第111話 仲間の場所へ。

 武道大会、会議室にて。

 領主ダニエルの奥方、第一婦人であるパメラはテーブルに肘を付き頭を抱えていた。

 旦那であるダニエルの配慮にてこの部屋で息子達を捜索に出たミツ達を待っていろと。

 その言葉を受け取り、テーブルに置かれたお茶が冷めてしまう程の時間を彼女は待ち続けている。


「ああ……命たる神々よ……。どうか我が子達に救いの手を……」


 ぼそりと溢れるパメラの声に、護衛としてつけられているアマービレは苦悶の表情をうかべ、同じくラルス達を救出と向かってしまった主人であるセルフィの安否を心配していた。

 アマービレが口を開き、パメラへと慰めの言葉をかけるにも相手は伯爵夫人。只の近衛兵であるアマービレがやすやすと安易な言葉をかけることもできず、彼女も心の中だけしか思う事しかできなかった。

 そんな静寂を満ちた部屋の中。

 ブオンっと光が走る音がする。

 ハッと二人は顔を上げ、二人の視線は扉のない壁へと向けられた。


「奥様!」


「ええっ。解っております」


 急ぎアマービレがパメラの椅子を引き、彼女と共に光の扉の前へと立つ。

 光の扉からコツリと一人の足が出てくると、次々とその扉を人が通り抜ける。


 その者を見てパメラの顔は喜びに微笑み、アマービレもホッと息を漏らす。


「奥方様。只今戻りました」


「ゼクス。無事で何よりです」


 先に帰還の報告とゼクスがパメラへと頭を下げる。


「本当に。……無事で良かった。ラルス」


「ご心配をおかけしました義母上。フロールス家嫡男。ラルス、今戻りました」


 見た目ラルスの服装はボロボロであるが、傷はミツの回復にて治療済みである。

 外傷もないことにパメラは安堵。

 三人しか戻らなかったことに少し疑問に思っていた所、セルフィはミアとロキアを連れて、先に屋敷へと帰ったことをゼクスが言葉を入れてくれた。 


「そうですか。二人も無事なのですね……」


 そう言葉を発した後、パメラは深く息を吐いた後、ミツの方へと振り向き深く頭を下げてくる。  


「ミツ様。この度は我が家族をお救い、心から感謝を申し上げます。今私から貴方様へ送れる物は言葉しかありませんが、必ず我々フロールス家は貴方様へ、感謝の念をお渡しいたすところをお約束いたします」


 頭を下げたまま後にお礼を必ずするとまで口にするパメラ。

 貴族が庶民へお礼をする際は税金の免除なり、食料や金銭を渡して済ませる物。

 だが、今回ミツの協力がなければ事件はまだ解決することもなく、下手をすればフロールス家の跡継ぎを、全て失ってしまうかもしれない程の大きな事件である。

 また、それとは別に、パメラとしては家族を助けてもらった、その事が口にしてまで一番お礼をしたい理由であろう。


「いえ。兄妹三人が頑張ったから助かったんです。ラルス様がミア様とロキア君を守ったから。それに、その後もミア様もロキア君も盗賊に負けじと頑張った結果ですよ。自分達が三人を助けれたのは、三人が諦めなかったからです」


「……。左様で。パメラ様、ラルス様のご活躍、私、フロールス家の執事としてこれ以上の誇りはないと思います」


 まるで目の前で見ていたかのようにミツとゼクスが兄妹揃って盗賊に抵抗を見せていた事を話せば、ラルスは疑問符を頭に浮かべていた。


「んっ? まて、お前達は何故そんな詳細に」


「ホッホッホッ。ラルス様、それもこの方のお力故でございます」


「そ、そうか……。ミツよ、改めて礼を言おう。義母上、先程申し上げました通り、セルフィ殿含め屋敷へと三人を先に返しております。今は落ち着いておりますが目を覚したロキアが心配です。どうか目を覚ます際にはお側にいてあげてくださいませ」


「解りました。貴方はそのまま旦那様の元へおいきなさい。きっとその姿を目に入れればあの方は喜んでくれるわ」


「ははっ……。油断し、おめおめと拐われた事を何か言われそうですが、今回は素直にお叱りを受けることとします」


 ラルスの返しにやっと心から安堵したのか、パメラ様は笑い返しながら、目元に溢れる涙を拭っていた。


「それではゲートを出しますね。場所はお屋敷の談話室で良いですか?」


「ええ。ミツ様、ありがとうございます」


 パメラがスッと頭を下げた姿の後ろで、彼女の護衛と付けられていたアマービレが何やらソワソワとした感じにこちらを見ている事に気がついた。


「いえいえ。あっ、えーっと………」


「あ、アマービレです……」


「そうそう。失礼しました。アマービレさんも一緒に行かれますか?」


「セルフィ様も屋敷にいらっしゃるのですよね?」


 パメラと共にゲートを潜り、屋敷へと行くかと聞くと、彼女は少しホッとした表情をし、屋敷にいるはずのセルフィの元へ行くことを告げてくる。


「ああ、今は恐らくミアと共に湯浴みをしていると思う。あっ……。義母上、後に母上も屋敷へと向かうと思います。その時にですが……その、ミアの身体を……。あいつ自身、傷は無いと申しておりました」


