第120話 宴事。
「「「「カンパーイ!」」」」
酒の入ったコップを上げた後、高らかに声が店内で響く。
「ゴクッ……ゴクッ……ゴクッ……。パァーッ! やっぱり酒は最高だっての!」
ジョッキに入ったエールを豪快に胃に流し込むマネ。そんな飲み方をするのは彼女だけなのか、周りの人々は一口飲む程度である。
「マネ、飲むスピードは抑えるシ。皆、つまみは何にするシ? 希望がないなら適当に頼んじゃうよ」
シューがテーブルの横にかけてある木札を手にする。追加オーダーをする為に、彼女は石筆を手にして追加の品を書き始めた。
「疲れた〜。まさか領主様の前に顔を出すなんて思わなかったわ〜。シュー、私はチーズの盛り合わせね」
「フンッ、私達は直ぐに部屋を出れたからいい方さ。坊やみたいに一人あの部屋に残された時には酒も喉が通らないね。まあ、あの坊やは何度か、ああ言ったお偉いさんとの顔合わせも経験してるんだろう。部屋に残る時、随分と落ち着いた表情をしてたじゃないか。シュー、燻製盛りも頼んでおくれ」
エクレアとヘキドナは観客の避難誘導時の疲れよりも、領主様と言う貴族との対談に思った以上に気疲れを起こしているのだろう。
彼女達の表情は、仕事に疲れきってたOLの様だ。
「ミツとウチは何度か領主様のところに行ったことあるからニャ。ミツは慣れっこになってるニャよ。あっ、ウチも骨付き肉お願いしたいニャ」
「慣れても相手は貴族様だっての。ウチらとは住む世界の違う人だよ? 意識しないことはないっての。シュー、酒のおかわり頼むわ」
プルンも最初はダニエル様との初めての対談は緊張していたが、数回と顔を合わせを行った事、更にはダニエル様自体、それ程礼儀を気にする堅い貴族では無かった為に、既に彼女の中ではダニエル様相手ならばフレンドに話をする事ができていた。
マネの言う事も間違いではない。
ライアングルの街は領主様の伯爵邸の周りを貴族街と住宅地が広がっている。
プルン達が住む庶民地は、商業地を挟んでいる為に、貴族の者を見るのはとても稀なことでもあった。
その為、マネの言う住む世界が違うと言うのは、冒険者である為に、商業地へ足を踏み込まない彼女の感覚なのだろう。
「プルンの言うとおりですよ。あいつ……ミツは冒険者ギルドのギルドマスター相手でも萎縮してませんでしたし。マッシュポテトお願いしていいですか?」
「ああ。確かにな。洞窟の報酬貰いに行く時も、俺とリッコは緊張してたって言うのに、あいつとプルンは緊張なんて無かったぜ? 俺もそっちの姉ちゃんが頼んだやつお願いしますわ」
「僕はその時居なかったので知りませんけど、僕も領主様との顔合わせが以前経験してなければ頭が真っ白になってたかもしれませんね。それとリックはお酒は駄目ですよ。シューさん、僕とリックはベリーのジュースお願いします」
リッコは自身と歳は一つしか変わらないというのに、ミツとネーザンの対談時の対応を思い出していた。あの時自身はギルドマスターの部屋に案内されただけでもガチガチであったと言うのに、あいつはそんな事は気にせずと、持ち込んだ素材の交渉を問題なく進めてしまった。
リックもリッコと同じ事を思い出したのか、彼は苦い顔をしながらグビグビとコップの中のジュースを飲み干す。
あの時、リッケは父であるベルガーとの剣の修行を行っていた為、二人の話を聞いたぐらいである。庶民である彼等が領主様の前に立つなど、早々と無い出来事である。
兄の言葉を止めるように、まだ中身が入った自身のコップを兄へと差し出すリッケ。
以前、リックは数杯と酒を飲んだだけでも記憶を飛ばす程に酒が弱い事が判明しているので、今日の彼は兄の酒を飲む事を止めるストッパー役でもある。
リックは飲めない事に少し嫌そうに眉を寄せるが、リッケの笑顔が母親のナシルにそっくりなだけに、あまり反論する言葉を出せなかった。
「本当に不思議な子ですよね。しかもあれだけの力を秘めてただなんて……。あっ、私魚料理お願いします。焼いた奴なら何でも構いません」
