1stSEASON

第1話【蜘蛛怪人の凶行】

「奥さん聞いた?向こうの渡鳥さん、公園で首吊りになっていたんですって」

「あらやだ!!また例の蜘蛛怪人の仕業?」


御婦人方が井戸端会議をしている。


「えぇ、首に粘着性の蜘蛛の糸で首を絞められたんですって」

「これで三件目・・・私達も引越した方が良いかしら・・・」

「そんな事は有りませんわよ」


派手な格好のおばさんが御婦人方に近付く。


「ちょ、町内会長・・・」

「聞けば犠牲になった・・・誰でしたっけ?」

「渡鳥さんですよ」

「彼は聞けば物書きなんて陰気な職業じゃないですか、男の癖に情けない」

「は、はぁ・・・」

「最初の犠牲者はケーキ屋、次は花屋

男に相応しくない職業に就いた天誅が下ったのですわ」

「・・・そ、そうだ町内会長!!私用事を思い出しましたわ!!」

「わ、私もそろそろ夕飯の支度をしなければ!!

それじゃあ町内会長!!また今度!!」

「えぇ、お気を付けて」


ヒラヒラと手を回して町内会長は御婦人方を見送る。


「さてと私も行きますか」


町内会長はスーパーに向かってメロンを購入して、とある家に向かった。

家の表札には


渡鳥 七七

夢宮 徹


と書かれていた。

町内会長はインターホンを鳴らした。


「はい・・・」


インターホン越しに覇気の無い声がする。


「町内会長です、少し宜しいでしょうか?」

「どうぞ・・・鍵は開いています」


町内会長はドアを開けて家に入った。

そこにはしょげた黒髪の中性的な少年が居た。


「町内会長・・・どうしてここに?」

「渡鳥さんが亡くなったから」

「叔父はまだ死んでいません!!」


怒声を挙げる少年。


「・・・夢宮君、気持ちは分かるけど首を吊られたのなら・・・」

「叔父は意識不明ですがまだ生きています!!」


夢宮と呼ばれた少年は重ねて否定する。


「あ・・・そ、そうだったのごめんなさい・・・

こ、これメロンを買って来ました、どうぞ・・・」

「・・・すみません、大声を出して」

「こちらも不躾だったわ、ごめんなさい・・・」


沈黙が流れる。


「・・・お茶でも如何ですか?」

「い、頂きます」


町内会長は夢宮の誘いに乗り家に上がった、居間には仏壇が有ったので

町内会長は線香を上げた。


「・・・すみませんわざわざ」

「いいえ・・・ところで何方の御仏壇?」

「僕の父と母です・・・」

「御両親を亡くされていたの・・・それは可哀想に・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る