第95話 仲間内

 ミツとシャシャ、二人の試合終了後に賭け札を握りしめ、換金用のテントに並ぶ人々の列。

 それでも換金のテント用の列に並ぶ人の数はそれ程多くは無いが、人が持つ賭け札1枚の価値は多額な物。

 この試合だけではなく、他の試合にて賭けで大損をこいた者が盗みを働くかもしれないと、警戒する衛兵がいる。

 だが、それを掻い潜り換金後の者を狙う悪人もやはりいる。

 プルン達もそれは理解しているのか、列に並ぶのはリックとリッケ、そしてバンの三人の男が札を握り締め、列へと代表として並んでいる。

 リッケは兎も角、屈強な体のバン、そしてリックを襲う者は取り敢えず出ないだろう。

 その三人に違和感なく共に並ぶマネもだが、彼女は姉であるヘキドナ程では無いが、周囲の男たちは無意識と視線を外したくなる容姿をしている。

 まぁ、それでも約一名、その真逆にすっごい笑顔の青年が共に列に並んでるんだけどね。


「しかし、ミツ坊があそこまでの実力者だったとは……」


「本当に……。お義母様の驚く気持ちも解ります……」


 テントの列から少し離れた場所にて、四人が戻ってくるのを待つ人々。

 ギーラは先程の戦いが余程印象強かったのか、腰を下ろしてはふーっとため息に言葉を漏らす。

 その言葉に同じ気持ちのマーサ。


「でも、さっきの戦い方のミツ、まだまだ力を出してないニャね?」


「えっ? プルンさん、そうなの?」


 プルンの言葉に、驚きに顔を向けるアイシャ。


「ニャ、ニャ。ミツがモンスターと戦う姿を見たことあれば、さっきのは全然ニャ」


「そうよね。結局、武器らしい武器も剣と拳しか使ってないし。この後もあの2つしか使わないんじゃないかしら?」


 リッコ自身も洞窟でミツの戦いを直に見ている分、先程の戦いは全力を出してはいないのではと思っていた。


「あれ? ミツさん、弓はもう使ってないの?」


「んっ? いやいや。ミツ、弓も使ってるわよ? 試しの洞窟って知ってる? そこでも、ミツは弓で色んなモンスター倒してたわよ」


「そっか……。良かったね、お母さん。お母さんの弓、ミツさんまだ使ってるかもしれないよ!」


「フフッ、そうね」


 アイシャの言葉に微笑みを返すマーサ。

 ミツの今使っている弓は、マーサが住んでいる村を病から救ってくれたお礼としてミツへと譲った物である。

 