「……。解りました」


 少し濁した表現をするラルスの言葉に直ぐに思い当たったのか、パメラ様は少しだけ目を伏せ、短く言葉を返す。


「ミツ様、また後に。失礼いたします」


 トリップゲートをフロールス家の屋敷の部屋へと開き、パメラとアマービレが通り抜ける。

 踵を翻し、こちらにまた頭を下げたパメラを見た後ゲートを閉じる。

 

「情けないな」


「ラルス様?」


 踵を返し、会議室を出た後、ダニエルのいらっしゃる貴族席へと向かう道中。

 ラルスは悔しそうな顔をしたまま口を開く。


「結局、何から何まで俺は頼ってばかりだ……」


 ラルスの言葉の意味は直ぐに理解できた。


 弟妹共に自身も盗賊に虜囚されてしまった。

 魔法学園でも上級生を抜いて選抜大会にも優勝を飾り、自身でも力に驕っていたのかもしれない。

 結果、弟妹含め自身を助けてくれたのは執事のゼクスと客人のセルフィ。

 そして、母上達が手厚く招いている冒険者のミツ。

 三人の力で自身達は盗賊の手から救われ生きている。

 しかし、ミアとロキアには恐怖する経験をさせてしまった。

 その心を癒やすことも、今の自身には何もできない。

 結果、親であり、支えの母上や義母上の二人に弟妹を任せることになってしまった。


「「……」」


 ラルスの言葉にミツはゼクスと顔を見合わせる。

 ラルスの横に並び歩きながら、自分はラルスへと言葉をかけた。


「ラルス様、自身にできないことを人に頼っては駄目なんですか?」


「……」


 ラルスは歩くスピードをそのまま変えることもなく、彼は歩き続ける。

 ミツはそのまま話をすすめる。


「人は人が居なければ何も出来なくなります。物を食べるにも食べ物を集めなければいけません。更にそれを調理する人も」


「……」


「寝る時も誰かがベッドや寝具を作ってくれなければ地面で睡眠を取らなければいけません」


「……」


「物事を教わるのも他人です、自身の知らないことを人に頼って教えてもらいます」


 今、ラルスの頭の中ではフロールス家に雇われているメイドや料理人の姿が次々と脳内に写し出されている。

 野菜などを詰め込む行商人。

 それを受け取る料理人のパープル。

 ゼクスとの剣の修行にて汚れた身体を洗い流してくれていた側仕えのメイド。

 魔法を発動し、自身の事のように喜ぶ母と私兵の人々。

 そして自身を憧れの眼差しで見てくる弟妹の二人。


「今できないのであれば、明日できるようになりましょう。明日が駄目なら明後日、明後日が駄目なら次の日。そうすればラルス様にできて、他の人にできない事が、いつの間にかできるようになるかもしれません。何でもできる人なんて一人もいませんよ」


 ラルスはその場で足を止める。

 溜めていた息を吐くように大きく深呼吸をした後、彼は軽く鼻で笑う。


「フッ……。お前の言う事は極端過ぎる……。だが、その言葉、俺は嫌いではない」


 振り返ったラルスの顔は穏やかに見える。


「ホッホッホッ。ラルス様、人の成長を止めてしまうのは他人ではなく自身の心でございます。貴方様は貴方様にしかできない事がフロールス家にある事をお忘れなきよう。もし貴方様がフロールス家の嫡男としての道を外すようなら、私は次男であるロキアボッチャまに跡継ぎとしての働きを見せることとなります」


 ありえない話であるが、ラルスに発破をかける言葉であることはラルス本人も解っているのだろう。

 それも鼻で笑った後、ラルスは目を細めながらゼクスへと言葉を返す。


「……。安心しておけ。俺は弟に荷物をもたせる愚行はせぬ。それに、ミアにも誓ったからな……」


「ホッホッホッ。左様で。その誓い、果たされぬ時が無きよう、私も粉骨砕身とラルス様をお支えしますぞ」

 

「……。いや、今はお前はロキアを守る剣となれ。あいつはまだ子供なのだからな」

 

「はい……。お心のままに」


 少しだけスッキリとしたのか、ラルスの足取りが軽くなっている気がする。


 別館にある会議室から渡り廊下を通り、大会会場へと向かう道中。


 ドカッーン!!


