第173話勉強会②

皆が凜の手料理を食べ終わると、晴斗はお皿をキッチンに運んで戻ってきた。


昼御飯を食べ終わった皆は、テーブルに教科書やノートを出して、勉強会が始まった。

「先生が晴くんに、英語のテストだけほぼ満点って言われてたけど‥得意なの?」

「他の教科より得意だな、凜より点数取らないように頑張ってるんだよ、英語以外本気だしてないだけ‥」

「本気でやっていいんだよ」

「…無理、冗談…英語だけの点数で戦おうか?」

「全教科です」

「ですよねぇ」


晴斗は凜を見ると英語の教科書と参考書を見ていた。

「凜は英語が苦手?」

「…苦手だよ‥晴くんに聞いても発音が良すぎて聞き取れない」

「小さい頃から洋楽ばっかり聞かされ、英語の勉強もさせられてたな」

「ペラペラなの?」

「喋れる‥喋れない‥どっちだ?」

「…もう、ふざけないで、どうして家族に隠し事するの? ペラペラなんでしょ?」

「凜の困った表情も好きだからだよ、喋れると思うなら喋れるかもな‥‥」


晴斗が笑っていると、テーブルに置いた手をペンで突っつかれて振り向いた。

「晴斗くんは隠し事多そうで、嘘つきのイメージがあるよ」

「…嘘はつかない、冗談なら言う」

「私達からすると、嘘になるからね」

「あっそ、勉強しに来たんだよな、説教しなくていいから勉強して」

「二人が直ぐに話し始めるからだよ」

「…ふーん」


皆が英語の勉強を初めると、晴斗は凜を眺めていた、視線に気付いたのか凜と目が合うと、晴斗はニコっと笑みを送った。

「…な、何?」

「眼鏡掛けさて、勉強教えてほしいなって‥」

「晴斗くん、気持ち悪いこと言うよね」

「最近の美優紀って口うるさいよね…バレンタインチョコの時は可愛げがあったのに…痛っ」


凜に耳を引っ張られると晴斗は叫んだが、女子友達も笑っていた。

「晴くん、遠回しに…可愛かったって言わなかった?」

「言ってない、マジで言ってない…耳が痛いんだけど‥離して」

「遠回しに言ったよ!」

「…凜より小さいから‥子供に説教されてる感じが気に入らなかった」

「ち、ちょっと失礼じゃない?」


美優紀が怒ると、凜も怒っていた。

「晴くん、麻莉菜にも怒られてるよね、言って良いこと悪いことが分かんないの?」

「わかるよ、ただ小柄で可愛いと思うから言うんだよ」

「美優紀ちゃんも可愛いと思うの?」

「身長だけな、マジでだけな、俺はロリコンじゃない…痛っ」


背後から忍び寄られ、美優紀は丸めた教科書で晴斗の後頭部を刺すように振りかぶって殴られていた。

「晴斗くんと同い年で…失礼‥本当に失礼」

「何が?」

「チビって何度も言わなくても…」

「何度も言ってない、てか小柄で可愛いのは本気で言ったよ、黙れば完璧、視界に入ってこなければ尚良」

「さすがに‥傷付く‥」

「俺の冗談を本気にすんな、嫌なら家にあげない、会話すらしてない、可愛いも冗談? 凜の怒った表情が見たかった」

「晴くんの冗談は分かんないよ」

「地元の友達には通じるんだけどな、凜は俺の言い方と表情分かんないんだな、友達歴も兄妹歴も短いからな‥仕方ないよな」


凜も友達もこそこそと集まって話をしていた、視線が何度も合うと、晴斗は舌打ちして凜を見ていた。

「優菜ちゃんが、晴斗くんの冗談は鬼畜だから気を付けてって言ってたけど…鬼畜すぎるね」

「凜の前じゃないとからかわないよ、安心して」

「優菜ちゃんに聞いたけど、好きな人と大切な人の前でからかって、色んな表情を観察してるんだよね」

「合ってるような‥合ってないような」


また女子だけで話始めると、晴斗は聞き取れずに機嫌が悪くなった、凜は戻ってくると皆に見えるようにテーブルの上で手を握ってきた。

「な、何で握ってくんの?」


晴斗が狼狽えると友達は笑い始め、凜は頬を染めて見詰めてきた。

「見詰めてくんな」

「…み、皆の前だから?」

「うっせぇわ」


握られた手を払うこともなく、驚いて皆を見ていたが友達たちはニヤッと口角をあげていた。

「凜に何を言った?」

「晴斗くんは不意打ちに弱いって聞いてたから…好きな人に手を握られるとどうなるかと思って…目が泳いで面白いね」

「…べ、勉強するから…黙ろうな」


凜の手を振りほどくと静かに教科書に視線を移したが、ケラケラと笑われていた。

「うっせぇわ、真面目に勉強してんだよ」

「毎回凜ちゃんの横顔見てるだけでしてないよね?」

「少し‥してるけどな」

「授業中も凜ちゃんガン見して目が合うと笑み送ってるよね…凜ちゃんが笑み送ると黒板見るよね」

「可愛いからな、恥ずかしくなるんだよなぁ」

「抱き付くのは恥ずかしくない?」

「顔見えないから恥ずかしくないな、皆の前で背後から抱き付くとあたふたするからな、そこも可愛い、キャッて言われると楽しいよね」


晴斗は楽しそうに言うと、皆は呆れていた。

「凜ちゃん見た方がいいよ」


優香に言われて凜を見ると、唇を噛んで目を細めていた。

「なに?キスの時間か?皆の前で?」

「ふざけないで、もう学校では…私で遊ばないで」

「家だけにする」

「どうして皆の前でそういうこと言うの?」

「好きだから、好きな子いじめるみたいな?」

「子供じゃないでしょ」

「俺は子供だよ、結婚する年きてないしなぁ、凜とするから安心してね」

「…もう、ばか‥」

「皆見て見て、凜の真っ赤な顔が可愛い、照れて可愛い、何で飽きないんだろう…」


晴斗が皆に言うと恵に後頭部を殴られ、頬を美優紀に叩かれ、優香に蹴られていた。

「女の子の表情で遊んで興奮するなんて‥最低…凜ちゃん殴ってあげたからね」

「…晴くんは一度ぐらいじゃ‥分かんないよ、足りないよ」


晴斗は羽交い締めにされて、凜に股がられた。

「晴くんは学校でも‥‥け‥結婚とか言って‥‥遊ぶ気でしょ」

「遊ばない、本気で‥‥」


口を塞がれ苦しんでいたが、身動きがとれなかった、腕を動かそうにも、三人係で捕まれていた。


晴斗が力を抜くと、凜は手を退けて頭を擦ってきた。

「学校では言ったらダメだからね、頭が可笑しいと思われちゃうよ」

「凜が思わなければ良い、苦しかったからキスして」

「しません」


羽交い締めから解放されると勉強を再開したが、晴斗は疲れてやる気をなくしていた。

「晴くんお勉強しなさい、テレビ消しなさい、ベッドから降りなさい」

「…やだ、また変なこと言ってまう」

「ふざけないでしなさい」

「俺はからかわれるの好きじゃない‥からかうのダイスキネ」

「本当に怒るよ」


晴斗は凜の横に座ると腕を組まれてペンを持たされていた、友達には何も言われずに勉強をしていた。

「休憩しよ」

「まだ、30分しか経ってない‥ダメ」

「分かった、英語のテストで満点とるから休憩させろ」

「ダメ、他のテスト勉強しなさい」

「なら、残りのテスト真面目にするから‥休憩させて下さい」

「さっきは本気でやっても、点数取れないって言ったよね」

「嘘に決まってんじゃん、中学の頃は保健室登校をさせられ、保健室の先生にマンツーマンで勉強ばっかりさせられたんだぞ、休憩時間が悲惨だったが、凜より資格持ってるんだよ、バカにすんな」

