第301話 村会議 前半
「オーライ! オーライ! オーライ! はいストップ! フォルテ、そのままの位置で止まってて!」
「了解です、マスター」
ミツの言葉に目印となる旗を持ち空を飛ぶフォルテ。
彼はフォルテを中心として、ぐるりと円を書きながら外周を歩く。
「うん、そこが丁度真ん中だね。オッケー、フォルテ、離れていいよー」
上空に飛ぶフォルテを目印に、真下に材料となる岩などを置いていくミツ。
中には塗料や山で取れた水晶まで置いている。
いったい次は何を作る気なんだと、仲間達の注目を集めるなか、フォルテが翼を生やし、空を飛んでいた姿を見た村人たちは既に驚きの表情である。
特に子供たちはこの数日と勉強を教えてくれていたフォルテ先生が天使(本当は精霊)とは思わないだろう。
「よーし、それじゃ作るよ!」
「いいニャよー!」
「こっちも大丈夫」
周囲の確認と仲間達の声を聞いた後、ミツは〈物質製造〉スキルを発動。
虹色に光る材料がぐにゃりぐにゃりと形を変え、ニョキニョキと高く、高くその形を作っていく。
光が収まり、姿を見せたのはそそり立つ時計台。四方向のどこから見ても時計の針が目視できる作りとなっている。
時計台の入り口を開け、螺旋階段を一気に上り時計の内側に到着。
中は歯車だらけだが、内部構造の作りは技能神の加護の効果にて中身を無意識に把握できている。
「おお、いい景色だ」
「ミツー!」
「おーい! んー……別に高所恐怖症って訳でもないけど、ここから下を覗き込むとやっぱりヒヤッとするな。ここは顔を出せないように鉄格子にしとこう」
風通しの為と作っていた小窓だが、誤って人が顔を出さないようにと窓はすべて鉄格子に作り変えることにした。
そんな事をしてる間と、ユイシスが時間と声をかけてくれる。
《ミツ、間もなく時間となります》
「おっと! それじゃ動かしますかね」
ミツは中央に設置してある大きくも簡単なスイッチに手をかける。
見た目はマッチの先端のように単純だが、これが時計塔全体のスイッチなので大人が切り替えなければならない重さがある。
《3……2……1》
「時計塔、起動!!」
カチッっと正にスイッチを切り替えたときの音が部屋に響いた瞬間、部屋中にある歯車の全てが動き出す。
ゴトゴトと重い物を押すような音のなる部屋を急ぎ後にして、ミツはまた螺旋階段を下り外に出る。
「あっ、出てきた。ミツ、何よこれ?」
「これは時計塔だよ。それよりも見てて」
「「「?……!?」」」
彼の言葉と視線に合わせ、仲間達も時計塔へと視線を向ける。
すると時計の針がお昼の12時を指した瞬間、カーン、カーン、カーンっと鐘の音が聞こえてきた。
鐘の音ならば聞き慣れたものだが、鐘の音が収まった瞬間、どこからともなく陽気な音楽が流れ出す。
何だなんだと周囲を見渡す村人たちの視線はそれでも時計塔から視線を外すことの無いミツへとむけられる。
「あっ!」
誰かのそんな驚く言葉に、人々の視線が時計塔の方へと向けば驚き。
時計塔の中央にあった扉が開き、中で動く人とを確認する。
「えっ? 誰かいるの?」
「いや、リッコ、あれは人ではありませんよ。あれは……人形ですか?」
「えっ、人形?」
そう、ミツが今回造ったのはただの時計塔ではなく、時間になれば演出を見せてくれる人形時計塔である。
時間は朝の9時、昼の12時、昼過ぎの15時の三回起動するようにしてある。
人形の演出は四方向と違う物を見せてあるので、人形の舞台をぐるりと回転させる仕組みも作り上げた。
この土台の回転が時計塔のゼンマイ(24時間分)の効果も出しているので、この時計塔は人力でゼンマイを回す事を不要に造ってある。
様々な動きを見せる人形とコミカルな音楽が見る人々を楽しませる品となった。
ちなみに流れる音楽は五月蝿くない程度に音は落としてはいる。
こう言うのって音が気になる人はストレスにもなるからね。もし音が不要なら切ることもできるのでその辺は相談次第である。
「しかしよ、これって何で造ったんだ?」
「んっ、時間を知る為と、村の方角を確認するためだよ。子供たちにはもう時計の意味とか、時間どうりに行動することを促してるから、今度は学び場の外で遊ぶ際に、遅くなる前に家に帰ろうねってそう言う意味もあるかな」