 突然心臓にも伝わる程の爆音が響き、三人は足を止める。


「なっ!?」


「爆発音ですか?」


「随分と激しい試合を繰り広げているようですね?」


「いや、試合にしては悲鳴の様なものが聞こえたぞ」


 ラルスの言葉に〈聞き耳〉スキルを発動させる。

 発動後、聞こえてくるのは男性女性と、関係なしに多数の逃げ惑う様な悲鳴の声であった。


「確かに……。ゼクスさん、ラルス様、急ぎましょう」


 急ぎ場に走る三人。

 道中すれ違う人達は我先と逃げ出したのか、自分達を見ても足を止めることなく次々と闘技場の方から逃げるように走っていく。

 そして、更にキャーキャーと悲鳴の声が聞こえて来る闘技場の方にたどり着き、三人が見たもの。

 それは闘技場の半分を何か真っ赤な物体が蠢き、人々を触手の様な物で襲っている場面であった。

 触手に捕まった者を助けようと剣を振り下ろす者。触手を近づかせないようにと魔法で壁を作り多数の人々を守る魔術士。

 モンスターが闘技場にあらわれて、観客を餌としようとする場面に、ラルスは逃げる人を止め話を聞き出した。


「なっ! 何だこれは! おいっ! これはどう言う事だ!」


「な、なんだよ!? 見てなかったのかよ! ステイルって錬金術士が化物になって、次々と人を殺し始めたんだ! 警備兵が倒したと思ったら、あいつ、化物になって、人を食い出したんだ! 後は知るか!」


 その者の説明は断面的な説明すぎて、ラルスには理解できなかった。


「意味がわからん……。それよりも、父上と母上は!?」


 ラルスは貴族席に座っている筈の父と母を探すが、貴族席には誰もいなかった。

 いや、貴族席自体破壊され、人がその場にいることすら解らない状態であった。


「そんな、父上……。母上……」


 闘技場の状態に唖然と口を閉ざす三人。

 そこにラルス達の名を呼び走って近づいてくる一人の兵士。


「ラルス様! ゼクス殿!」


「「!?」」


「お二人ともご無事で!」


「お前はトスラン!? 父と母上は如何した!?」


 ラルスが名を呼んだのはダニエルの近衛兵の一人、トスランであった。

 歳は四十過ぎであり、髪はオールバックとちょび髭を生やした男性である。

 剣の腕前はゼクスに及ぶことも無いが、ダニエルの側で長く近衛兵をし、良き相談相手の一人でもある。

 彼は頭を怪我をしているのか、頭から血を出している。それもだが、ラルスの視線は彼の抱きかかえている少女もである。


「トスラン殿、その幼子はいかがした!?」


「ハッ、ゼクス殿。このお方は他貴族の娘様にあります。この騒ぎ、親身と離れていた所をお救い致しました所です」


「左様で。ミツさん、どうかこの二人に治療を施して頂けませんか? 幼子もどうやら足を怪我をしている様子です」


「はい。トスランさん、すみませんが少しだけかがんで下さい」


「ミツ殿。感謝いたします」


 ミツもトスランとの面識もあったので彼に遠慮すること無く回復を行う。

 トスランは自分の手が届くように膝をつき、自身の頭を下げた後、手に抱える少女を見せる。

 まだ歳は10も行かぬその子の足からはポタポタと血の滴がしたたっていた。


「して、トスラン。再度問うが、父上と母上は」


 傷も塞がり、顔色を良くした二人を見てラルスが改めてダニエルとエマンダの安否の確認と口を開く。トスランは眉間を寄せ、謝罪の言葉から口に出す。


 

「申し訳ございません。モンスターから主様と奥方様をお守りする為と、私、剣を構えた時、近くにいたこの娘子を守るようにと主様からの指示を受けたまった際、モンスターの攻撃で観覧席に瓦礫などが舞降ってきた為に、主様と別々の出口からの脱出となりました。今はこの子を安全な場所へと運び次第、主様と奥方様の捜索に戻るつもりです。今はセルフィ様の近衛兵であるリゾルート殿とグラツィーオ殿がお二人の側におられると思われます」


「そうか。ならばその娘を早く安全な場所へと連れて行け。そして、他にも怪我をした者がおると思う、貴殿はまたその者達を外へと運び出してくれぬか」


「ですがラルス様……。いえ、承知致しました。我がトスラン、ラルス様の指示に従い、人々の救出に当たらせて頂きます。ゼクス殿、どうか主様を」


「うむ、トスラン殿。貴殿の意思、必ずやご主人様をお救いいたしますぞ」


 トスランに〈速度増加〉のスキルをかけておく。彼は軽く頭を下げた後、出口の方へと走り去って行った。


 闘技場の方に視線をやれば、剣士と魔術士が機敏な動きをみせ、モンスターからの攻撃を避けながら触手へと攻撃を繰り出していた。

 二人の攻撃は決め手になっていないのか、斬っても焼いても触手は次から次へと赤く染まった物体から生え続けている。

  

