第141話誤解を招く①

二人は二時間目の途中に学校に向かっていた。

…まさか、凜の後始末で俺が床を拭くはめになるとはなぁ。

「ねぇ、いつまで黙ってんの。」

「……」


凜はお風呂に入ってから、目も合わせてくれなくなった。

「寂しくなるんだけど。」

「……」

「はぁ、コンビニ行ってくるわ。」


晴斗は一人でコンビニに向かうと、凜も付いてきた。

「先に学校行って。」

「…一緒に行く‥晴くん見てると静かになっちゃうの。」

「ずっと一緒居てくれるなら恥ずかしがるなよ、コンビニ行こ。」

「…うん。」


二人は手を繋いでコンビニ行った、飲み物とお菓子を買って学校に向かった、教室に入ると、先生もクラスメートにも視線を向けられた。

「二人ともどうして遅刻したの。」


二時間目の担任で英語教師の島野彩花に聞かれると、晴斗はニコっとして「朝から疲れまして、遅刻してすいません」と言って頭を下げたが、凜に足を踏まれた。

「晴くん変なこと言わないでよ。」

「ごめん、癖が出たな。」


笑いながら席に座ると授業が始まった。


凜は休憩時間、友達から首に付いたキスマークを聞かれ、晴斗は笑いをこらえて伏せていた、気づいていなかったのか凜はトイレで確認したのか、晴斗は休憩時間に話し掛けらけても、突っ伏して無視していた。


 午前中の授業が終わった

晴斗はお弁当を受け取ると、凜から逃げようとしていた。

「晴くんいつまで無視するの。」

「無視してないよ、俺が付けたキスマークを誤魔化そうとするから笑ってしまうんだ、あぁ麻莉菜と食べるからね。」

「…い、いつ付けたの。」

「話し掛けても瞬きもせずにボーッとしてる時だったかなぁ、自分で思い出してね…見てて可愛かったよ。」

「……バカ。」


凜の恥ずかしそうな表情を晴斗は笑いながら見て、教室を出ていこうとすると、女子の「やっぱり」「キャー」という声が聞こえ、男子に「死ね」と言われ、色々文句を言われて睨まれていたが教室を出ていった。


晴斗は麻莉菜の教室に来て、何も言わずに弁当を開けていた。

「晴兄、何も言わずに…何してるのかな。」

「怒ってんのか、麻莉菜と食べたいんだ。」

「違うでしょ、二人が来ないって先生が私に聞いて来たよ、凜姉ちゃん怒らせたから私の所に来たんでしょ。」

「違うよ、麻莉菜の友達がどんな子か見に来たんだ。」

「なら自分の教室で食べて、見たでしょ。」

「柚と食べよ、柚一緒に食べよ。」

「…晴兄ってどんな神経してるの。」


麻莉菜は呆れていたが、無視して恵の妹の柚に声を掛けていた、柚の友達とも一緒に食べていた。

「飯島先輩と一緒だと食べにくいです。」

「何で、てか柚なら呼び捨てで良いよ、あとライン教えてよ。」

「なら、晴斗先輩って呼びます。」


晴斗がQRコードを表示して、机の上にスマホを置いて柚に見せていた。

「晴兄ナンパしてるの。」

「違うし黙って、柚早くして麻莉菜が怒ってる。」


柚と交換すると、麻莉菜は怒っていたが気にしなかった。


晴斗はご飯を柚とその友達と食べ終わると「喉乾いた」と言って、麻莉菜の横に座った。

「晴兄何で横に座るの、食べたなら自分の教室戻って。」

「その前にお茶頂戴、喉乾いた。」

「自分で買って飲んだら良いでしょ。」

「後で抹茶買うんだけどな、ご飯の後はお茶って決めてんだ。」


麻莉菜に無視されると、晴斗はこっそり勝手に飲んで、友達が麻莉菜に視線で教えるのを見て笑っていた。

「何で勝手に飲んでるの。」

「家で麻莉菜も俺の飲んでるだろ、間接キスとか言ってたのに飲んでるの誰だよ。」


麻莉菜の顔が赤くなると、晴斗は楽しそうに笑ったが、麻莉菜はスマホを触りだした。

「麻莉菜、ジュース買いにいこ。」

「…一人で行ってよ、晴兄といたら恥ずかしい。」


晴斗は麻莉菜を抱き締めて「行こ、立ってね」と言うと、麻莉菜の友達は「えっ」と驚いていた。

「晴兄にふざけるの止めてって言ったよね。」

「ごめんね、家だけにするね。」

「家でもしてこないでしょ、誤解される言い方しないでよ。」

「…ごめん、ふざけすぎた。」


ふざけてたとわかり、麻莉菜のクラスメートも友達も笑っていたが、数人の男子に睨まれていると、凜が教室に入って来て頭を叩かれた。

「こら、問題児来なさい、迷惑掛けたらダメって言ったでしょ、私も困ってるんだからね。」

「問題児扱いすると、キスマーク増やすよ。」


麻莉菜は凜の首を見て晴斗にビンタしたが、晴斗は凜を抱き締めて教室を出ていった。

「凜だけ飴舐めてずるいな、俺の無いの。」

「晴くん、朝食べたでしょ。」

「…食べたけど。」


晴斗はずっと肩から手を回して抱き締めていた、飲み物を一緒に買うと、教室に並んで歩いていた。

「…飴食べたかったな。」


晴斗が言うと、凜は人気が無くなると棒付きキャンディーを口に近づけてきた。

「あげるの晴くんだけなんだよ、口開けて…食べ掛け嫌だった。」

「お花見の時も食べたんだ、凜のなら汚くない。」


晴斗が嬉しそうに食べると、凜は真っ赤な顔で照れていた。

「晴くんにあげたら、口が寂しくなっちゃった。」

「キスしないからな。」

「…意地悪言うなら返して。」


俯いて言われると、晴斗はキスをした。

「…一回じゃ足りない‥もう一回してよ。」


頬を膨らませて上目使いされ、またキスして教室に戻ったが、凜の口にあったはずの飴が、晴斗の口に移ったことを聞かれ「凜は噛んで食べてたよ、この飴俺のなんだ、勘違いやめて」と顔色を変えずに教えると「さすがにそうだよね」と皆信じていた。


 午後の授業が終わった。


掃除も終わると凜に「髪切りに行くからな、先に麻莉菜と帰って」と教えた。

「一緒に行っていい。」

「毎日俺にそんな言い方するから、皆に誤解されるんだよ。」

「…誤解されるね、一人で大丈夫なの。」

「ガキじゃないんだ、友達と行くから一人じゃない、凜も友達と遊んで帰りなよ。」


凜は寂しそうだったが友達に声を掛けられていた、晴斗は先に学校をあとにした。

…陽菜と駅で待ち合わせだな。


駅に向かう最中、同じ高校に通う生徒も居たが、晴斗は早歩きで向かった。


晴斗が駅前の時計台に着いて10分程待つと、陽菜が来た。

「ごめんね、待ったよね。」

「十分も待ったよ。」

「全然待ってないって言ってよ。」

「めんどい、髪切る場所どこ、ついでに髪も染めて良いよね。」

「うーん、何色に染めるの。」

「昔みたいに、メッシュだな。」

「良いと思うよ、今の晴冴えないからね。」

「落ち着いたって言えよ。」

「ごめんね。」


二人で話して歩いていると陽菜オススメの美容院に来ていた、晴斗は髪を短く切り、ツーブロックのまま黒髪にネイビーブルーとシルバーの二色のメッシュを入れていた。陽菜は隣に椅子を置いてジーっと見てきた。

「なんだよ、暇なら帰って良いぞ。」

「帰らないよ、二色ってバカだとって思って。」

「何で、昔と同じ色だよな。」

「私の時は赤メッシュだったよ、絶対学校で目立つよ。」


晴斗は深い溜め息をついで「忘れてた」と言って自分で呆れていた、陽菜は女性の店員とも話していた。

「フード被ったら俺ってバレないよね?」

「身長でバレるよ。」

「…そうだった。」


店員に銀紙を外されて頭を洗われ、自分の髪の色を見て喜ぶと、支払いを済ませて美容院をあとにした。

「陽菜が居て、髪も染めたら昔のこと思い出すなぁ。」


ぽつりと言うと陽菜は笑っていた。

「まあね、証明写真取りに行こ。」

「モールにあったな。」


19時頃…晴斗はパーカーのフードを被り、陽菜と並んでモールに入ると、麻莉菜と目が合ったが通りすぎた。

…染めたのバレたかなぁ。


振り向くと立ち止まってこっちを見ていたが、陽菜に背を押されて証明写真を取りに行った。

…クラスメートも居て、不思議そうにこっち見てたな。

「陽菜と歩くと目立つんだな。」

「晴がフード被って、こそこそしてるから不思議なんだと思うよ。」

…そんなもんか。


晴斗は気にする様子もなく、証明写真を撮り終えると陽菜の家に来ていた、ハサミで証明写真を切り、書類に印鑑も押して、二人で書類に目を通していた。

「書き残しも無いね。」

「なら、帰るわ。」

「えー、もう帰るの。」

「帰る、明日バイクで迎えに行くわ。」

「分かった、またね。」


陽菜の住むマンションを出ると、急いで家に帰った。

…やっぱり自分の足で走るのも気持ちいいな。





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