「友人」

 久方ぶりに顔を出した親友を我が家へ招いた。ワンルームの少々手狭な我が家だが。

 プルトップの蓋をプシュッと開け、まずは一口あおる。

「大変だったな。……月並みな言い方で悪い」

「大丈夫。話を聞いてもらえて助かる。噂は聞いてるだろうけど」

「死因は毒で、事故だってことしか知らねえよ」

 確かにあれこれ耳にしていたが、俺は重々言葉を選んだ。

「ああ。ただ妹が……」

「兄妹仲いいんだな」

「どうかな。俺のほうは歳がだいぶ離れてるし」

「妹ちゃんは知ってて毒の花を選んだんじゃないんだろ」

「もちろん。……、」

 一瞬だけ、視線が彼方を見ていたのは気のせいか。

「誰のせいでも、ないんだ……誰の……」

 この日以来、母親の死について、親友が何か語ることはなかった。


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