 ミツの話を横で聞いていたシューとエクレア。

 彼女達はマネが戻ってくるまでと共に近くに座り、当たった金をウキウキとしながら待ちわびていた。


「シシシッ。ミツのお陰で姉さんの勝利酒が増えたシ」


「本当に。遊びで賭けずに本気に賭ければよかったと思うわ」


「エクレアはケチるから駄目だシ。ちゃんとミツに感謝する気持ちがあるなら躊躇っちゃ駄目だシ」


 近くの出店で購入したであろう饅頭を食べながら言葉を返すシュー。

 そんな彼女の言葉に、エクレアは眉を動かしては口を開く。


「むっ……。あのね、私は準予選であの子に負けてるの。感謝なんてする訳ないじゃない」


 ふんすと少しだけ口調を荒くしてはいるが、本当は今はそこまで気にしていないのだろう。エクレアは手に持つ飲み物をごくごくと飲み干す。

 シューも本心とは思っていないのだろ。笑いながら軽口を叩いては言葉を続ける。


「そう言いながらエクレアはいくら賭けたシ?」


「……銀貨5枚……」


 シューの言葉に、先程よりも深く眉間にシワを寄せるエクレア。


「うわ~。勿体無いシ。ウチみたいにドドンッと賭ければよかったシ」


「くっそ~。財布に入れてたお金がそれしか無かったのよ~」


「あ~。それはしょうがないシ……。あっ、マネが戻ってきたシ」


 結果は結果。取り敢えず賭けた金以上は帰ってくると自身で無理やり納得させるエクレア。

 二人で話している間にマネの換金が終わったのだろう。彼女は珍しくコソコソと小走りに二人へと近づいてくる。


「おー。お疲れ様。って、何その麻袋?」


「やややややべべ……やべやべやべべべべ……」


 マネは少し大きめの麻袋を手にし、小刻みに震える身体、更に声まで震わせては目がぎょろぎょろと動き続けている。

 マネの思わぬ態度に、どうしたのかと顔を見合わせるシューとエクレア。


「? マネ、落ち着くシ。取り敢えず当たった分を分配するシ」


「おっ、おお……。それがな、姉さんの分も凄いけど、ミツに賭けた分がめっちゃ増えてな……」


「はぁ……?」


「そんなん、ミツに賭けて当たったんだから増えて当たり前だシ。等々ボケたかシ?」


「違うわ! スーハー、スーハー……。お前ら、こっちきな」


「「?」」


「……」


「どうしたニャ?」


「さぁ?」


 マネは金の入った麻袋を自身の身体全体で守るかの様に体を丸めては、プルン達から少し離れ二人を呼ぶ。


 そして、マネが手に持つ麻袋を開いた瞬間。


「あばばばばば!!」


「あがががががっ!!」


「べべべべべべっ!!」


 三人とも壊れたかのように、言葉にならない言葉が口から漏れだす。


「おおお、おち、おち、おちおちおちおち落ち着くシ」


「オメェが落ち着けっての」


「スーハー、スーハー、スーハー。ふ~……。何なのこの金は!」


「莫迦! エクレア、声がデケェっての!」


「うわ~。アネさんとミツ、二人でこんなになったシ……」


「やべー……。やばっ、ヨダレが……」


 マネの手の中にある麻袋の中身。

 それは彼女達が数年と地道に稼ぐ分以上の金だった。

 ヘキドナの賭け倍率は3.2倍と高くもないし低くもない。ヘキドナは自身に金を賭ける気も無かったのか、賭けには不参加していた。

 それでもシューとマネとエクレア、三人は元々ヘキドナが参加しないことが解っていたかのように、三人だけで話し合っていた。

 そして、三人は金貨9枚を姉のヘキドナへと賭けていた。結果は金貨28枚と銀貨1枚、銅貨3枚の当たり券である。

 これはマネ、シュー、そしてエクレア三人で分け合うことができる。

 だが、麻袋の中身はそれ以上の金貨が入っている。

 勿論それはミツへと賭けた分。

 ヘキドナは自身に賭けることはしなかったが、ミツに対してはシューに金貨7枚を渡し、ミツへと賭けることを促していた。

 それは今は亡き妹達三人の分と、自身達四人の分の意味が込められていた。

 ヘキドナのその気持ちを聞いたシューは話しをマネとエクレアへと伝えた。だが、マネは兎も角、エクレアは準予選のことが尾を引いていたために、その時はそれ程良い返事は帰ってきていなかった。