「何の資格持ってるの?」

「俺は自分を自慢する趣味はないから見せない、とにかく期末のテストは全教科が60点で押さえたのに、凜に負けたのが気にくわない、もうちょっと点数取れば良かった…」

「私は晴くんよりバカじゃない」

「急に怒るな、俺の期末のテスト見るか?綺麗に60点で押さえてるぞ、覚えてるか?」

「覚えてない、見せて」


晴斗はキャリーケースを押し入れから取り出した、皆も中を覗こうとしていた。

「見んな、大事な紙が入ってるからな」


ベッドの上でこそこそとキャリーケースのを開けると、見えないように紙を取り出して凜に渡していた。

「58点もあるよ」

「見栄を張ったから‥あるだろうな、でも60問しか解いてないからな」

「60問以上解いてるよ」

「あるだろうな‥見栄を張ったから…」

「実際、私より頭が悪いんでしょ」

「どうだろうな、凜がキャリーケースを取り出すときに止めないから‥見栄を張ることしか出来なくなった」

「意味分かんないよ…ばか」

「ばかって言う方が馬鹿です、でも資格持ってるからな」

「簡単な資格でしょ」

「どうだろうな~…」

「キャリーケース見せなさい」

「俺の写真取り出したとき見たよね、見せないよ」

「写真しか見てない…」

「今から勉強するから邪魔するな」


キャリーケースを閉じると、ダイヤル式の鍵を掛けて凜に渡していた。

「晴くんはいじわる‥鍵閉めないで」

「勉強中です、静かにしてください」


無視して勉強をしていると、18時になっていた。

「アラーム鳴ったから帰れ」

「言い方酷いよ」

「凜と二人になりたい俺の気持ちを考えろ、毎日来られると正直邪魔な」

「今のは冗談だよね」

「どうだろ…まぁ、早めに帰らないと暗くなって親が心配するぞ」

「以外と考えてるんだね、優しいね」

「うるさいわ」

「遠回しに帰れって言わなくても、親が心配するから帰った方が良いよって言えばいいのに‥」

「黙ろうな、わかったら電話ぐらい親に入れとけ…男の家に居るからってな」

「まだ居て良いんだね」

「電話して許可貰えたらな」


皆はスマホを取り出すと、声が被らないように交代で掛けていたが、最後に美優紀の番になった。

「美優紀泊まって帰れ、親は居ないから泊まれよぉ」

 