「はぁ〜。いきなりあんな大きな物を見せられちゃうなんて思っても見なかったわ。今思い出してもドキドキしちゃう。肉の腸詰め頂けますか? お腹すいちゃって、今はロングでおっきいのが食べたい気分なの」
ローゼとミーシャはほんの少し前。出会った当初のミツの姿を思い出していた。
アースベアーのモンスターから、近隣の村人を避難させるためと協力し合ったあの時。
あのまま共にこの日を迎えていれば、ローゼのパーティーは運命を変えていたのかもしれない。
「確実に驚いたのはローゼさんだけじゃありませんよ……。私もあの大きな魔法を見た時は、治療の手を止めてしまいましたし……本当に怖かった……。あっ、すみません。では、私はこれと同じ物を。キャロのジュースを下さい」
「ああ。あれはやばかったな。ここまで来る途中でも、大会の会場の外からでもあれが見えてたんだろうぜ。あっちこっちでその話で持ちきりだよ……。それによ、その……。あいつのあの光の扉ってかなり凄い魔法何じゃねえか? 何か王国の秘術法とか、他の奴らがそんな話しをしてたぜ? 俺は串肉が食いたい!」
大会の会場から姿を見せ、多くの人々に注目を集めた物。それは忍術スキルの一つ〈双竜〉。
四頭の竜は会場の外からでも見え、人々がトリップゲートで避難した中央広場でも目視されていた。
周囲の人々の騒ぎに釣られるように、勘違いした者は急ぎ店を畳み逃げ出した人が多数居たそうだ。その為、会場のある場所とは反対の街の入り口は混雑し、門番は慌ただしくその対応に追われていた
〈双竜〉のスキルで出した竜は直ぐに消えた為、その竜はライアングルの街を襲っている本物の竜ではないと人々は心を落ち着かせた。
明日領主様が行われる会議にて、このまま武道大会が続くのか。それとも中止としてお祭り自体が終わってしまうのか。
今は解らないが、周囲の人々の雰囲気や街の状態を見て判断したとしても、直ぐに終わる状態ではない。商人は稼げる時だからこそ馬車を引き連れ、この街に金を稼ぎに来ている。
武道大会は無くとも、商人としてはその場の販売する権利は金で買っているのだから、商人はその分を取り返さなければ割に合わない。
明日の事を商人同士で話し合い、難しい顔をしながら酒の入った杯を手にする者も、今彼らが居るお店にもチラホラとみうけられた。
「それにしても、ミツさん遅いですね……」
「アイシャ、彼は領主様との話をしてるんだ。遅くなるのも仕方ないさ。それに彼の事だ、心配しなくとも直ぐに来てくれるさ」
「そうよね。あっ、叔父さんは飲み過ぎちゃ駄目よ。お婆ちゃんから飲みすぎるなって言われてるんだから!」
「おいおい。お袋の目が無いと思ったら、お前が俺を監視してたのか。全く、お袋め、孫に何やらせてるのか」
「ふふふっ」
その場の人々は昼間あった出来事に話を花咲かせ、笑い声を店に響かせては酒の入ったジョッキへと絶やさず手を伸ばしていく。
テーブルの上に料理が次々と並び始め、今回の功労者であるミツを待つだけとなったその時。
プルンは焦り声を出す。
「ニャッ!? しまったニャ……」
「ど、どうしたってのプルン?」
「トイレはあっちだシ?」
「あ〜……その……」
近くに座っているマネとシューが何だ何だよと声をかけるが、プルンの表情からは焦った雰囲気は取れていない。
隣に座っているリッコがプルンの顔を覗き込めば、彼女は薄っすらと額に汗を流しているようにも見えた。
「何? 何か忘れ物? あっ、もしかしてお金忘れたとか? も〜。仕方ないわね、あなたの分くらい、私が払ってあげるわよ」
「おっ! リッコ、ごちそうさん!」
「アンタは自分で払いなさいよね!」
「何だよケチくせえ」
そんな二人の会話に周囲がアハハと笑い飛ばすが、やはりプルンは気持ちが落ち着かないのかオロオロとしていた。
向かいに座るローゼはプルンのそんな様子に心配となり、恐る恐ると声をかけてきた。
「でっ? プルンさん、本当にどうしたの?」
「その……」
「んっ?」
再度問われた事に、プルンは渋々と思い出した事を口にする。