 結局、ヘキドナが金貨7枚、マネとシュー二人合わせて金貨4枚、そしてエクレアの銀貨5枚、合計金貨11枚と銀貨5枚がミツへと賭けられていた。

 マネの持つ麻袋の中身は、金貨300枚並のずっしりとした重みがあった。


「取り敢えず姉さんに報告に行くっての。流石にこんな大金、あたいらが勝手に使える額じゃないっての」


「ちょっとちょっと! 私の賭けた銀貨5枚分もこの中に入ってるのよね!? その分だけ回収させてよ」


「エクレア、持ってる財布の中に入るかシ?」


「うっ……ちょっと無理かも……」


「なら後で分けるっての」


「解った……。ちゃんと私の分返してよ」


「この量からエクレアの分減らしても、全然減った様にも見えないね」


「半端ねえ……」


「な、何だか凄く貰ったみたいね……」


 ぐへぐへとした三人の不気味な笑い声、そんな声が路地の方から聞こえてくると、リッコ達は苦笑いをしていた。


「あっ、リック達が戻ってきたニャ。あれ?」


「ちょっと、あんた達、金はどうしたのよ?」


「バン、お主もどうした? 手ぶらじゃないかい?」


 マネの後ろに並んでいたバン達三人も戻ってきた。

 しかし、彼らはマネと違って小走りで駆け寄ってきたり、金の入った麻袋を誰も手にはしていなかった。

 それでも三人の表情は困ったような、それでも必死に顔に出さないようにとキョロキョロと視線を泳がせている。

「ああ……。そのな……」


「お袋……。」


「んっ? どうしたのよ?」


「義兄さん、どうしたの?」


「実は、僕達の分は貰えませんでした」


「「「「えっ……?」」」」


 その場に音が消えたかのように言葉を失う面々。

 そして、少し間をおき、ガバッと兄であるリックに迫るリッコ。


「ちょっと! それってどう言うことよ!」


「莫迦! 落ち着け! リッケもその説明は違うだろ」


 自身へと言い寄るリッコを落ち着かせ、リッケの言葉が誤っていたことを呆れ口調に返すリック。


「ああ、リッコ、すみません。貰えなかったではなくて、その……耳を」


「何よ!」


「いいから聞け」


「ニャ?」


 周囲から聞かれないようにと、円陣を組み、向き合う面々。


「あそこのテントじゃ、当たった金額が大きすぎて払えないそうだ。だから、大会本部関係である、商人ギルドの方に行ってくれよと……」


「はぁ!? 嘘っ……」


 リックの言葉に、声を殺して驚くリッコ。


「間違いない。お袋、俺達が賭けた金も相当な量になるぞ。額も額、このまま商人ギルドに金を預ける事を勧められたぐらいだ……」


「……解った。あんたの言うとおり、そうしようじゃないか。一度預けるとしよう」


 バンの言葉に何やら考えては、その通りとギーラは商人ギルドへ行くことを告げる。

 そんな会話の中、リッケが自身の胸部を抑えては眉間に深いシワを寄せていた。


「うっ……。金額が金額だけに、僕、胸が痛いです……」


「ちょっと、リック、こっち来て……」


「わっ!? いきなり引っ張るなよ」


 マネ達三人と変わって今度はリッコ、リック、リッケ、プルンが路地へと移動。


「ねえ、あんた、ミツにどれだけ賭けて来たのよ? 確かに、後でお金は払うって言ったから別にいくら賭けようがそんなに気にしないけど」


 リッコはリッケの態度に少し焦りを感じたのか、それでも冷静に声が漏れない程度にとリックに言い寄る。


「お、おう……そのな……。これぐらい……」


 リックは自身の手を震わせ、指を広げては恐る恐ると二人に数字を見せる。


「5……金貨5枚賭けたのよね?」


 コテンと首をかしげるリッコ。


「いや、ちが……」


「それなら大勝ちニャね! えーっと、5枚の金貨が23.8倍ニャから……えーっと……」


 プルンは喜び、足元の地面に木の枝を使って計算式を書き始める。それを覗き込む三人。


「はぁ……。ちょっと、プルン、そこ計算間違えてるわよ」


「ニャ!? ニャハハ。うっかりニャ」


「もう、貸して。えっと……金貨5枚で、倍率23.8倍だから……。よしっ、119枚ね。凄いじゃない! でも変よね……。この金額ならテントでも渡してくれそうなのに?」


 地面に書かれた数字に喜ぶプルン。

 それを見ては頬に手を当て不思議に思うリッコ。

 そんな二人の会話に入るリック。


「二人とも……。そのな、足りないんだ」


「?」


「何がよ?」


「お前らのその計算した数字……丸が足りてねえんだ……」


「はっ? 私、計算間違えたかしら」


 自身の書いた数字を見直すリッコ。

 プルンも一応見るが、彼女は直ぐに計算するのを止めた。

 リッケがリッコの持つ木の棒を受け取り、足りない部分と言われた場所にゼロを足す。


「いえ、リッコ……。丸はここと、ここが足りてません……」


「「……」」

 

 付け加えられた二つのゼロ。

 それはリックが賭けた金額と、リッコが出した数字の二箇所だった。

 それを見て言葉を失う二人。リッケは深く目をつむり、また苦しむように胸をおさえていた。


「マジ……」


「ああ……。お前らから後で貰うつもりで、俺がお前と購入しに行った後、一度家に帰って金を持ってまた賭けた額だ……」


「僕も賭け札を確認しましたので間違いありません……。確かに一人あたりの金額としては多すぎると思ったんですが、ミツ君の恩返しとなるなら、今回ばかりはリックの行動に目をつむってました……」


「あんた……」


 リックは自身の判断にてミツに金を賭けていた。

 それは指を開き、数字の5を示した。だが、リックは金貨5枚以上をミツへと賭けていた。

 数日前皆が得た洞窟内での稼ぎ。一人頭金貨123枚、その十分の一、つまりミツを除いてリック、リッケ、リッコ、そしてプルン。

 四人合わせて金貨50枚をミツへと賭けていたのだ。

 勿論それは万馬券並の大当たり。

 当たり金額、金貨1190枚。換金用のテント内では騒然とした空気になったそうな。


 普通ならリックやリッケ、二人のように動揺するものだが、リッコは先程のリックの言葉に、沸点が来たようにふつふつと怒りがこみ上げていた

 リッコはぐっとリックに近づき、突然胸ぐらをつかみ、彼を睨みつける視線をおくる。

 いつもの喧嘩とは様子が違った分、リッケも止める言葉が遅れたのだろう。

 声は小さいが、その声は怒ってる様にも聞こえてくる。


「あんたね……。当たったから良かったものの、ギルドマスターから金は無駄にするなってあれ程言われてたじゃない……。しかも私やリッケは兎も角……あんた、プルンの金を勝手に使う予定をたてたの?」


