?」

「い、いえ別に・・・」

「分かれば良いんだよ、じゃあなドリーマー君

これからも俺の作品をよろしくな」


そう言うと禍蜻蛉は松柳の事務所の所属アイドルの元へ向かって行った。


「行ったか・・・」

「マツさん、さっきのは不味いよー」

「口が滑った・・・すまん」

「ファンクラブを追い出されたらどうするのー」

「追い出される?」

「禍蜻蛉先生は気に入らないファンをファンクラブから追い出すんだよ・・・

まぁ最近は追い出すとかしないみたいだが・・・」

「そうなんですか・・・」


再度会場が暗くなる。


「皆さん注目ー!!これからビンゴ大会を始めますよー!!」


誰眼鏡が叫ぶ。


「最初にビンゴになった人には最新ゲーム機Swingが当たりますよー!!」


会場が湧く。


「前でビンゴの景品は禍蜻蛉先生のサイン入り新刊だったのになぁ・・・

物悲しい」

「でもSwingだよ!!これは燃えるなぁー!!」


はしゃぐあきんどを後目に溜息を吐くマツであった。

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