「ミツにお店の場所、教えるの忘れてたニャ……」
「ブハッ!?」
「うわっ! リック、汚いですよ!」
「ゴハッ ゴハッ ゴホッゴホッ!!」
たまたま飲み込んでいた飲み物を吹き出すリック。周囲もえっと驚きに目を丸くしたまま、プルンへと視線を向ける。
「ちょっとプルン、教会の誰かに言わなかったの?」
「……ニャハ!」
「ニャハ、っじゃないわよ!」
いつもならば教会のシスターであり母のエベラに連絡を言付けを残すプルンだが、それをうっかり忘れていた彼女。
ギーラには孫のアイシャとマーサとバンの四人で教会を出たことに、プルン自身でもお店の場所などを伝えたと勘違いしていたようだ。
話を聞いていたヘキドナはやれやれと思いつつ、シューへと視線を送ると、彼女は姉の意図を読んだのだろ。コクリと頷いた後、自身の持つコップに入った飲み物を一気に飲み干すと席をたとうとする。
だが、それよりも早くバンが声を出し、席を立つ。
「どれ、なら俺が教会の方にひとっ走り行ってくるかね」
「叔父さん、大丈夫?」
「はははっ。アイシャ、流石に俺でもコップ1杯の酒ぐらいじゃ酔わんよ」
バンはそう言いながら姪のアイシャの頭をゴシゴシと少し頭が動く程に撫でた後、まだ酔も回っていないと告げては店を出ていく。
シューはヘキドナが軽く頷いたことを確認した後、上げかけた腰を椅子に戻すと空にしてしまった飲み物をまた注文する。
「もう。プルン、あの人が帰ってきたらお酒の1杯でも奢りなさいよね」
「うっ〜。解ってるニャ」
「失礼しまーす! エールのおかわりとジュースでーす。料理も直ぐに持ってきますねー」
お酒やジュースが入ったコップを両手に抱えた店員が来ると、ミツが来る前と本格的な飲み会が先に始まった。
「しかしよ。あいつのあの力があれば、試しの洞窟を初回で制覇もできたんじゃねえか?」
テーブルに並べられた料理をつまみながら、リックは以前5人で挑戦した洞窟探検の話をし始める。その言葉に関係ない話ではないと、シューが答えだす。
「そう言えばウチらは4階にあるセーフエリアで帰っちゃったけど。君ら結局何階まで下りたシ?」
「ニャ。ウチ達は8階層のセーフエリアまで行ったニャ!」
「ブッ!」
さらりと答えたプルンの言葉にマネが吹き出し、吹き出した酒が霧状にエクレアにふりかかった。
「ちょっと! マネ汚い! エールが飛んで来たわよ!」
「ゲホッ ゲホッ ゲホッ。わ、悪いっての」
「マネさん、どうぞ」
咳き込むマネへと自然に自身の手ぬぐいを差し出すリック。マネはそれを気にせずと受け取った後、自身の口元を拭いながらプルンへと訝しげな視線を送る。
「ああ。リッケ、ありがとうよ。しかし、あんたら洞窟の挑戦は初めてって言ってなかったかい? それなのに8階って……。あんた、酒飲んで酔ってる?」
「ニャッ!? ウチは飲んで無いニャ! リック達も同じ事言うニャよ!」
「ええ、マネさん。僕達は間違いなく8階のセーフエリアまで行って、ちゃんと帰ってきましたよ」
「は〜。たいしたもんだね……」
「と言っても、彼が居てくれたこそ4階層にも行けたんですけどね。ミツ君が居なければ、僕達はまた3階に戻るか、マネさん達と一緒に洞窟の外に出てましたよ」
「なるほどね〜。でもよ、そこまで行けるのはお前さん達の度胸もあったからだろ? あんたも立派じゃないか! あっはははは!」
「度胸ですか……。確かにあの時のリックには、かなりの度胸が無ければ7階層を通り抜けるのも不可能だったかもしれませんね」
「おっ! 何だい、お前さんの兄貴が如何したって?」
「ふふっ。マネさん、それがですね……」
「だー! コラッリッケ! 兄貴を笑いのだしに使ってんじゃねえよ! それならお前が前衛職に変わった理由を教えた方がその姉ちゃんには面白いんじゃねえか!?」
周囲には勿論聞こえているが、まるで二人だけの話ですよみたいに、リッケはマネへとリックの洞窟7階層にいたスパイダークラブの戦いを語りだそうとする。