 リッコの言葉に、ハッとするリッケ。

 プルンも思わぬ言葉に、少しだけ驚いた顔を見せている。


「いや、そりゃ悪いと思ってたけどよ。でもよ、もしお前たちが払えないって言うなら、別に無理やり取る気も……」


「莫迦! 仲間の為に賭けた金を私達が断る訳ないじゃない! 私が言ってるのは、どうして一言も相談しなかったのかってことよ」


「すまねえ……。悪かった……」


 いつもとは違い、今回ばかりはリッコが一方的にリックへと怒りの言葉を浴びせる。

 それを見て、慌ててリッコを止めるプルン。


「リッコ、いいニャいいニャよ! ウチの為にそこまで言うことないニャ。ウチもミツの為に使ったなら、ミツが負けてハズレても、納得してちゃんと払ってたニャ」


 プルン本人の言葉に少しだけ怒りが落ち着いてきたのか、冷静になるリッコ。しかし、仲間内での金のやり取りほど怖いものはない。

 リッコは母であるナシルに、しつこい程にも口に言われていた事があった。

 それはナシル自身経験した事ではあるが、一度金のやり取りでパーティーが解散してしまった事があると言う。

 あとで払うと言って、ナシルの元仲間が勝手に回復薬など使用し、結果精算時にそれを必要経費と言って支払わなかったこと、そう言った事が続くと仲間内で一番大切な信頼関係を失ってしまう。

 リックは身の兄だけに、彼もこの話を母から聞いていない訳ではない。プルンの報酬が最近増えたとはいえ、彼女は貧困した生活を送り続けている。

 そんな事を知っていながら、リックのやった行動は折角築き上げた絆を失ってしまうかもしれないと彼女は思ったのだ。


「……はぁ。プルン……。フンッ! リック、いいこと! 絶対に、絶対に、二度と人の金を勝手に使おうと思わないで! 今回は当たった事はいいけど、お願いだから仲間なんだから二度としないで!」


「……すまねえ。マジで悪かった……」


 リックの言葉に、スッと手を離すリッコ。


「はぁ……」


 その場に座り込むリック。

 今まで口を挟むこともできなかったリッケが近寄り、リックの顔を覗く。


「リック大丈夫ですか? でも、今回ばかりは反省しときましょうね。勿論、僕も直ぐあなたに言えなかった事は反省しないといけませんね……」


「ああ、自分でも莫迦な事したと思ってる……。マジでリッコの顔がお袋に見えたぜ……」


「そ、それは……それは……」


 リックの言葉に、父へと怒鳴る母の姿が思い浮かぶリッケ。容姿は美しくとも、三人にとっては優しくも怒らせると父よりも怖い母。そんな生き写しでもあるリッコの姿にたじたじとするしかできなかったリックだった。


「はぁ……ねぇ……。話戻すけど、リックは本当にいいの?」


「……あっ? 何がだ?」


 先程とは違うリッコの口調に、もう彼女は怒っていないと感じたのか、リックが返事をする。


「いや。……その。私達が知らなかったとはいえ、結局はそれはあんたのお金でミツに賭けた金でしょ。当たってから言うのもなんだけど、本当に私達にその当たり分分けるの?」


「……ああ、分けるぜ。もしここで分けるのを止めると、何かあいつに悪いしな。それにさっきも言ったろ。後でお前らからも金は貰うつもりだったって……。んー。今考えると、本当に莫迦なことしたな俺……」