「……」


「ミツさん、いかがなさいましたか」


 闘技場の方を見ていたミツが険しい表情をしていたのか、ゼクスが声をかけてきた。


「ゼクスさん、すみませんが自分も仲間が心配ですので、今から皆の所へ行ってきます」


「な、待て! 今お前が離れてしまっては……」


「構いませぬ」


 少し眉をピクリと動かしたラルス。

 彼はミツとの別行動を反対する言葉を出そうとしたが、それをゼクスが止めてくれた。


「ミツさん、私達は恐らく旦那様がいらっしゃると思われる多目的ホールへ向かいます。あのモンスターの触手は今は闘技場で食い止められておりますので、今の内に走り抜ければ我々二人だけでも辿り着けるでしょう。貴方は貴方の大切な方々をお救い下さい」


「ゼクス……。仕方あるまい。ミツ、時間が惜しい、急ぎ仲間を救出して来い」


「はい! 必ずお迎えにあがります。お二人ともありがとうございます。 それでは、お二人には支援をかけさせて頂きますので手を出してください」


「ホッホッホッ。それは助かりますぞ。さっ、ラルス様も手を出してくださいませ」


「う、うむ。頼む」


 二人に別行動の承諾を得た後、二人におまじないである能力上昇系スキルをかけ、更に〈ブレッシング〉などの支援をかけておく。

 ラルスは湧き上がる自身の魔力を感じたのか、驚きと自身の拳を握りしめていた。


「……。これは凄い……」


「お心遣い感謝いたします。ラルス様、急ぎますぞ!」


「お、おう! ミツよ、お前も気をつけて行くが良い!」


「はい!」


 人々を掻き分け、ラルスとゼクスはダニエルとエマンダの救出へと向かう。

 ミツはプルン達がいる筈の観客席へと視線を向ける。運も悪く、まだ皆は観客席から避難していないのか、それともできなかったのか、リッコとミーシャ含め、数名の魔術士と協力しあい、火壁と氷壁にて触手の進行を止めている状態であった。

 

「急がなきゃ」


 人の混み合う通路を通り、プルン達のいる場所に行くにも時間がかかってしまう。

 辺りを見渡し、仲間たちのいる場所へと急ぐことにした。



「ぎゃあああ!!!」


「!? うっ……」


 観戦席が混乱する中、また断末魔の声と悲鳴が飛び交う声を耳にする度に、リッコは不安と恐怖に抗う様に周囲に火壁である〈ファイヤーウォール〉を発動し、観客席へと侵食し続ける触手を防いでいた。

 

「リッコ、踏ん張れ! 壁を超えられると一気に迫ってくるぞ!」


「もうっ! 何なのよあの気持ち悪いのは! 次から次ときりが無いじゃない」


 リック達が出口として使える北口と東口には人が殺到してしまい、思った以上に脱出に時間を食らってしまっていた。

 更に人が集まった事に触手が反応したのか、北口の方に集中して大量の触手が迫り、数名の被害も出てしまい、更に混乱したために北口からの脱出は不可能となっている。


 ならば東口からの避難を急ぐべきなのだが、そこにも人は集中して集まりはじめている。

 

 観客が襲われない為にと広域的に魔法を発動し続けているが、リッコや多数の魔術士の負担はとても大きく、全ての触手を防ぐことができてはいなかった。

 展開されている魔法を潜り抜け、触手が男性の足を掴んだ瞬間、彼を観客席から引きずり込む勢いに対応が遅れる。


「うっわわわ!! た、助けてくれ!!」


 それでも何とか周囲に固定された椅子にしがみつく男性。


「ちっ! シュー!」


「あいよー! 任せるシ」


 ヘキドナは嫌そうに舌打ちをし、シューへと指示を飛ばす。

 呼ばれたシューは小柄な身体を生かし、素早く男性へと近づく。手にダガーを握りしめ、触手を切り裂き男性を救う。


「ほら、もっと上に逃げるシ!」


「嬢ちゃん、すまねぇ、助かった!」


「ムッ。感謝されてるのは解かるけど、嬢ちゃんはよけいだシ」


「シュー! 右! 右!」


 少しふくれっ面のシューにエクレアが焦ったように彼女へと言葉を飛ばす。

 彼女の横には先程シューが自身で切った触手が再生したのか、切り口から更に数本の触手を生やし、彼女に迫ろうとしていた。


「ほえ? ほぎゃあああ!!」


「「シュー!」」


 スパッン!!


