白い道

【夢を見ました】


キッチンに長い間立っていた。

用事はいつまで経っても終わらないので、途中で外に出た。

賀茂川に沿った加茂街道の一つ西の通り、北山通から今宮通りに抜ける道を歩いていると、土手も家も車も白く溶けたようになっている。すべて石膏で固めたようにも見える。


細い通りの向こうに見える今宮通の風景は普段と変わりなく、人々の動きや色彩が目に入ってくるのだが、私は体が動かない。

時間が止まっているかのようだ。

このままここに閉じ込められる恐怖にかられながら、必死で脱出を試みる。


どのくらい時間がたったかわからないが、もがいているうちに通りの近くにたどり着いた。狭い道から力を振り絞って今宮通に出ると、何事もなかったかのような風景だ。

しかし、振り返るとやはり真っ白な世界で、そこに人影もなく、やはり時間が止まっているように見える。


加茂街道を歩くといつものようにひっきりなしに車が通っている。

歩道からさっき通った道を見下ろしてみると、特に変わった感じもしなかったので、猫を下ろしてみた。

猫は下までゆっくり歩き、下の道に着くと横向きに倒れて起き上がらなかった。


その時、目の前の家で、2階の窓が開いて女性が顔を出し「ここに来るとおしまい・・・動けないまま骨の中から溶けていく」と言う。

私は夢中で走った。北に向かって。


いつもの喫茶店で、カウンターの中でマスターがコーヒーなどいれている。ふと手を止め、紙に大きく『の』の字を書いて私に向けた。

マスターは、私が何か良くない霊に狙われているから助けてあげようと言う。そして自分のポロシャツに何かの絵を描いて持たせてくれた。


私は疑問に感じたが、家に帰って小さい娘の体にすっぽりかぶせると、マスターが描いた絵がすっと消えた。

えっ・・怖い・・私は娘を連れさらわれないように、しっかり抱きしめた。


友達が来た。そろそろ次のライブがあるから準備しないと。

でも私はまだはっきりしない気分である。まるで、今もあの白く溶けた道に引き込まれているようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る