晴斗がふざけると凜に頭を殴られ、スマホから「誰と遊んでるの」と女性の怒る声が聞こえ始めた。

「晴斗くんのせいで誤解されてるんだけど」

「知らない、泊まるの泊まらないの?」


美優紀は母親に、友達の家でテスト勉強していると言うが信じてもらえなかった。

「俺にちょっかいかけるから罰が当たったな」

「本当に誤解されてるんだけど‥」


美優紀は、頭が可笑しい男友達がふざけているだけと教え、恵と優香も居ると教えていた。

「晴斗くんって子に替われってよ」

「えっ、ふざけすぎた?」


晴斗は電話を変わると、ペコペコ電話越しに頭を下げて謝っていた、怒られたが言い返すこともなく美優紀に電話を返した。

「変なこと言うから‥怒られてたね」

「確かに怒られたな、彼氏なのかって、違いますって言っといたからな」

「当たり前だよ、自分が誤解させたんだから」


晴斗は横になると天井を見上げて「どっと疲れた」と言ってボーッとしていた。

「晴くん勉強やめる?」

「やめる、久しぶりに疲れた」

「言い返さなかったね、偉い偉い」

「さすがに友達の親に言い返さないよ、てか頭擦るな」

「皆の前は嫌だったね、ごめんね」

「バラすな、てか‥もう膝貸して」


凜の膝に頭を置いて目を閉じていた、皆は顔を覗いたのか「子供だね」と言われて、晴斗は黙っていた。

「よしよし、晴くんは子供だもんね、皆の前でよしよししてあげる」

「好きなだけ撫でて‥疲れた、てか晩御飯まだ?」

「メールで麻莉菜が作るんだって」

「そっか、膝は落ち着く‥‥」


晴斗はずっと頭を撫でられ、皆は勉強していた。

「足伸ばして」

「首が痛いの?」

「う~ん、正座だと高いかな」

「頭あげてね」


肘を付いて、凜が座り直すと頭を置いていた。

「晴斗くん、生足は気持ちいいですか?」

「…うん‥気持ちいいよ…えっ、うるせえな」

「私達のこと忘れてたね」

「忘れてた、恥ずかしい」


晴斗は凜のスカートを捲って顔を隠すと頭を殴られていた、友達は一部始終を見ていた。

「さすがにスカートで顔を隠すのは…」

「…恥ずかしくて‥皆の前でごめん」

「…も、もうしないで」

「うん‥まだ膝に置いてても…良いかな?」

「良いよ、晴くんは家では甘えん坊だから」

「……皆の前‥‥言わないで‥」

「ごめんね、よしよししてあげる」

「…許す」


友達は、晴斗が家で違う喋り方、凜に甘えた姿を見て、頭を擦ってお腹を抱えて笑い始めた。

「…俺で笑わないで」

「心は乙女?」

「凜‥皆が虐めてくる」

「晴くんが子供っぽいからだよ、外面外すから」

「はぁー、寝る、凜の膝で晩御飯まで寝る」

「起こすからね」

「スカートで顔隠させて」

「だめです」


晴斗は机で表情が見えないように隠すが覗かれ、凜のお腹に顔を押し当てていた。

「凜ちゃんも学校で嫌がるのに、家では甘やかしてるんだね」

「…晴くんが寂しがり屋さんだから‥外面悪くて‥家で私が居ないと寂しそうだから…」

「凜は黙ろうな、恥ずかしくなるから黙ろうな」

「ごめんね」

「凜のお腹がぷにぷにしないから‥‥誰かお腹さわらせて」

「耳朶触る感じで言わないで‥」

「うん、凜と麻莉菜ので我慢する…膝が痺れてない?大丈夫?」

「まだ大丈夫だよ」

「晩御飯に起こして‥」

「お風呂の支度しないの?晴くんの仕事でしょ」


晴斗は起き上がると、お風呂の支度をして寝室に戻ってきた。

「晴斗くん、お膝でおねんねできまちゅね」

「優香を本気で張り倒すぞ、凜良いかな?」

「女性に手を出せないんでしょ、美優紀ちゃんも優香ちゃんも、晴くんがからかうから、からかわれるんだよ」

「はぁ~…凜から抱き締めて」

「寂しいくて落ち着かなくなったの?」

「うん」