しかし、リックは自身の恥を晒されたくないと、リッケが後衛から前衛にジョブを変えた理由を咄嗟に口に出す。
「なっ!? リック。な、何を言い出すんですか!」
「そう言えばお前さん、どうして後衛の支援職から前衛職に変わったっての?」
「そ、そ、それは……」
「お前さんは回復もできれば戦いの支援もできるだろ? 戦う立ち位置を変えるなんて、そう簡単にできるもんじゃないよ。それなのにお前さんは剣を握り前で戦うなんて。なぁ? あんた達もそう思うだろ?」
マネはリッケの様に後衛で戦う奴が前衛に戦うスタイルを変える人物を今迄見たことが無い為、リッケの考えに興味津々であった。
リッケの回復や支援を自身で経験した事があるからこそ、彼女はそのままリッケが支援職をしていれば高い治療術を極めると思っていた。
確かにマネの考え通り、一つのジョブに集中して極めれば達人レベルまで行くかもしれない。
だからこそ前衛で戦う剣士は剣を限界まで極め、前衛の経験を活かすならば、次にジョブを変えても剣を使うジョブ、若しくはそれに近いジョブを選ぶのが普通の考えである。
ジョブを変えたとして、支援職から支援職になる。その考えは勿論リッケの中にもあった。
だがそれはイレギュラーな人物であり、ミツとの出会いと戦い振りを見てきた彼の中では、塗り固められた考えが消え、更にはマネがきっかけであった。
話を振られたリッコとプルンはリッケの気持ちも知っている分、言葉に困りながら返答を返すしかできなかった。
「まあ、兄が決めたことですし……。それにね……」
「そうニャ……」
兄の恋心を応援したい気持ちもあるが、彼女達も恋愛の経験が殆ど無いため、ここぞという時は如何すれば良いのかが解らなかった。
その場の雰囲気もあったのか、それとも漂うお酒の香りに当てられたのか。リッケは意を決したように、自身が前衛にジョブを変えた理由を述べ始めた。
「マネさんが……」
「ああっ? なんだい? アタイがなんだっての。聞こえないね」
リッケの小さな声を聞き直すマネだが、リッケは既に顔が蒸気したように真っ赤であった。
ジッと見つめていた自身のコップからマネの方へと視線を向ける。
「……。お、男はガッシリしていた方が……その………モテると言われましたし……その……あの……マネさんは強い人としか結婚しないと言ったので……」
「なっ……!?」
「嘘……マジで……」
「「「〜〜〜」」」
リッケの言葉の意図を理解したのか、その言葉を聞いていた者は驚きと目を丸くした。
マネの姉であるヘキドナは驚きのあまりに口に当てる前とコップを傾けたせいで酒をこぼし、エクレアも同様とリッケの言葉に動きを止めてしまう程。
リッケの気持ちを知っていたリッコとプルンとシューは、こんなところでまさかの告白に近い言葉に自身も手で口を抑え、溢れだす興奮に襲われていた。
周囲もリッケの言葉に驚いていたが、勿論真実を告げられたマネも驚きに目を瞬かせていた。
だが、マネの口から出された次の言葉はリッケの思っていた言葉とは違った答えであった。
「……。あっはははは。なんだい、あんた私の言葉で態々前衛にジョブを変えたのかい。まぁ、回復もできて前衛なんてそうも居ないからね。そうかいそうかい。あんたが前衛で本格的に戦えたら、女にモテるだろうね」
「うっ……。は、はい。そ、そうですかね……。頑張ります……」
マネの言葉に、胸にナイフを突きつけられた思いに襲われたリッケ。彼の顔は見る見ると青ざめた後、マネへと向けた表情はかなしげな笑みであった。
「す、すまん。リッケ……」
「いえ……リックが謝ることはありませんから……。すみません。お酒下さい……」
「うわ〜……」
「リッケは酒に逃げるタイプだニャ……」
顔をうつむかせる弟を見ては、兄であるリックは余計な事を言ったと反省したが、マネの反応は周囲が思っていた反応と違った為に、リッコ達も下手にリックを責めることができなかった。
マネは手に持つ酒の入ったコップをぐっと飲み干す。そんなリッケの姿を見ては、酒で赤くなってしまったのか解らない頬を指先で掻きながら、彼女は無理やりに話題を変えてきた。