「ああ、なるほどな。森の中で迷子になった奴も、音がなればその方角にこの村があるって分かるって仕組みか」
「でもよ、そんなことしたらモンスターが寄ってくるんじゃないかい? お前さんの村、大切な村人や家畜が襲われたりしたらどうするっての」
「ああ、それもそろそろ対策しようかと思ってまして。えーっと、バンさん、以前お話しました事ですが、希望者はいらっしゃいましたか?」
「おう! 勿論だよ。君の話を持ちかけたら、村の男では全員が参加したいって言ってたぞ」
「ぜ、全員ですか!? まぁ、人手が多いのは助かります。なら、そこは交代でお願いしますね」
「わかった」
「ミツ、何の話だシ?」
「はい。バンさん達、村の男性陣の人たちには、今後村と畑の警護をお願いしようかと思いまして。あれです、自警団? 警備員? 取り敢えず村の守りをお願いしようかと。勿論無償ではありませんよ。ちゃんと護衛してくれた分の賃金は自分が払うつもりです。いずれ村産業が動き出した時は、村のお金から支払いが変わりますけどね」
「ほー。坊や、甘えさせてばかりで堕落させてると思ったら、ちゃんと村の奴らを働かせる事は考えてたんだね」
「勿論ですよ。畑での農作業は勿論、狩りだけでは稼ぎにもなりませんからね。もう村を離れて出稼ぎしなきゃいけない状態はなしとして、食い扶持くらいはできるだけ用意しますよ。取り敢えず村を囲って守りを作らないといけませんね。幸いと言うか、この辺には大きな岩がゴロゴロとあっちこっちにありますから、材料には困りません」
「ミツ、ライアングルの街みたいに村を囲むニャか?」
「そうだね。取り敢えず二重にしとこかなと。村を囲むかんじと、それも含めて畑や水田を囲む感じかな」
「随分と広いな」
「いやいや、これはまだ広くなるよ。先ずは二重丸だけど、これが三重、四重と畑が増えればその分壁を増やしていくよ。そうすれば畑同士の感染予防にもなるからね」
「ニャ? 畑が病気になるニャ?」
「勿論、畑も同じ物、同じ様に作り続けてたら土が疲れちゃうからね。今季は南側、来季は北側と、定期的に土の栄養を貯めないと作物も育たなくなるんだ。それに最初に囲った村の中だけど、もしかしたら村産業うまく言えば、他の村人の人たちがスタネット村に来てくれると考えたら、これからも人が増えるかもしれないじゃない。それだとやっぱり三重、四重が必要になるんだよ」
「……あのよ、ミツ。もうそこ迄行けばスタネット村は村じゃなく、スタネット街に変えるべきじゃねえか? 多分この村に住みてえって奴が、どんどん増えると思うぞ?」
「ははっ、やだなーリック。人がそんな簡単に集まるわけ無いじゃない」
「「「……」」」
「さて、自分は村を囲む壁を作ってくるね。皆は訓練頑張って。バンさん、行きましょうか」
「……なあ、リッケ」
「はい、何ですか?」
「俺、この村がライアングルと変わんねえ程にでかくなるイメージが簡単に付くんだけどよ……」
「そうですか? 僕は街以上になると思ってます」
「そうか……、デケェな……。訓練、行くか……」
「はい……。ですね……」
二人がこぼしたそんな言葉は遠くない未来に実現するかはまだ誰もわからないが、それが単なる空想話でない事は全員が同じ事を思ったろう。
∴∵∴∵∴∵∴
ミツと共にライアングルの街に帰ってきていたアリシア。
彼女は朗報と直ぐに屋敷に戻り、自身の主であるミンミンへとミツが村に滞在する許可をくれた事を告げる。
するとミンミンはクスリとほくそ笑み、彼女は椅子から腰を上げる。
「ちょっとミンミン姉さん、もう行く気なの!?」
「セルフィ、当たり前でしょ! 国からの輸送隊が先にあの方の収めます村を通り過ぎたらどうするのですか!? ここは誰かが行かなければならない時です」
「ミンミン、行くのは構わんが、輸送隊が求めるは彼が我々に献上したヒュドラの鱗とコウキュウタケの小屋であろう。お前一人が言っても意味もなかろうに」
セルヴェリンは国からの本来輸送隊を呼んだ理由を正論として話し出すが、アリシアの目的は輸送隊ではなく、ミツが治める村に行く事、ただそれだけと目に見えた行動だけに少し呆れている。
「あら兄様、ならば私が彼に直接ゲートを使い、鱗と小屋を運んでいただくようにお願いしますわ。そうすれば輸送隊を態々こちらに来させずとも、効率の良い渡しも可能ですわ。そういう事ですので、アリシア、私の荷物を全て馬車に乗せて、スタネット村迄行きますわよ」