「うきゃああ!!」


 シューに襲いかかろうとしていた触手、そこにヘキドナのムチがクリーンヒット。

 肉を弾く音を響かせ、触手の先端を粉砕してしまう。シューは近くで触手が破裂した為に、肉片が飛び散るシーンを間近で見てしまい悲鳴を上げてしまう。


「シュー! ぼさっとしてるんじゃないよ! 捕まったら食い殺されるよ!」


「アネさん、助かったシ!」


「ふんっ! マネ、エクレア、ヘマして転ぶんじゃないよ! 襲い掛かってくる奴は全部切り裂いてやりな!」


「がってんですよ姉さん!」


「リーダー! でもこれ、全然きりがないですよ!」


「ちっ! お嬢ちゃん達、死にたくなければ魔力を出し切るつもりであれを燃やしつくしな! 武器を持たない奴は後ろに下がってな! 餓鬼と年寄りは特に邪魔になるからね! 男は肉壁になるつもりで盾になりなよ!」


「こ、怖え……」


 叫ぶように周囲へと指示を飛ばすエクレア。

 その迫力のこもった言葉に男達はたじろぎつも、ヘキドナの指示に従い非戦闘員の人々を守るように動き出す。


「言われなくても、もう魔力の出し過ぎで頭がくらくらよ!」


「マネさん! 支援をかけます! 他の方も支援をかけさせてください! 治療が必要な人はいませんか!?」


「ミーシャ! 次が登ってくるわよ!」


「はいは〜い。そんな熱く私に迫ってくる触手は全て凍らせるわよ〜。ローゼは喜ぶかもしれないけどね」


「あんな気味の悪い物にせまられても嬉しくないわよ!」


「ミミ、お前は怪我人の治療に集中してろ! お前には化物を近づかせねえからな!」


「ありがとうトト! 動かないで下さい! 今折れた骨を治しますから!」


「ニャッ! 斬っても斬っても生えてくるニャ! やっぱりこれは魔法で燃やした方がいいニャ」


「ごめんプルン、今はこっちの火壁を止めれないの!」


 プルン達だけではなく、観戦席にいた冒険者達は各々と武器を手に迫る触手に抵抗を見せていた。

 魔法、剣、様々な攻撃で抵抗を繰り広げてきたが、触手の思った以上の厄介さ。

 ステイルが倒れた西口ではラクシュミリアとファーマメント、二人が休まず攻撃をステイルの亡骸へと繰り出していた。

 ラクシュミリアの斬撃は触手を切り裂き、新たな被害者を出さぬようにその剣は振り続けられ、ファーマメントの炎は切り裂かれた触手の再生を止めるためと、灰も残らぬ程の熱にて燃やし溶かされていた。これを続ければ倒せるのかと考えていた二人だが、触手は焼けた自身の体の一部であった触手部分を掴み引き寄せ、それをも餌とし取り込んでしまっている。

 そう、二人の攻撃に抵抗するかのように、ステイルの亡骸から出ている触手は、あろうことか締め殺した物をその体内へと次々と取り込んでしまっている。

 先に殺めてしまった数名の係員、そして治療士。

 触手は人を取り込む程に成長し、無数の触手が膨らみ数を増やし続ける。

 ステイルの身体自体、既に触手に侵食されてしまったのだろう。既に本体がどちらなのかも理解できない程であった。

 そして、更に数名と観客席にいた人をその触手で殺めた上に取り込む事に、触手の固まりがある異変を起こし始めた。


「何だあれは!? やべえぞ! あの肉の塊、更に触手を出してやがる!!」


 リックが触手本体の方へと指を指し声を出すと、皆も其方へと視線が集まる。

 