「でっ、さっき言ってたお前さんの兄貴が如何したっての?」
リッケはマネの問に一度リックの方へと視線を向けた後、その場で何があったのかを彼はさらりと真実を述べ始めた。
「……。兄のリックは、その階層にいるスパイダークラブを見て気を失ったり、ろくに戦闘ができずに動けなかったんです」
「プッ!」
リッケの言葉に吹き出すローゼ達。
その反応もだが、弟の突然の暴露に慌てだすリック。
「お前っ! 八つ当たりに何口走ってんだよ!」
「……いいじゃないですか。最後にはリックは普通に戦えてたんですし。それに八つ当たりなんか僕はしてませんよ」
「こんにゃろ〜。それと! そこのお前らも笑いを吹き出してるけどな。絶対お前らもあれを見たら俺と同じ様になるぞ! 絶対にな」
リックはローゼ達が居る方へと強い視線を送りつつ、洞窟でどれ程自身が苦労していたを語りだす。
「ごめんごめん。笑ったのは謝るけどさ……。貴方前衛でしょ? それなのにモンスターを見て気を失うって……プッ……」
「こ、こいつ……。俺はアタッカーの前衛じゃねえんだよ! 基本こいつらを守るディフェンダーとしての前衛だ」
「なら尚更ね。貴方のパーティーでは、貴方が前衛でリーダーなんでしょ? なら、しっかりと周囲を見る判断力がなければ、貴方の動きで弟さんや妹さんだけじゃなく、一緒に戦う仲間を危険に晒すわよ」
「へいへい。ご忠告ありがとうよ。……たくっ」
リックはもうローゼの言葉を聞き流すように、荒々しく椅子に座りなおす。
「ローゼ、言いすぎよ。ごめんなさいね〜。この子、真面目すぎる性格なだけに、戦いの事になると考えが堅いのよ〜」
「ミーシャ。私は命のやり取りをする戦いでふざけたくないだけよ」
「も〜。ローゼったら」
「へっ! お堅い考えばかりしてるから、この間も早とちりで俺達に攻撃してきたんじゃないか
?」
ローゼの発言に思う所があったのか、以前路地裏にてリック達がプルンと話している場面を恐喝していると勘違いしたローゼを責めだした。
「ちょっとリック。止めなさいよ」
「あの事は謝ったじゃない! 態々前の話持ち出すなんて男としても小さいわね!」
「ああっ!? こっちは一方的にやられてんだぞ!? お前らがやった事をギルドに報告したらどっちが悪いか証明してやろうか!」
「くっ!?」
互いにまだ思うところがあったのか、リックの言葉が更にヒートアップしていくところへ、リッケの止の言葉が間に入る。
「ローゼさんでしたね。確かに僕達の兄は戦いになると判断力も落ちて、戦いでも戸惑う事もあります。でも兄は兄で僕達を守ってくれますし、周囲を見て戦いの判断は僕もサポートしてます。貴方のパーティーでどう戦い、どう言う立ち回りをしているのかは知りませんが、あまり他者を自身の物差しではかる様な言葉は控えてほしいですね。それにリックも落ち着いてください。あの時の戦いをギルドに報告したら、リッコも罰則を受けるかもしれませんよ。リックは猪突な考えをするなと、よく父さん達からも言われたでしょ。あの人達が謝罪したことは間違いないんですから、これ以上リックがローゼさんに物事を言うのは僕らが恥ずかしいですから止めてください」
「んっ……」
「……」
場の空気が険悪となりつつも、喧嘩両成敗と言わんばかりにリッケの言葉に二人はばつの悪そうな表情を作り視線をそらしてしまう。
「は〜。納得してないみたいですね。解りました。僕に提案があります」
「リッケ、提案って何ニャ?」
「はい。これはミツ君が来てから話しますので少し待って下さい」
「ニャ〜」
リッケが何を言い出すのか解らないが、先程からやり取りを第三者として見ているヘキドナ達。 この言い争いがどの様な結果になるのかを少し楽しみにして見つつ、マネがリッケを見る少しだけ熱い視線も楽しんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます