第104話ドライブ…体調
総合交通センターから帰ると凜は着替えずに残り物を温め直し、テーブルに並べていた。
「晴くん食べよ。」
「先に着替えてきたら。」
「…運転したい‥ドライブしたい。」
昼御飯を食べてると、凜は手を止めて「守ってくれてありがとう」と総合交通センターでナンパから守ったことを喜んでいた。
「俺も怖かったからさ…一つ頼み聞いてほしい。」
「…なに。」
「教室でキスしてよ。」
「元不良が怖いわけないでしょ‥今も根っからの不良でしょ…しないから。」
凜は急にテーブルを叩いて怒ってたが、不良と言われ、ムッとしたが、落ち込んでいた。
「…ごめん‥食べたらツーリング行こ。」
「私も言い過ぎた‥ごめんね。」
食べ終わると、鍵を渡し、凜はバイクに股がると、風で揺れる髪、笑顔の横顔を見て、ドキドキしてた。
…今日はドキドキしっぱなしだな。
凜はエンジンをかけ、走り出そうとすると何度もエンストして「…ううっ」と変な声がインカムから聞こえていた。
初めての公道は怖いのか、徐行で走る凜を後ろから付いていって笑っていた。
「…何で笑うの。」
「歩いた方が早いと思ってね。」
「……休憩する。」
コンビニに寄ると、バイクを止めて凜は何度もため息をついて「怖い」と言っていた。
「車に追い越されるからか。」
「…そうだよ。」
「合わせるから、ゆっくり走ろうな。」
二時間も家の近所を走っていると、凜は友達に出くわすと、見せたいのか声を掛けて話していた。晴斗は通りすぎて止めていると恵に出くわしていた。
「晴斗くんなにしてんの。」
「凜とドライブだよ。」
どこにいるのと聞かれて、後方を指差していた。凜を見て恵は走り出すと、話をしていた、暇になりフルフェイスを脱いでバックミラーを見ていると、良太が話し掛けられていた。
「何でここにいんの。」
「あぁ、良太か、凜とツーリングだよ。」
また、場所を教えていた。
「何で離れてんの。」
「凜の友達だし‥邪魔になるからね。」
「そっか、邪魔にならないと思うけど。」
曖昧な返事をしていると、凜は近くに来ていた。
「晴くん帰ろ。」
良太に「またな」と言って、家に走らせた。 家に帰ると凜は疲れたのか、リビングの床にだらしない格好で寝そべっていた。
晴斗は横に座ると「腕貸して」と言って、腕枕をしてもらい、顔を胸に埋めていた。
「二人っきりだと‥甘えるね‥なんか恥ずかしい。」
「…甘えてない。」
「ほんとかな。」
「本当だよ。」
凜はよしよしと言いながら頭を撫でられ、晴斗はずっと抱き締めていた。
「次凜の番。」
晴斗は十分程撫でられ満足すると、凜と変わっていた。
「学校までバイクで行こうね。」
何でと聞かれ、晴斗は旅行に行くまでの練習になると教え、嬉しそうにしていた。
どんな旅館か聞かれたが「着いてからのお楽しみ」と教えると「晴くんとお泊まり」と甘えた声で言われ、またドキドキしていた。
…今日は本当ドキドキする‥俺どうしたんだ。
凜は台所までの短い距離をスキップしながら、笑って台所に立つと急に目が合い「晴くん‥好きだよ」と言われ、笑みを向けられた晴斗は、胸を押さえながら久しぶりに締め付けられていた。
苦しそうな表情をしていたのか、凜は近付いて「大丈夫」と何度も聞いていた。
「…大丈夫だ。」
「晴くん顔色悪いよ。」
「…凜にドキドキしすぎたんだよ。」
「倒れないでよ。」
「倒れないよ。」
倒れそうになるが、ソファーに一人で向かうと横になっていた。
晩御飯ができると、凜は心配して、晴斗の箸を奪い取ると食べさせられていた。
「…病人じゃない‥一人で食べる。」
「まだ顔色悪い‥甘えてよ。」
「…教室でもして。」
「今は冗談言わないで。」
ぎこちない笑みを凜に送り、食べさせてもらっていた。 食べ終わると一人でお風呂に向かってると、付いてきていた。
「…倒れないでよ。」
「泣きそうな顔するなよ、倒れないから気にすんな。」
晴斗がお風呂に入っていると、心配して入って来ていた。
「…一緒に入っていい。」
「もう入ってるじゃん‥今日は一人で入りたかったけど、いいよ。」
体調が直ったように振る舞っていたが、凜にバレていた。
「無理して笑わないでよ。」
「…あぁ分かってたんだ、笑みを見てると、寂しくて、たまに苦しくなるんだ、俺から離れないで‥傍にいて。」
「うん‥ずっといる。」
「…たまに聞くよ。」
「毎日聞いてよ。」
「……あり‥がと。」
晴斗がシャワーを顔に当ててると、凜は後ろから抱き締めていた。
「晴くんが泣いても気にしない、人に見せたくない顔も見せて‥甘えて。」
晴斗は振り返ると抱き締め返していた。
「…優しい凜まで、いつか離れそうで怖いんだ。」
「どこにも行かない、晴くんの傍に居るから安心して。」
「凜から見て、俺は何に見える。」
「…学校ではクール、家では甘えん坊…不良に見える時もある。」
…他人が変えたんだよな‥凜に言われると辛いな。
「…綺麗な体が冷えるよ。」
凜はタオルも巻かずに裸だと思い出したのか、ニコッと笑みを向けた晴斗を突き飛ばし…滑って尻餅を付いた姿を見て、体を洗わずに浴槽に浸かっていた。
「…み、見ないでよ。」
「…体調が悪いんだよ、押すな。」
「…ごめんね、怪我してない‥よね。」
「大丈夫。」
晴斗はシャワーを浴びると浴槽に浸からずに、出ていこうとしていた。
「一人で‥大丈夫。」
「大丈夫、早く横になりたい。」
「…すぐ行くから‥待ってて。」
「待ってるよ。」
先に上がりベッドで横になっていた。凜は寝室に入って来ると、お風呂場で泣いたのか目が赤くなっていた。
「……病気とか‥言わないよね。」
「病気じゃないよ‥急にどうした。」
ベッドを叩くと、そっと乗り晴斗の腰に抱き付いていた。
「本当に病気じゃないんだよね。」
「病気じゃないよ…凜と居すぎて‥すぐ寂しくなるんだろうな。」
体調が直ってると分かり、晴斗が寝るまで話しかけようとしていた。
「さすがに、うるさいよ。」
「ごめんね、握って。」
手を握って横顔を見ると、目が合って「おやすみ」と喋るタイミングが被り、笑い合っていた。
「気が合うね。」
「うん。」
お互い手を握って遊んでいると、いつの間にか…二人は眠っていた。
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