第172話勉強会①

テスト当日から数日が経っていたが、学校で晴斗は放課後を迎えると頭を抱えていた。

「今日も凜ちゃん家で勉強会だよね?」

「だから、俺の家な」

「晴くんが良いなら‥‥」

「晴斗くんは良いんだって」

「言ってねぇよ、凜と二人で勉強したいから君達邪魔な、お菓子食い過ぎな、飲み物も勝手に飲み過ぎな、昼御飯も容赦なくご馳走になるな」


晴斗は捲し立てるように教えた、友達は溜め息をついた。

「髪染めてるよね、モデルの晴だよね…バラされたい?」

「俺じゃない‥頼むから家にくるな」


晴斗が言っても無視され、友達は凜と話始めた、何度もしつこく言われた凜は「良いよ」と答えた。

「マジかよ、凜と二人が良かった…やってらんねぇ」

「晴くん、友達と勉強した方が楽しいよ」

「楽しくねぇよ、ストレスだよ」


晴斗は文句を言いながら教室を出ると、麻莉菜が手を振りながら歩いてきた。

「晴兄ー」

「無理だからな、家で勉強会とか言うなよ」

「ケチ、晴兄は女子だけ呼んで勉強会するんでしょ」

「アホか、凜が連れてくるんだよ、俺は誘ってないからな」

「晴兄も男友達と勉強したらいい、女子に囲まれて鼻の下伸ばしてるよね?」

「伸ばさねぇよ、てか凜以外に魅力が感じないね…」

「晴兄‥後ろに気を付けてね」


晴斗は振り向くと、恵と美優紀と優香に睨まれ、凜に「ばか」と恥ずかしそうに言われた。

「なに?」

「魅力がないとか言うくせに、凜ちゃんの部屋で足見てくるよね?」

「あぁ、魅力は無いけど‥見るのは興味だな‥いや本能?趣味?」

「晴くんふざけてますね、来なさい‥お話があります」

「嫌です、ごめんなさい」

「晴兄が気持ち悪いこと言うからだよ」

「…怖いから、凜の怒りを鎮めて…友達呼んで良いから‥」


晴斗は麻莉菜の肩を掴んで、凜に差し出した。

「凜姉ちゃんがどうして怒るの?晴兄の彼氏じゃないよね?」

「そうだけど、身内として家族として、晴くんが外でも足ばっかり見初めると思うと嫌じゃない?直さないといけないでしょ!」

「直らないでしょ、諦めた方が良いよ…だって晴兄ってド変態のバカだから」

「やっぱり晴くんの癖だから諦めた方が良いの‥かな?」

「だって最近、一緒にお風呂に入ろって言ってくるよね、家族風呂があるんだから、入るぐらい良いじゃんって言ってくるんだよ…考え方がおかしいから疲れるだけだよ」

「そうだよね、怒ってもどうしてって聞くもんね」


凜と麻莉菜が教室の前で言うと、聞いてたクラスメートのと他のクラスのだんじょから、晴斗に何とも言えない表情から、視線が突き刺さり、暴言が聞こえ始めた。

「…二人とも‥学校なん‥だよ」


晴斗は二人に近付いて消え入りそうに教えると「あっ、ごめんね」と二人に謝られたが、逃げるように一人で学校をあとにした。


晴斗はコンビニに寄ってカップラーメンを買って家に帰ったが、二人はまだ帰っていなかった。


着替えずに、リビングでカップラーメンをたべていると、バタンとドアの閉まる音と話し声が聞こえた。

「晴くん、回りに気づかなくてごめんなさい」

「…もう良いよ、俺が悪いんだから‥とにかく家族と風呂に入るとおかしいんだよね?」

「…おかしくないよ、晴くんの考え方がずれてるだけ」

「元々俺はおかしいから、今日は一人で勉強するからね」


フードを取らずにラーメンを食べていると、凜に顔を覗かれた晴斗は俯いた。

「晴くん泣いてたの?」

「…泣いてない…暴言吐かれ、怖い表情向けられて気付いたけど‥自分の心が弱くなってた、ショックだったよ」

「晴くん本当にごめんなさい」

「謝らなくていい、凜も麻莉菜もおかしい俺につき合って困らせて‥ごめんね」

「晴くんが子供っぽくなってるから可愛いよ、本当に困ってないよ」

「本心?」

「うん、一緒にお風呂に入ってあげたいけど‥麻莉菜の前で入りにくいから我慢してね」

「わかった」

「お勉強は皆とするよね?晴くんが居ないと‥寂しい‥隠れて手を握りたい」

「一緒にするよ」


凜に笑みが戻ると昼御飯を暖め直していた、三人の友達の分まで作っていた。

「あいつら、家に帰って食えよなぁ」

「美味しいって言ってくれるから‥私は嬉しいんだよ」

「…凜が作れば美味しいからなぁ、まぁ別に凜が褒められたからじゃないけど…お昼ぐらいなら友達に凜の手料理食べさせてもいいかなぁ」


凜はクスクス笑い始めた、晴斗は寝室で着替えると溜め息が聞こえた。

「どうして目の前で着替えるの」

「見なきゃいいだろ、俺は毎日この寝室で着替えてんの、変態どもめ」


着替え終わると、寝室に昼御飯が並べられた。

「やっぱり凜ちゃんの手料理美味しい」


晴斗は一人で嬉しそうに笑っていた。

「なんか凜が褒められると、俺が嬉しいんだけど‥なんでなん?」

「知らないよ」

「今日、俺に冷たくない?」

「変態がうるさいんだけど」

「ちび美優紀は口がうるさいね」

「泣きそうな顔して、一人で帰っちゃって」

「泣かねぇよ、ばか」


美優紀と言い争っていたが、またバタンとドアの閉まる音と笑い声が聞こえた。

「晴兄来てー」


晴斗はパーカーを着てドアを開けると、麻莉菜の友達も立っていた。

「晴斗先輩、お邪魔してます」

「柚か‥恵姉ちゃん居るよ」

「知ってます」

「まぁ、リビングに入らないでね、皆に言ったからね…」


麻莉菜の友達に伝えると、晴斗はドアを閉めて皆が昼御飯を食べ終わるまでベッドに横になった。

「子供に言い聞かせる言い方で面白い」

「……」

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