 肉のかたまりはプツプツと気味が悪い量の触手の数を出し始めていた。

 例えるならウニやイガ栗やサボテンであろうか。

 生存本能として中心を守るように、周囲を触手が張り巡らせていた。

 だが、出てきた新たな触手は外敵から自身を守るための盾ではなく、獲物を捉える為に生えてきた物であった。

 数百と生えてきた触手は、それぞれが意思をもっているのか、次々と周囲の獲物目掛けて侵食を始める。


 先程まで数本襲い掛かってくる程度の触手が数を一気に増やし、人々のいる観戦席へと迫る。

 それはリッコ達のいる観戦席にも同様に。


「リッコちゃん! 前、来るわよ!」


 ミーシャの呼び声に一瞬驚くリッコ。

 名前を呼ばれたことに、いちいち反論する暇もなく、自身達に襲いかかってくる数百と言う触手に抵抗するように、リッコが火壁を出し、ミーシャがその後ろに氷壁を作り出す。


「!? ちっ! やぁぁぁああ!!!」


「ミーシャ!」


「ローゼは下がって! トトはミミちゃんを下げなさい!」


 触手を燃やすほどの業火であるが、数本が火壁を通り抜け、氷壁に数十と触手がドスドスと作り出した壁に突き刺さる音にたじろぐ面々。

 突き刺さった触手はそのままリッコの火壁に燃やされていたが、氷壁から突き出た触手やその襲いかかる数に人々は恐怖していた。


「あんたら、早く下がりな!」


「ひっ!! 気持ち悪いシ!!」


「エクレア! 引くよ!」


「何なのよもう!」


 周囲を危険から下げさせるためと、ヘキドナの声がその場に響く。

 それでも東口に集まった人々の逃げる足は止まることなく出口へと向かっている。 


「い、嫌だ! 助けてくれ!!」


「どけっ!俺が先だ!!」


 我先と人を押し退け、無理矢理に逃げる者。

 たちが悪い奴に関しては、人混みを使い、人を踏み台としてその上を歩き逃げる者もいた。

 背中を押され倒れたところに、人に踏まれ手足を骨折する者。

 その場は混乱状態。


「きゃああ!!」


「ニャ!」


 突き押されて怪我をしてしまったのか、一人の女性がその場で倒れたところに氷壁を潜り抜けた触手が女性へと襲いかかっていた。

 その触手は今迄対処してきた物よりも太く、リッコの火壁でその身を焦がしてもウネウネと気味の悪い動きを止めてはいない。


 女性の悲鳴に近くにいたプルンは即座に駆け出し女性を触手から守る為とナイフを構える。


「ニャッ! ニャッ! 大丈夫ニャ!? さっ、逃げるニャよ!」


「ごめんなさい、ありがとうございます」



「プルン、危ねえ! 離れろ!」


「!?」


 襲いかかる触手を切り裂き、女性を避難させようとプルンは女性に肩を貸したその時だった。

 プルンが切り裂いた触手の断面から更に数十もの数の触手が即座に生え、彼女達を取らえようと触手を伸ばしてくる。


「「!?」」


 スパーンッ! ゴォーーー!!


「「「「!!!」」」」


 触手がプルンに襲いかかった瞬間、観客席に入ってきていた触手は全て人々の目の前で激しく切り裂かれ、時間もおかずと地面から突き出してきた業火にて、触手は全て燃やされてしまった。


「プルン、大丈夫」


「ニャ……。もう、遅いニャよ、ミツ!」


 突然現れた火柱はミーシャの出した氷壁をドロリと溶かし、そして触手をも燃やし尽くしていく。

 熱量が大きい為か、プルンが呆気にとられている所、後ろから聞き慣れた声に耳をピクリと反応させ、ゆっくりと振り向き、彼女は笑顔に声を出す。

 周囲の人々も突然現れた火柱に驚いていたが、ミツがいつの間にかその場にいた事に辺りから声が漏れ出す。


「「「ミツ!」」」


「「「「ミツ君!」」」」


「お前、今迄どこに居たんだよ!?」


「そうよ! 勝手に試合も棄権しちゃってさ! 何かあったのかと心配したでしょ!」


 詰め寄る二人を宥める。


「えっ? 棄権? 自分試合棄権扱いになってるの?」


「「えっ?」」


 皆の前に突然現れた事に驚かれたが、自身が試合を棄権扱いされていたことにミツも驚きである。


「二人とも、それは話は後にしてちょうだい。ミツ君、あなたいつの間に? それよりも、これはあなたがやったの?」


 ローゼが駆け寄り話を止め、ミツが出した〈忍術〉の1つである火柱に指を指して聞いてくる。 


「はい。これは自分のスキルですよ。それよりも、皆さんここから早く避難しましょう」


「そ、そうね……。聞きたいこともあるけど、話は後よね……。わっ!?」


 高く立ち上る火柱が気になるが、今優先すべきなことは避難だと自身に言い聞かせるローゼであった。

 そこにローゼを軽く押し退け、話に入ってくるヘキドナ達四人。


「坊や、話中悪いね。口を出すようで悪いけど、避難するにも出口があの状態だよ。あの込み合いが落ち着くまで私達があの化物の足止めをしないと、流石に引くに引けないね」


「姉さんの言うとおりだよ! おめおめと戦えるアタイ達が先に逃げるなんてできないっての!」


「ヘキドナさん、マネさん」


 ムチを構え、近寄るヘキドナとマネ達。

 彼女達は一般人が避難するまでは自身達が避難することを拒んできた。

 エクレアとシューも首を縦に振っている。


「……解りました。それでは先に戦えない人達を避難させましょう」


「「「「?」」」」


「「「!」」」


 ミツの言葉の意図が解ったのか、リッコ、リック、リッケはハッと目を開き少し驚きの表情をつくる。意味も解らない人達は疑問符を浮かべていた。


「ミツさん!」


 そこに駆け寄ってくる一人の少女。

 彼女も怖い思いをしていたのか、目に涙を浮かべながらミツの胸に抱きついて来る。

 アイシャの涙を指ですくうと、彼女はそれだけでも安心したのか、笑みを作ってくれる。

 