「はっ!」
「お、おい! せめてダニエル殿には連絡を入れてからにしろ! 数日と世話になったのだ、何も言わずに屋敷を去るなど、お前はセルフィの様な礼儀知らずな事をするつもりか!」
「うぐっ……」
「ちょっとセルヴェリン兄さん、誰が礼儀知らずよ!」
「お前だ、お前! 礼儀知らずでないと言うなら、一度国に帰ってこれまでの顛末を話してこい! それができぬなら、俺達がこの場にいる時ぐらい大人しくしておけ!」
「ブーブー!」
兄の言葉にそんな事できるかと頬を膨らませ抗議するセルフィだが、セルヴェリンもそれを分かっていて口にしたのだろう。
自身の頭を抱えるように考えこんでしまう。
「まったく……、末っ子と思い甘えさせたツケが来たのか……。取り敢えず、ダニエル殿、いや、最低限奥方の何方かに直接言葉を伝えた後にここを立つ事とする。いいか?」
「……」
「ミンミン!」
「わかりましたわ! フンッ」
「……はぁ」
珍しく不貞腐れたような返答を返すミンミンに、ああ、やっぱりかと彼が予想したくなかった妹の気持ちに気づいた瞬間でもあった。
「あら〜。ミンミン姉さん、本当に少年訓の事気に入ったのね……」
「はぁ……。向こうに行ったら行ったで、あいつもお前みたいに莫迦な事やりそうで不安だ……」
「兄さん……私もそう思うわ」
「はぁーーー!」
この短い時間に幾度目のため息を付いたのか、彼が最後に出した露骨に長いため息は、全てを吐き出す思いだったのかもしれない。
∴∵∴∵∴∵∴∵
村の男組を集め、村から少し離れたところに到着。
「バンさんにはそれを使って線を引いてもらいます」
「おう、何だか面白い物だね。これを押してドンのいる所まで歩けば良いんだよね?」
ミツがドンに渡したのは、グランド等に線を引くためのライン引きである。
「はい、その後ろを自分が材料などを置いていきますからね。トムさんはバンさんが使ってるライン引きに入れてる粉が無くなったら補充をお願いします」
「ああ、任せておきな」
「よし、行くぞ!」
バンはライン引きに四苦八苦しつつも、先に行って旗を持っているドンを目的にして線を引き始める、
「バン、ズレてるよ! 左にまがってるってば!」
「むっ、結構難しいな。すまん、ミツ君」
「ははっ、作るものが大きいですから、微々たる曲がりは気にしないでください」
「そうか、んっ? トム、粉だ、中身が無くなったぞ」
「ああ、ちょっと待ってなよ」
トムは村人と共に引いてきた荷台に載せてある麻袋の中に入れてある粉をライン引きへと補充。
「ミツ君、思ったんだが、これは何の粉だい? まさか小麦じゃ無いだろうね?」
「いやいや、そんな勿体無いことしませんよ。これはプルンからもらったスパイダークラブの殻ですよ。それを粉になるほどに砕いて、スケルトンの骨粉と混ぜた奴ですね」
「ほう、モンスターの素材からこんな粉ができるのか」
通常、グランド等に使われるライン引きには消石灰が使用される。
これは貝殻や他にも鉱石状態に固めた物を砕いて使用されているが、ミツはそのストックをアイテムボックスに持ち合わせがない。
そこでプルンが教会に住む家族や、ミツの家で世話になっていると晩のご飯用として提供してもらった品の残り。
これだけでは簡単に風に飛ばされてしまうとユイシスの助言を受け、ならばとボックスに入れっぱなしにしていたスケルトンの亡骸を骨粉にして、更に余計な水分を抜いた品がこれである。
消石灰の様に色は白くなく薄橙色いろである。
「よしっ。バン、いいぞ」
「おう、おらっ、続きを行くぞ!」
「「「おうっ!」」」
ライン引きが楽しそうに見えたのか、トムやドンも変われ変われとライン引きの取り合いもあったが、なんとか一周することができた。
「これでやっと一周だな。村と畑が岩に囲まれたな」
「凄い光景だね……」
「ははっ、知らねえ奴が見たら、どう思うか」
三人が見渡す光景は、ラインを引いた場所に置かれた大きな岩の数々。
「村人には伝えてるけど、やっぱり唖然としてたな」
「そりゃ、この光景を見たなら……」
「「「……」」」
三人は苦笑いを誤魔化す為と、ミツの方へと視線を戻す。
彼は最後の一手と、置いた岩の一つに掌を当てがえる。
