夏の雪

【夢を見ました】


阪急電車の四条烏丸駅で、うつむいてベンチに座り、長い髪をカーテンのように垂らして泣いている。もう何年も一人の夜を過ごしたことがない。

一人になれないと、とてもやるせなくて寂しさがつのっていく。


思い切って近くのホテルに一人で泊まることにした。

久しぶりなので、一人でいると戸惑う。部屋を出てホテルの中をうろうろ歩きまわっていると、廊下の突き当りに来た。大きな窓から外を見ると、見慣れた町並みが霞んでいる。


雪が降ってきた。夏なのに。

どんどん降り積もってきた。


ホテルの中庭にアヒルがいて卵が山積みになっている。料理に使うのかな。

と、突然アヒルが卵をすごい勢いで割り始め、あっという間に走り去った。

夏に雪が降るから、こんなことも起こるんだ。


暗い空でゴロゴロと雷が鳴り始めた。結婚式が始まるのだ。

私はその、安っぽい式場の装飾係をする。

花嫁は悲しそうに泣いているが、親戚たちは無視している。きっと、花婿の浮気症のことで悩んでいるのだろうから、その件についての話を聞くのは面倒なのだ。

でも、花嫁の本当の悩みは、そんなことではない。

花で埋め尽くされた部屋では鏡が隠れていて、花嫁は自分の姿を満足に確認できないことに腹を立て、悲しんでいるのだ。

花嫁にとっては、鏡がすべてなのだから。


窓から外を見ると、雪をかぶった伊吹山が見えた。

中庭の人影の中に懐かしい人の姿を見つけたので、あわてて外に出て追いかけようとしたけれども、見えなくなってしまった。一気に涙があふれでて泣きながら呼ぶのに、声は届かない。


結婚式では、オルガン奏者がいなくなってしまったので、私が代わりに弾くことになった。

手伝い用のエプロンをつけたまま、結婚式っぽい曲を奏でた。


家に帰る途中で、大雨が降ってきた。通りの軒先で雨宿りをしていると、しばらく会っていない友達と偶然出会った。

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