「アイシャ! 無事だったんだね、良かった。マーサさん達もご無事で」


「ミツさん、ええ。皆さんが襲ってくるモンスターから私達を守って頂けていたので、家族には大きな怪我もありません」


 マーサの言葉に周囲にいたバン達を見ると、瓦礫などで怪我をしたのだろう。確かに骨折などの大怪我ではなさそうだが、それでも手や足の痛々しい傷が目に入る。


「そうですか……良かった。ギーラさんも大丈夫ですか?」


「ああ。心配かけたねミツ坊。それよりもミツ坊や、どうやってここから避難するんだい……。そちらのお嬢さんの言うとおり、あの込み合いがおさまるまではここから逃げ出すことは難しいんじゃないかね……。もし助かるのならアイシャだけでもアンタが連れて避難してくれんかね」


 ギーラは混み合う人混みを見ては顔を曇らせる。

 アイシャの頭を撫でながら、ミツに共に避難しろと懇願してきた。

 その言葉にアイシャはまた目に涙を浮かべ、今度は祖母であるギーラを離すまいと強く抱きつき泣き出す。


「お婆ちゃん! やだよ! もう皆と離れたくないよ」


「アイシャ……」


 父を戦争で失ってしまい、家族を失う辛さを理解しているアイシャの気持ちは良くわかる。

 アイシャの言葉に、日本にまだ住んでいた頃、病棟で亡くなってしまった祖父を思い出してしまった。

 家族を失う気持ちなんて、二度も経験したくないものだ。そんな不安そうな顔をしているアイシャへと優しく声をかける。


「アイシャ、大丈夫だよ、安心して。避難はちゃんと皆とするからね」


「ミツさん……」


 アイシャの頭にポンポンッと軽く手を当てた後、ミツは人混みが並ぶ後の列へと歩みを進める。

 側にプルンやリック達が近寄り、確認の為と小声気味に言葉をかけてきた。


「ミツ、良いのか? アレだよな……お前、ゲートを使うつもりだろ。あんなの使ったら確実に貴族の奴らから目を付けられるぞ……。お前だったら、他にもここから脱出できる方法とかあるんじゃ?」


 リックの言うとおり、ミツは〈トリップゲート〉を使用し、逃げ遅れている人達をこの場から避難させるつもりであった。

 彼と同じ様に弟妹であるリッケとリッコも再度使うのかと確認の言葉が来る。

 リックの言わんことは解らなくもない。

 強硬手段として闘技場の壁をスキルなり魔法なりで吹き飛ばして道を作り、後にそこから脱出すれば良い話でもある。

 だが、壁の向こう側にも人はおり、今闘技場の壁を突き破るのは得策ではない。

 それならば安全に人の行き来ができるトリップゲートが一番の選択である。


「良いんだよリック、別に隠してる訳じゃ無いんだから」


「……そうか。お前がそう言うなら良いけどよ」


「全く、私達の気苦労も知らないで……」


 今更だが、既に数人にスキルを見せているので躊躇いはない。



「ミツ君、避難するとしても何処に?」


「うん、数も数だからね。街の広場につなげようかと。それよりも、恐らく混乱状態になると思うから皆の誘導お願いね」


「ああ、任せとけ」


 ミツは一度ラクシュミリアとファーマメントの方へと視線を送る。

 彼らも苦戦しているのか、今は防戦一方で決定打を触手本体へと与えることができていない。

 彼らが本気を出せるよう、今は先に観客席にいる人々を避難させなければと思い、逃げ惑う人々に注目を集めるために声を出すが、誰も聞く耳を持ってくれない。

 それはそうだろう。

 殺されてしまうかもしれないと言う恐怖に襲われていると言う時に、子供の言葉に耳を傾けるものはそうは居なかった。

 ならばと、次に声を出すと同時に、少しだけ〈威嚇〉を発動。

 ザワザワと慌ただしく騒がしかったその場が、先程とは打って変わって時間を止めたように静寂に満ちた。


「な、なんだ……今のは」


「お、おい。餓鬼だと……あれっ。あいつって、確か大会に出てた奴じゃ」


 周囲の視線が集まった時、ミツの声が周囲に響き渡る。


「皆さん! 聞いてください! そちらの出口からは、人が混雑し過ぎて外に出るまで時間がかかります。その為、出入り口の混雑を分散するために、皆さんにはこちらから避難してもらいます!」