「はぁ……。知ってるわ……」


「本当ですよ。リックは恩返しの気持ちが極端過ぎるんです」


 やっと安堵感と喜びが沸々と湧いてきたのか、三人はフンッと息を漏らしては笑い出す。

 そこに恐る恐ると言葉を入れるプルン。


「あの……。三人とも話してるとこ悪いけど。ウチ、そのお金は受け取れないニャよ……。自分でお願いした最初の分は受け取るけど、それはやっぱりリックの分ニャ……」


「……はぁ。お前、折角話がすんなりと収まってきたって言うのに……」


「いや~、まぁ……。プルンさんの気持ちは解りますよ」


 面倒くさい話が済んだと思いきや、プルンはリックの賭けた分の分け前を辞退すると言葉を入れてきた。

 彼女は無鉄砲な性格だが、それでもエベラに厳しくも物事を教えられた娘である。

 賭けたことが後で判明して金を要求されても、先程言った通り、自身でも納得する理由があれば金を払うつもりでもあった。

 しかし、額を改めて聞いてしまうと、流石に言葉一つで受け取る気にはならなかったようだ。

 損した性格だと思うが、これがプルンの良いところなのかもしれない。

 リッコもプルンの気持ちが解ったのだろう。

 プルンの言葉を聞いた後に少し考え、思いついた提案を告げてみる。


「……んー。じゃあさ、プルンがそう言うなら別の方法で受け取って貰いましょうよ」


「んっ。なんだよ、その別の方法って?」


「簡単よ。プルンに直接渡すんじゃなくて、プルンの教会に寄付って形で渡せば良いのよ。そうすればプルンに直接お金が行くわけでもないし、リックも人生で二度とないかもしれない神様へ寄付って善行もやれるじゃない」


「ニャッ!? リッコ、そ、それは……」


「おお! なんだか凄え莫迦にされた気分だが、寄付なら確かに俺の善意だしな。教会も受け取ってくれるだろ」


 リッコの思いもよらなかった言葉に、目を開き驚いたプルン。リックもうだうだ考えるのが面倒だったのだろう、二つ返事にリッコの提案をのむことにした。


「リック……」


「なんだよそのツラ。お前が受け取らないって言ったんだから、今更やらねえぞ。金はお前の教会に叩きつけてやるぜ。ハハハハッ」


「はぁ~……リック、言い方が酷いですよ……」


「うっ……。ううっ……」


「なっ!? お、お前。泣く奴がいるかよ!? 莫迦、俺が泣かせたみたいじゃねえか!」


「実際あんたが泣かせてるんじゃない」


「ごめんニャ……。ごめんニャ……。ありがとうニャ……」


「フンッ。莫迦野郎。謝るかお礼言うか、お前はどっちかにしろよな」


 鼻を鳴らし、とても嬉しい気持ちなのにポロポロと目から涙が溢れてくるプルン。自身に向けられる彼女の素直なお礼に頬を染め、照れるリック。それを見てはやれやれと肩をすくめるリッケとリッコだった。


 そして、その場に突如として響く声。


「ちょっと! あなた達、その子に何をしてるの!?」


「「「「?」」」」


 女性の声だろうか、声のする方へと振り向く四人。

 そこには声を出したであろう女性が先頭に立っては腕を組み、仁王立ちしていた。その横にいる女性も、あらあらと言葉をつなげる。


「三人で一人を囲むなんて、良い趣味とは言えないわね~」


「!? えっ、あれ」


 何が何なのか唖然と立ち尽くすリック達。

 四人に駆け寄り、プルンの手を取り守るように囲む女性達。


「久しぶりね、プルンさん」


「私達が助けてあげるから、もう大丈夫よ~」


「相手は三人だぜ。俺があのでかい野郎の相手をしてやる!」


「プルンさん、お怪我はないですか!?」


「ニャニャ!? み、皆どうしてここに?」


 プルンを守るように、リック達に睨みを効かせるのはローゼ達四人だった。

 驚きにローゼへと質問するプルンだが、ローゼは今は話している状況ではないと見たのか、プルンの話を切り、リックへと弓を構える。


「話は後、今はこのチンピラ共を倒すのが先よ」


「おいおいっ! 誰がチンピラだって!」


「あんたよ! こんな路地裏で笑い声が聞こえたと思ったら最低な事してるじゃない! さっきも言ったけど、三人で一人を囲んで何してたのよ! ……プルンさん、何されたの!? ちょっと、泣いてるじゃない!」


 ローゼの言葉に反論するリック。

 だが、ローゼは自身の背後で守るプルンの顔を見てはギョッと驚き、リック達へと更にキツく怒りを込めて睨みつける。


「え、あっ!? いや、これは!」


「あらあら、女の子を泣かせるなんて。こんな悪い人は衛兵に突き出さないとダメね~」


 ミーシャも顔は笑顔だが、その笑顔は正に怖い笑顔と言ってもおかしくない表情だった。


「ちょっと! 何勝手に話を進めてるのよ!」


「クソッ、ミツの奴、プルンを放っといて何処にいるんだよ!」


 リッコが呆れとローゼ達の勝手な解釈に言葉を入れるが、やはり聞き入れる気がないのか、トトは周囲にミツが居ないことを口に出す。


「ミツは今は大会の方って、そんな事はいいニャ! 待つニャ皆」


「プルンちゃん、安心してね~。ミツ君が居ない時は私達があなたを守ってあげるんだからね」


「そうだぜ、知らない中じゃ無いんだからよ! さぁ、かかって来やがれ!」


「皆さん、気をつけて下さい!」


 プルンを守るように、細い路地裏でありながらも陣形を組むローゼ達四人。

 トトは自身の獲物である斧を握りしめ先頭に立つ。

 その後ろにローゼが弓を構え、左右にミーシャとミミの陣形だ。

 

