第93話甘えるが…①


昼休みになると、晴斗の机にお弁当を置いて、教室を出ようとしていた。

…冗談で言ったのに、落ち込ませてしまったな。

「凜‥どうした、今日は一緒に食べるよ。」

「……いいの。」

「冗談で言ったのに、落ち込ませてごめんね。」

「…二人で食べたい。」


屋上に二人が来ると、先客がいたが気にせず物陰に隠れて食べていた。

「…隠れて食べると‥ドキドキするね。」

「そうかな、座るまで見られてたな。」

「…うん‥見られてたね。」


頬を叩いたことを謝ってきたが、頭を撫でてキスしたことを謝り返すと、なぜキスしてきたか聞いてきた。

「凜が告白されたり、手紙貰ってるの知ってるし、内緒にするからさ。」

「…絶対に突っ掛かりに行くでしょ。」

「しないよ‥俺みたいな人より‥他の人を好きになってもいいかなって‥最近思う。」

「…口癖だね、でも他の人‥好きになる予定はないよ。」

「今はそうでも…寂しがり屋で男らしくない俺と居て楽しいかなって‥‥思うんだよね。」

「…楽しいよ‥もう晴くんは私が居ないとダメだよね。」

「…今の気持ちは‥ずっと傍に居てほしいね…この気持ちも変わるのかな。」


壁に背中を預けて、青空を見ながら答えると、凜は肩に頭を置いて、手を握られていた。

「…お互いの気持ち‥ずっと変わらないよ。」

「あぁ、そうだと嬉しいな。」

「ねぇ‥こっち向いて。」


目を閉じてキスを要求されるが、キスをせずにジーっと顔を見ていた。目を開けると恥ずかしそうに「…まだ」とだけ発して目を閉じていた。

「しないよ。」

「…何で‥からかってるの。」

「キス顔に見とれてた‥可愛くて、する気がなくなった‥まだ見てたい。」

「…しない。」

「俺にしか見せない表情を見せて‥そういう表情が好きなんだよ…痛って。」


晴斗の言葉を聞いて、急にキスされそうになり避けると、壁で後頭部を強く打っていた。

「…変態なこと‥言うからだよ。」

「好きなんだから、仕方がない…ドキドキするんだよ。」

「…言われても‥見せないよ。」

「頭打って、箸が握れない‥食べさせて。」

「…関係ないよね‥正直に甘えたいって言っていいんだよ。」


口を開けて待っていると、玉子焼きを切らずに入れられ、凜の口に近付けて待っていると、恥ずかしそうに先だけを食べていた。

「…もぉ‥自分で食べてよ。」

「嫌だ‥甘えたい。」

「…ダメ。」

「恥ずかしそうにされるとたまらないなぁ‥キスして。」


ニコニコして言うと、キスしてこなかった、弁当箱を渡され、わざと野菜を残して、凜に見せると全部食べてと言われていた。

「今日は野菜が嫌いな日なんだよ。」

「…また‥食べさせてほしいの。」


頷き、口を開けて待っていると、恥ずかしそうに押し込まれていた。

「強引だな、一回でいい‥口移しして。」

「…しないよ。」

「ちっ。」


何度も舌打ちをして待っていたが、凜は残りの野菜を全部食べていた。

「ペラッペラの野菜だけ残した意味ないじゃんか。」

「…お菓子ならいいよ、唇を噛んでこないならだけどね。」

「コンビニ行ってくる。」

「…家ならね‥してあげる。」

「まったくよぉ~、気持ちを上げて落とすなんて‥凜はSですか。」

「……晴くんが‥でしょ、叫ばないでよ。」


屋上から生徒が居なくなると、凜を後ろから抱き締めて、同じ景色を静かに見ていた。チャイムがなる前に階段まで手をつないで歩いていた。

「教室まで離さないからね。」

「……見られちゃう。」

「バレそうになったら離すよ。」

「…恥ずかしそうにしてる姿が見たいんでしょ。」


晴斗は楽しそうに笑って、手を繋いで階段を降りると、話し声が聞こえて近付いて来ていた。

「やっぱり離したくない。」

「…ドS‥離してよ。」

「はぁ、嫌われたくないし。」


離して、振り向くと頬が赤く染まっていた。

「やっぱり‥可愛いよ。」

「…こっち見ないでよ。」

「……二度と見ない‥キスしたら機嫌が直るから‥言っとくね。」


一人急いで階段を降りると、教室で拗ねていた、凜が教室に現れると、晴斗は外に視線を向けて「傷ついたな。」何度も知らせていた。


授業が始まると何度もため息をついて、凜が振り向くと教科書でクラスメートに見えないように顔を隠してキスを待っていた。

「誰にも見えない‥今がチャンス。」

「…しないから‥バカ。」


晴斗は授業を聞きながら、凜の後ろ姿を悲しそうに見ていた。

…相手してほしかったな。


ジーっと後ろ姿を見ていると授業が終わり、放課後を迎えていた。

…掃除したら帰って‥口移しをしてくれるか試そうかな。

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