晴斗は皆の前で抱き締められると、笑みがこぼれていた。

「晴斗くんを甘やかすから学校でも抱き付かれるんだね、納得したよ、怒られても毎日抱き付かれてたから…そういうことね」

「…ど、どういうこと?」

「凜ちゃんは家では大胆なんだね」

「…晴くんが悲しそうにするから‥‥」

「凜ちゃんも晴斗くんが好きなんだね」

「……」

「嫌いなら抱き締めたりしないよね?」

「…うん」

「両思いなんだね」

「……」


凜の顔が真っ赤になり、晴斗は顔を見上げられていた。

「凜は恥ずかしがり屋だからな、からかうな」

「学校でも抱き締める凜ちゃんの方が良いんじゃない?」

「このままの凜で良いよ……恥ずかしがり屋の凜も好きだからな、友達の言ったことで考えるなよ、分かったか?」

「‥‥うん」

「顔あげて、泣いてないよね?」

「…泣いてないよ」


凜が泣いてないと分かると、抱き締めて頭を擦っていたが「エヘヘ」と凜が笑い始めた。

「擦られると嬉しい?」

「…うん、晴くんに擦られると‥‥」

「皆の前で言うな」

「…忘れてたぁ」


どうでもよくなったのか凜は甘え始めた、友達も静かに見ていた。

「友達が帰るまで我慢な」

「…うん」

「会話が丸聞こえなんだけど…そのぉ‥二人は付き合ってるの?」

「そんなところだな」

「あぁ~‥内緒って言ったでしょ、バラしたらダメって言ったのに」

「ごめんね、バラされると二人で友達やめような、凜が虐められたら女性でも半殺しにするから安心してね」

「私達バラさないからね、凜ちゃんファンと晴斗くんファンの子に私達が‥‥嘘付き扱いされそう」

「えっ、誰のファンだって‥聞き間違い?」

「晴くん、聞き間違いじゃないよ…晴くんにお昼に中学生も他のクラスも見に来てるんだよ」

「俺は教室で食べないから知らないや」

「…お手紙貰ってるでしょ」

「急にゴミ渡されて、凜に言われて受けとってるけど‥ごめんねって一応言ってるよ」

「また読まずに捨ててるの?」

「ゴミだから捨てるだろ」


凜も友達も怒ると晴斗は床に座らされ、友達は立って凜はベッドに座っていた。

「しっかり読んで断らないと可愛そうだよ、分かってる?」

「どうしてその場で断るの?」

「気持ちを伝えるためにその子は悩んで書いた手紙だよ」

「晴くんはどうして読まないの? 可愛そうだよ」


皆に怒られると、晴斗は俯いて黙り混んでいた。

「なんとか言いなさい」

「…勉強しないの?」

「晴くんはしないでしょ、どうして読まないの?」

「…凜が隠すから‥さらけ出せば‥ゴミ貰わなくて済む‥凜も悪い」

「…私も悪かったです」

「…俺だけのせいにしないで‥凜に怒られると‥‥最近苦しくなる」

「…ごめんなさい、晴くん泣かないでね」

「自分は悪くないって言い方しないでね」

「…うん」

「凜のせいで傷付いた‥頬で許す」

「…皆の前で?」

「うん」


凜に頬にキスされると、ニコニコして皆を見ていた。

「学校と家では凜は違うよね!」

「…晴斗くんも違うけどね」

「あぁ…勉強しないなら‥帰ってね」

「まだ18時半だよ、晴斗くんは寝てていいから」


皆は飽きずに勉強を始めると、優香は晴斗に手招きしていた。

「なに?」

「ベッドやめて、凜ちゃんの膝で寝ない?私達は学校で言わないけど‥」

「恵は元々俺達のこと知ってたし‥二人を信用していいのか?」

「していい、キスのプリクラも誰にも見せてない」

「俺は待ち受けにしてるけどな、まぁ‥凜の膝で寝る…皆は勉強していいからな」


横になると、凜は足を伸ばして座り、晴斗は膝に頭を置いた。








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