 そんな臨戦態勢のローゼ達を見て呆れて口を開くリック。


「はぁ……。なぁ……」


「何よ」


「これって、俺達が悪役なのか?」


「僕達がそのつもりはなくても、あの人達からはそう見られてますね……」


「どうするよ」


「どうするって。別に向こうが勝手に勘違いしてるだけじゃない」


「そうですよ。普通に理由を話せば別に問題ありません」


「そうだな……」


 リックの質問の答えは確かに簡単な物だった。

 一方的にローゼ達が話も聞かずに自身達がプルンを路地裏で襲っていたと勘違いしたのだろうと。

 ならば、彼女達にきちんと理由を話せば済むことだった。


「うりゃああああ!」


「「「!?」」」


「駄目ニャ!」


「ちっ!」


 だが、話をまとめている内に、トトが戦いの先手を取るつもりだったのか、理由を話す前と襲ってきたのだ。


「!? うわっ!」

 

「トト! ちっ! 盾使い!」


 気合と共に斧を振り上げるトト。

 リックは襲ってくるトトに対して、咄嗟に自身の背中に背負っている盾を前に突き出してはトトを弾くように突き返す。


「待て! 別に怪我はしてねえだろ!?」


「うるさい! 悪党の言葉に耳なんて貸す必要もないわ!」


 ローゼは言葉に圧を込めては、すぐ様に弓を引く。


「!? サンドウォール!」


「きゃ! 魔術士!? ミーシャ!」


 弓を引き、今にも矢を放ちそうなローゼを見た瞬間、リッコは咄嗟にローゼの足元にサンドウォールを発動し、彼女の足元を流砂のように砂上にしてバランスを崩す。

 自身がバランスを崩し、膝をついてしまったがローゼは直ぐにミーシャへと声を飛ばす。

 ミーシャも声に反応するように杖先に魔力を込め魔法を発動。


「はいは~い。ウォーターボール!」


 リッコへと飛んでいくミーシャの水玉。

 リックはリッコを守るように盾を前に出し、ウォーターボールに向かって盾のスキル、シールドアタックを使用しては攻撃を弾く。

 バシャンと弾ける水玉はリックに降りかかり、彼の全身をずぶ濡れ状態にした。


「お前っ! ふざけんなよ!」


「リック、駄目です! 武器を抜いたらそれこそ衛兵事になります!」


「!? クソが!」


 リックは自身のショートランスをローゼ達へと向けるが、それを直ぐに止めるリック。

 相手の一方的な勘違い、相手から一方的に攻撃を仕掛けられ、リックに怒りもわいてくるのも解る。

 しかし、ここで相手の誤解で攻撃を受けたからと言って、相手に攻撃をやり返せば自身達にも小さくとも何かしらの罰は必ず来る。

 リックは吹き上がった怒りを押さえつける様にと手に持つランスの先を地面に刺し、ローゼ達を睨みつけるだけしかできなかった。

 

 流石にこれ以上はいけないと焦りだしたプルンは、魔法を発動したミーシャの後ろから腰に抱きつくように抑え声を出す。


「待つニャ皆! 戦うのは駄目ニャよ!」

 

「あんっ! プルンちゃん、いきなり何を?」


「えっ……? ちょっと、プルンさん。どう言うことなの?」


 プルンの言葉に動きを止めるローゼ達。

 それを見て、大きくフンッと鼻を鳴らすリックとリッコ。

 リッケはやれやれとした表情を浮かべていた。


「ごめんなさい!」


 誤解していたことを理解したのか、ローゼ達はリック達へと頭を下げていた。


「本当にごめんね~。うちのローゼってば早とちりしちゃって」


「ちょっと、ミーシャ!?」


 ミーシャの言葉に、えっと驚くローゼ。

 だが、その言葉にトトは呆れながら言葉を入れる。


「いや……。ミーシャ、お前もあの姉ちゃんに魔法ぶっ放してたじゃねえか。ローゼだけって訳じゃねえだろ」

 