「なに言ってんだ、あの餓鬼」


「ここからしか外に出れねーだろうが!」


 チラホラと野次も飛んできたがそれはスルー。

 視線が集まった時点でミツは〈トリップゲート〉を発動する。

 観戦席の後ろ、つまりは壁に向かって発動したスキルは二本の大きな線の光が現れる。

 それが左右にブォンっと音を鳴らしながら分かれると、線の周りをキラキラと星を散りばめた光と黒い靄が現れた。

 ゲートの先は街の中央広場であり、勿論向こう側にも人はいる。

 中央の広場では突然現れた光の扉に周囲は驚き注目を集めていた。

 それはこちらも同様に。

 いや、唖然とし、驚きに口を開けたまま言葉を失うものが大半であろうか。

 ローゼやミーシャ、アイシャやギーラ、マネとシューとエクレア等々。

 唯一ヘキドナだけは眉をピクリと動かし、頬を少しだけ上げる程度であった。


「「「「「「「!!!」」」」」」」


 完全フリーズ状態の周りの人達を動かす為、ミツがもう一度声をかける。


「さぁ! 皆さん! この先は街の中央広場に繋がっています! 怖がらずに避難を、早く!」


 強く言葉をかけるが人々は躊躇い、強ばってその場を動こうとしない。

 そんな人達を見て、リックが自身の盾を拾った剣の鞘でガーンッと大きな音を鳴らす。

 すると、今度は注目はリックに集まる。


「おいおい! お前らはそんなに化物に殺されてえのか!? さっさとこっちから逃げるぞ! ほら、婆さんもお孫さんも早く行った行った!」


 リックの口調は荒いが、内容としてはぼさっとしてないで早く逃げろ、年寄りと子供を優先して逃がせと言いたいのだろう。

 リックの呼びかけにバンは母であるギーラへと判断を委ねるように声をかける。


「お、おお。お袋……」


 躊躇いを見せるギーラであったが、ミツが頷くとギーラは孫のアイシャの手を取り、ゲートを潜ることを心に決め、歩みだす。


「お婆ちゃん行こうよ! ミツさん、私、ミツさんの事信じてるから。お婆ちゃんもだよね!?」


「そうかい……。アイシャよ、そうだね。ミツ坊を信じようじゃないか」


「うんっ!」

 

 ゲートを一番と潜り抜けたギーラとアイシャは街の中央広場へと避難。

 ゲートの先でアイシャが母であるマーサと叔父であるバンを呼べば、マーサとバンは互いに顔を見合わせた後、二人もゲートを潜り抜けていった。 


「よし。オラッ、お前達も早くしねえと化物に捕まっちまうぞ! 戦えねえ奴らはさっさとここから逃げろ!」


 ただの壁に扉が現れ、そこに人が通り抜けた。

 それだけでも驚きの人々であったが、少女の声に呼ばれるように家族が次々と通り抜けたこと、更にリックの言葉にゴクリと生唾を飲み込む思い。

 そして、一人、一人とゲートへと近づく。


「何だあれは!?」


「知るか! それよりもあそこから逃げれるぞ! 俺はあそこからおさらばするぜ!!」


「お、おい! 待ってくれ!」


 一人が通り抜ければ流れる様に人々は次々とゲートを潜り抜け、街の中央広場へと避難する。

 少し躊躇いを見せた人も居たが、後ろから聞こえてくる人々の悲鳴や恐怖の声に逃げるようにゲートを潜り抜けて行く。


「慌てないで! 急がなくても大丈夫です! 中を通ったら扉から離れて次の人が通れるように! ハイそこ、立ち止まらないで!」


「割り込むんじゃないよ! 割り込んだ奴はそいつをモンスターを引き寄せる囮として使うからね!」


「シシシッ。お前らアネさんは本気だシ。あっ、コラッ! ウチは迷子の子供じゃないシ! 戦える冒険者だシ!」


「ほら爺さん、アタイが手を貸してやるよ。ああっ!? 爺さん、感謝はありがたいけどね……。アタイ、お兄さんじゃなくて、女何だよ……」


「こっちこっち! おじさん、そっちの通路通れないから、こっちから逃げれるよ! ええっ? お礼としてお金? そんなのいらないよ。なら息子を? 尚更いらないわよ!」


 自分が人々の避難を促すと、ヘキドナは誘導を手伝ってくれるのか、言葉に威圧を込め割り込む人々を阻止してくれる。

 他の妹達である三人も、各自人々の避難を手伝ってくれた。

 シューは迷子の子供と勘違いされ親切な人に手をひかれ共にゲートを潜ろうとしたり、マネは人助けをすれば男と間違われたり、エクレアは混乱する北口に逃げようとしていた人に注意を促せば息子を紹介されたりと、混乱した避難活動だが、着実に北東の観戦席の観客を避難させることができた。

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