第160話疑いの眼差し
晴斗は着替えてリビングに向かうと、台所から包丁を持った麻莉菜に殺されると勘違いするほど程に、睨まれていたが、静かにソファーに座った。
麻莉菜の舌打ちと溜め息が何十回も聞こえていたが、テレビから視線を向けることは無かった。
…包丁持ってるから絶対見たら殺されるな。
「晴兄」
「はい、何ですか?」
麻莉菜に呼ばれると、晴斗はソファーから立ち上がった。
「何で凜姉ちゃんがノーブラなのかなぁ」
「知りませんけど、本人に聞いたらよろしいかと…」
「抱き付いてたよね!触ったの?」
「麻莉菜に関係ないと思います」
「私の触っといて‥お姉ちゃんのも触るの?どうして身内に手を出すの?」
「……」
鈍器のような物で殴られたと錯覚したのか、目の前が真っ白になり、晴斗は何も言えなくなった。
晴斗が頭を押さえて様子がおかしいと感じ取ったのか、凜に抱き締められ「考えたらダメ、私を見て」と何度も声を掛けられていた。
「……」
「晴くん聞いてる?顔色悪いよ」
抱き締められながら声を掛けられていた、晴斗の視界がクリアになると、抱き締めてくる凜を見つめていた。
「……」
「ボーッとしてたよ、晴くんは何も考えなくていいよ」
「何で?」
「晴くんがいけないことしてたら、私が止めるからだよ」
「……」
「晴くん?聞こえてる?」
「…聞こえてるよ」
「私が許可したんだよ、晴くんは悪くない…分かった?」
「分かったよ」
二人は小声で話終わると抱き締め返して、凜に口づけしようとして顔を近づけたが、手で口を押さえられた。
「麻莉菜が見てるからダメだよ」
「見られてもいい…」
麻莉菜を視界で捉えると、包丁片手に睨まれていた。
「…俺‥包丁片手に睨まれて‥怖いんだけど…」
「麻莉菜は嫉妬してるんだよ、女の嫉妬は怖いね」
「凜も女だよ、包丁片手に脅さないでよ」
「私はもっと怖いかもよ」
「…マジで?…まぁ落ち着くまで抱き締めてていいかな」
「麻莉菜の前だから…刺されないようにね」
直ぐに、晴斗は血の気が引くと、凜から離れて、立ったままテレビに視線を移した。
「晴兄、邪魔だから座って」
「……」
無言で座ったが、落ち着かなくなると台所で料理中の凜の元に来ていた。
「抱き締めていい?」
「寂しいの?」
「怖いんだよ」
「凜姉ちゃんから離れて」
麻莉菜に怒られて、凜の横に立っていた。
「晴兄は邪魔なんだよ、ソファーに座って待ってて」
無言でビーズクッションに座った、料理がテーブルに並べられ、三人で晩御飯を食べ始めたが、無言で麻莉菜に睨まれていた。
「俺が麻莉菜に何かした?何で…」
「はぁ?お姉ちゃんが何でノーブラで居るの?布団の中でゴソゴソしてたよね?変なことしてたんじゃないの?」
「してたら何?てかさ、麻莉菜に関係ないよね」
「…何で私に冷たいの?お姉ちゃんばっかり可愛がって…」
「最近の麻莉菜は触らないでって怒るよね?凜はたまに人前で怒るけど、麻莉菜ほど怒らない」
麻莉菜は凜を見ていた。
「…お姉ちゃんも私の気持ち考えてよ」
「麻莉菜が晴くんを受け入れなれないんでしょ、好きなら好きって言えばいいでしょ、私に当たらないでよ」
「……」
急に静かになった、テレビの音だけが聞こえ始めたが、晴斗は気にする様子もなく食べ始めると、麻莉菜に睨まれていた。
「俺が好きなのか?何の好き?異性?親戚として?…」
「勘違いしないでって言ったよね、晴兄なんかタイプじゃない‥」
「ムキになるなよ、なら凜にキスして睨んでくるのは何故?」
麻莉菜は目を閉じて黙り混むと、凜が答えた。
「晴くんが好きで嫉妬してるんだよ、麻莉菜は抱き締められると照れてるんだよね」
「…照れてないから、変なこと言わないでよ」
「もう、晴くんが嫌いなら嫉妬しないでよ」
「…嫌いじゃない‥嫉妬じゃない…もう分かんない‥見てると辛いの」
「嫉妬っていうんだよ」
「違うって言ってるでしょ」
口喧嘩が始まると、晴斗は静かに観賞しながらご飯を食べて終わって肘をついて眺めていた。
「晴くんはどういう神経してるの?止めようと思わないの?」
「手を出したら止めるけど嬉しいんだよ、家族と親戚の色んな表情見れることが‥もう見れないと思ってた…口喧嘩で止めないから続けて良いよ」
二人は怒る気持ちが削がれたのか、静かにご飯を食べていた。麻莉菜はテーブルで伏せて、凜は荒いものをしていた。
凜に手招きされて、静かに近づいた。
「晴くんが好きなんだよ、麻莉菜の目の前でキスして来ないでね」
「違うって本人が言ってたよね、俺はやめないよ」
「…麻莉菜が、晴くんが好きって私に言ってきたんだよ‥お願いだから二人のときにして」
「好いてるってことだろ?好きじゃないって本人が言ったんだからな」
「晴くんじゃないんだよ、面と向かって好きって言えるはずないでしょ…恥ずかしいから照れてるんだよ」
「本人が違うって言ったよね」
「でもね…」
凜に口づけして喋れないようにした。
「もう、やめて」
「なら凜を諦める、兄妹として仲良くしよ」
「…やだ」
「知らない」
…数日相手にしないでいいや。
晴斗はお風呂に向かった、入浴後、黙って寝室に居た、凜は着替えを取りに来た。
「…晴くん‥」
「もう甘えさせないけど‥何?」
「…何でもない」
晴斗がベッドで横になって数十分後、凜が寝室に入ってきた、ベッドの奥に移動すると凜も横になった。
「晴くんまだ怒ってるの?」
「怒ってないよ」
「何でキス嫌がるの?何で抱き締めてくれないの?」
「何でって…気持ちが冷めたから‥かな?」
「…一緒のベッドで寝てるけど‥本当に冷めたの?」
「俺は、好きな人なら一緒に寝るとか無いからな、友達の部屋で寝てる感覚だね」
「…最低」
「添い寝の事だからな…俺は子供っぽいとか変わってるって幼馴染みからも良く言われたよ、寂しいから我慢できないんだ、温もりが欲しいんだ」
「なら抱き締めて寝てよ」
「もう無理、家の中なのに麻莉菜に見られると嫌がるから」
「麻莉菜が可哀想なんだもん」
「なら、お嫁さんになれないね、可哀想なんだもんな」
壁に向いて目を閉じるていると、抱き締められていた。
「晴くん、こっち向いてよ」
「もう無理‥俺は距離とるって決めた」
「やだよ…麻莉菜の前で抱き締めてもいいから‥キスしてもいいから」
「凜は口先だけだよね、嫌がられる度に俺は傷付くんだよ、俺の気持ちも考えて」
「…ごめんなさい…」
「もう寝る、おやすみ」
凜は背中で啜り泣くが、晴斗は何もせずに壁を向いて目を閉じた。
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