「あら~。でも私の攻撃はただの水玉よ? 当たってもあんなふうに全身をずぶ濡れにするくらいだし。もし、私が本気で攻撃するならこれで串刺しなんだから」


 そう言ってミーシャは指先に小さな魔法を発動〈アイスジャベリン〉を出してみせる。


「それより、最初に攻撃を仕掛けたのは誰だったかしらね?」


「うっ……」


「まったく。話を聞けって言ってるのに攻撃までしやがって」


 リックはギロッと攻撃を仕掛けてきたトトを睨みつける。


「悪かった……。ごめん」


「フンッ!」


「まあまあ……。ところで、プルンさんはそちらの人達とお知り合いですか?」


 まだ少し怒り状態のリック、それを宥めるリッケ。


「そうニャ。ほら、前に話したニャよ。魚の採取依頼を受けた時にキラービーとアースベアーと戦ったって話ニャ」


「ああ。その話の時に言ってた人ってこの人達だったのね」


 リッコが納得したかのようにポンッと手を打つ。


「ふふっ。まだ最近のことだけど懐かしく感じるわね。そちらの……冒険者よね? プルンちゃんとはお友達かしら?」


「おお……(凄え胸……)」


 ミーシャは以前の出来事を思い出すように自身の胸の下で腕組みをし、頬に手を当て微笑みをリック達へと向ける。

 普通にしていてもミーシャの胸部はふくよかなだけに、持ち上げる様にすれば言葉以上に強調された物になってしまう。

 リックの驚きと下心が顔に出ていたのか、周りの女性陣からは少し冷ややかな視線が送られていた。


「ちょっとリック、女性相手にその視線は失礼ですよ。全く……。ええ、僕達は今プルンさんとミツ君、五人でパーティーを組んで依頼を受ける仲間です」


「えっ……」


 リッケの言葉に笑顔のまま固まるミーシャ。

 ローゼも少し驚いたのか、眉をピクリと動かしていた。

 ミーシャはリック達三人を見てはゆっくりと視線をプルンに向ける。


「あらあら。プルンちゃん、お友達じゃなくて、一緒に依頼を受ける仲間ができたのね」


「ニャ……!?」


 ミーシャが何を言いたかったのか瞬時に理解できなかったプルン。

 だが、ミーシャの何だか笑ってない笑顔と言葉に、彼女は何かを察したのだろう。

 プルンは直ぐに言葉を返そうとするが、ダラダラと変な汗が湧き出て来る思いに、今下手な言葉は言い訳にしかならないと思ってしまった。


「あ、嫌。リッコ達とは洞窟探索に行く途中で一緒になって」


「へ~。仲が良いわね~。プルンちゃんは私のお誘い断っても、こうして一緒に洞窟に行く仲間を作っちゃうんだ~」


「いや、ミーシャ、それは誤解ニャ!」


 まるで浮気現場を誤魔化す男と女のやり取りの様な会話に、リック達は何のことかと頭をかしげていた。

 ミーシャの言葉に、はぁ~っとため息を漏らした後、ローゼが助け舟の言葉を入れてきた。


「はいはい。ミーシャ、あんまりプルンさんを虐めないの。彼女もちゃんと途中で一緒になったって言ってるじゃない」


「でもでも、ローゼ。私の計画が」


「おだまり!」


「痛い! また叩いた!」


「だからタタいてない、ハタいたのよ」


 ギャーギャーと騒ぎ出す二人に更に呆気に取られる面々。

 リックも先程までの怒りが呆れて収まってしまった。

 話が見えないので取り敢えずリッケが代表として二人の話を聞くことに。


 結果、ミーシャが以前プルンとミツを自身のパーティーに誘ったこと、その後洞窟探索に行く途中でリック達と流れでパーティーを組むことになり、それをミーシャが腹だてていた事が解った。


「もう、酷いわよプルンちゃん。私本気でお誘いしたのに」


「悪かったニャ。ミーシャ、取り敢えず胸が重いから、ウチの肩に乗せないでニャ」


「いやよ~」


 二人のやり取りを見て、それ程二人が嫌悪な仲になった訳でもなさそうなので、一先ずこの場の空気は落ち着いてきた。


「でもよ、思ったんだけど、ミーシャのこの提案ってミツにしたのか?」


「えっ?」


 当たり前だが、ミツに話すと言う事が抜けていた事にミーシャの表情が固まった。


「あいつに言ってれば結果も変わってたかもな?」


「トト、そんなに言っちゃミーシャさんに悪いよ」


「うぐっ……」


 ミミがトトの言葉を止めるように、彼の口元に手を出し言葉を止める。


「そうよね……。今からでも誘って見ようかしら……」


「「「!?」」」


 ミーシャの言葉にプルンとリッコとローゼが反応する。


「ちょっと、あなたが思うのは勝手だけど、ミツは今私達とパーティーを組んでるのよ! 仲間の引き抜きは困るわ」


「……あらあら。何処のパーティーに行くのは本人の希望でしょ? ミツ君が自身で私のパートナーになりたいって言ったら誰にも止める権利なんてないわよね~」


「誰が誰のパートナーよ! 話が変わってるじゃない!」


 ミーシャの口から本音が出たのか、それに直ぐに反応するリッコ。


「ミーシャ、止めなさいよ。流石にそれは駄目でしょ」


「あら~。ローゼもあの子が私達のパーティーに入ったら、私達すっごく成長すると思わない? あの強さですもの、強者のそばに居るだけでも自身達のレベルアップにもなるんですもの。 あなたも彼の戦い見たでしょ。彼、きっとシルバーの冒険者になる素質を持った子なのよ? ここで見す見す逃すことは無いと思うけど」