「バンさん、一応出入り口は4ヶ所に作っておきますから、足りなかったら教えてください。完成後でもその場に扉は作れますから」
「お、おうっ……」
そんな簡単にできますみたいに言うが、本来この世界での建物の改築工事は大きく手間と時間と金を要求するのだが……彼にとってはそんな事は無い。
やります、はい、できましたの2手で終わる軽作業である。
「それじゃ造りますよ!」
「「「「!?」」」」
ミツの掌が材料となる岩に触れると、虹色の光が伝わり、村と畑をぐるりと囲む。
仲間達は勿論、村の人々が光に視線を向けると、それは大きく膨らみ、ライアングルの街と同じ街壁としてスタネット村と畑を囲んでしまった。
〈マップ〉のスキルを使いながらバンにはライン引きをしてもらったので、壁は綺麗な小判形、外周3キロの広さになっている。
出入り口は先程言った通り東西南北と4ヶ所に作り、上に登れる階段は出入り口間に2ヶ所ずつ。
壁の向こう側に落ちないようにと、何処でも向こう側が見れるようにと小窓状態が続いている。
ミツを先導にして、バン達が後に続き、おっかなびっくりと外壁の上に登っていく。
「おー! これは凄い!!」
「「「……」」」
「ははっ……。ははっ……。あっはははは!!」
「バン!?」
「バンさん?」
周囲が驚きのあまりに口を閉ざす中、バンは突然大声で笑いだした。
「いや、すまない。凄い凄いと分かっていても、こうも幾度も君に驚かされると、何だか今は笑う事が正しいんじゃないかと思っただけだよ」
「あー、バンの気持ちも分かるよ。おいらも同じ気分になってきた所さ」
「「……くくっ」」
「「「アッハハハ!!」」」
トムの言葉に互いに顔を見合わせる村人達。
彼らも気持ちは同じなのか、トムも合わせる様に笑い声を出し始めた。
「おー、皆さんが壊れたわ。それじゃ一周だけ外壁をぐるりと回りますか。広く造りましたから、疲れた人は途中の階段で降りてもらってもかまいません」
村をすっぽりと囲んだ外壁3キロは、一周するだけでも45分近くかかるのだが、バン達は気にしたことはないと歩くだけでも楽しいのだろう。
外壁から見る外の風景に、あそこまで見えるぞや、馬車や人が小さく見えるぞと楽しそうな声が聞こえてきた。
途中、プルン達や村人たちも外壁に上がり、外壁の内側と外側の風景に声を上げていた。
中には外壁を走り出した人もいるが、緊急時などは走る事を考慮しているので大人4人が横並びに走ったとしても互いと邪魔にならない程度には幅を取ってある。
まぁ、これだけ大きな建物を造ったことに、今までスタネット村に興味本位と足を向けていた外の人が村に足を踏み入れる事もないだろう。
実際、この数日とスタネット村を遠目に見た商人や冒険者、また旅人が村の中に居たのだが、彼らは興味本意と村に立ち寄ったまでなので村の人達も軽快はしていたものの、それ程邪険な接し方はしていない。
だが、村が発展していく程に、村人が不安になるのは仕方ないだろう。
事実自身の家の周りを知らない人が徘徊してたら怖いよね。
日本と違いここは置きっぱなしの物は盗まれても文句の言えない所。
治安も良いとは言えず、ライアングルの街でも日々何処かで窃盗などは起きてしまっている。
それを思うとミツはこの村で起こす村産業を名物とするなら、技術や作った品が盗まれては駄目だろうと警備を強化することにした。
手始めに外壁を作り、次に門番、それと村の中を守る為の警備員を考えてある。
今は日々アン達が巡回してくれていたが、時折村に来た者がアン達を野良のモンスターと勘違いして騒ぐ事もあったので、やはり村の中の警備は村の人にお願いすることにした。
アン達には暫くは東西南北と門番犬として働いてもらうことにした。
さて、今は村の中には村人全員を数えると320人と少し増えている。
これは出稼ぎに行っていた村人の娘息子が戻り、また少しづつ増えていった数だ。
その際、帰ってきた住人は親と共にミツの元に挨拶に来たりと、新しく変わった村の説明を受ける。
大半は村長のギーラの元ではなく、屋敷と見間違えるような家に案内されてポカーン。
そして、ミツが領主からこの地を受け取った事を説明を受ければこれまたポカーンっと唖然の一言で終わるのだが、まー、中には村での商売を行っても良いかと許可の話を持ち出す人もいる。
考えてみれば村と言っても家や生活用の建物しかあらず、雑貨屋などは一つもない。
いや、無いのは当たり前だ。
無かったのはミツが無い物を次々と作ってしまうので、雑貨屋を必要としない状態を作ってしまった彼が問題なのだから。
だからと言って、他の村や街で仕入れた物が、ミツが作った物と比べて如何かと言う話しになる。
取り敢えずこれは村長であるギーラを交えて、村の会議を行う事になった。
集まったのはギーラ、ランブル、バン、トム、マーサ、それと数名の大人達。
ギーラは村長として席に座り、ランブルは農林担当、バンは警備責任者として、トムは畜産担当、マーサは狩人代表として。
残りは出稼ぎに行った若者達である。
爺さんメンバーも呼んだのだが、この先、新しく作り直す村のことに古い人間はそんなにいらないだろうの言葉に席を外されている。
その為、ギーラとランブルを除いたら、平均20代後半と、若い話し場となる。
「地主様、おいら達に話って何だべ?」
「今日皆さんに集まってもらったのは今後のスタネット村に関しての方針を決めようと思いまして。先ず、冒険者ギルドに先日足を向けた際、ギルド長のネーザンさんに直接村の特産となる予定の餅を冒険者の携帯食にする許可を頂きました。これにより、商人ギルドを通さずに冒険者ギルドに下ろす流れとなりますので、村の利益がかなり増える見込みも見えてきました」
「「「おおっー!」」」
「これはランブルさん達が管理します畑が肝となりますので、どうぞご協力よろしくお願いします」
「はい、勿論です!」
ランブルは今はミツに対して嫌悪感など抱いていないので、喜んでと返事を返してくれる。
「次に村の警備関係の話ですが、先程村と畑を囲んだ状態に壁を作りました。それに加えて村の中の警備を強化する為にもバンさん」
「ああ、そこは任せておけ! 俺を含め、既に数十人と警備の仕事をやりたいと希望者も集めているぞ。取り敢えず村の中での争いごとや、君が造ってくれた外壁の上での警備、それと門番だな。まだまだ決めることはあるが、取り敢えず若い奴らはやる気を出してるぞ」
「うむ。バン、ミツ坊が造った外壁、あれに興味本意と色んな奴が来るだろうさ。暫くは人手は多く回しておくんだよ」
「ああ、それと中に入りたいと言ってきた奴は如何する? 別に村に見せる物や店なんぞないから、入っても意味はないと思うけどな。子供たちも以前より身奇麗になっているし、村娘にちょっかいを出す阿呆もでるかもしれんぞ?」
「そうですね……。きな臭い人ならばアン達が直ぐに分かるそうです。どんなに身を綺麗にした人でも、人の血、血生臭い奴は直ぐに教えてくれるそうです。でも、詐欺師を見破れと言われても流石に難しいですからね。そこでライアングルの街と同じ事をやろうかと」
「んっ? ああ、街の門番が使う善悪の水晶を使うのか」
「はい、と言う事でそれがここにあります」
アイテムボックスから取り出したのは小さなスノードーム程の水晶。
どうやら名前は善悪水晶と言うようだ。
そのまんまのネーミングだけに、分かりやすい。
これも判別晶同様に、本体は下の土台であり、上に取り付けている水晶球は土台から出す光を反射させる為のただのパーツである。
「ははっ、準備が良いね」
「バンさん、裏の方にスイッチがありますので、それを切り替えてください。切り替えれば中に入った魔石が反応して使えるようになります」
「んっ? ああ、この黒い奴だな」
バンは善悪水晶をひっくり返すと小さなポッチがある事に気づく。
それをカチッと音を鳴らした瞬間、水晶球からポワッと白い光が出てきた。
「おっ、白く光ったね。うん、良かった良かった。これでバンは悪い奴じゃ無いって事がわかったな」
「当たり前だ! 俺はこの方悪事なんぞ行ってねえぞ!」
「わ、分かってるよ、冗談じゃないか……」
「フッ、悪事は無くとも子供の頃の悪戯は間違いないんだがね」
「おふくろ、それを今言わなくても良いだろうに……」
「プッ、アッハハハハ!!」
バンとトムのやり取りに、母であるギーラの突っ込みの言葉にミツは思わず笑いだしてしまう。
それに釣られたのか周囲の大人達も笑い、場は更に和む。
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