「それは、そうだろうけど……。でも、もうミツ君は彼女達とパーティーを組んでいるのよ? 流石に後出しは駄目よ……」


 ローゼの言葉は間違いではない。

 しかし、ミーシャの言葉も冒険者としては極々普通の考えでもあった。

 この世界に存在するジョブ。

 これはモンスターなど戦闘経験を積み重ねて行けば次のステップとして上位職などにジョブを変えることができるようになる。

 ミツの多くの戦闘経験がそれを証明し、現にミツと共に戦ってきたプルンは特に戦闘経験を取得している。

 彼女はミツと出会って一週間も経たずにモンクのジョブを極めてしまっていた。

 今までモンスターと戦う事は控えていたプルン。

 彼女のようにミツと共にパーティーを組み、この先共にいれば強者となる可能性も確かにある話であった。


 だが、ミーシャの中ではそれとは別の目的があった。


「ローゼ、男を取るのに先も後も無いのよ!」


「「!?」」


 ミーシャの言葉に驚くリッコとプルン。


「ミーシャ待つニャ! 勝手に決めてもミツが納得するか解らないニャよ!?」


「あら~。男を手元に置く方法なんて色々あるのよ。あっ、勿論プルンちゃんも来てもらうけどね。彼、どうもプルンちゃんには甘そうだし、プルンちゃんが私達のパーティーに来れば彼も一緒に来るでしょうし」


「ニャ!? そんな事は」


 ミーシャの思わぬ言葉に、慌てながらも思わず頬を染めるプルン。


「……して……」


「あら……?」


 ミーシャの次々と出てくる提案に驚くプルン。

 そんな彼女の言葉に体をフルフルと震わせ始めるリッコ。

 どうかしたのかとミーシャがリッコの方へと視線を送った時だった。


「いい加減にしてよ!」


「うわっ!? リッコ!」


 リッコは声を張り上げると同時に、自身とミーシャ達の後ろに火壁の〈ファイャーウォール〉を出しては道を塞ぐ。


「リッコ!? 何で火壁を出すんですか!?」


「あらあら……フフッ」


「あなたをミツの所には行かせない! あいつは私達の仲間なんですからね!」


 メラメラと燃える様な目でミーシャを睨みつけるリッコ。

 対面的に冷ややかにも冷徹な瞳を輝かせるミーシャ。

 すると彼女も対抗するように魔法を発動。

 燃える火壁の下から氷壁を発動。すると、火壁を一瞬で霧散させる様に消してしまった。


「!?」


「フフッ、こんな所で火なんか使ったら火事になっちゃうでしょ。私の氷でお嬢ちゃんは少し頭を冷やしてみる?」


 睨み合う二人。彼女達の後ろには虎と龍が浮き出ているイメージを周りに見せる。

 魔法も火のリッコと対面的な水のミーシャであるためか、無意識と反発心が出てしまうのか。


「ちっ! 私は17よ!」


「あら、私と同じなのね……。にしても……。フフッ、どっちの体が彼の好みになるかしら」


「「あっ……」」


 ミーシャはリッコの頭の上から足元、そして彼女の胸元に視線を戻しては軽く微笑み、見せつけるように自身の胸をまた持ち上げる様に腕組みをする。

 その瞬間、リックとリッケは一瞬で察したのだろう。

 自身の妹の成長していない部分と、ミーシャの服の下からでも解るほどの部分を。

 その言葉は向けられた本人が気にしていた部分でもあり、地雷でもあった。


「うがあぁぁぁ!!! 私はまだ成長期なのよ!!!」


「莫迦っ!」


 瞬時に火玉である〈ファイヤーボール〉を取り出し、リッコは躊躇いなしにミーシャへとそれを投げつける様に飛ばす。

 ミーシャも一瞬驚いただろうが、直ぐに水玉〈ウォーターボール〉を発動しては火玉へとぶつける。

 空中でぶつかり合う魔法、その場で軽い爆発を見せた。


「ニャあああ!!」


「あの姉ちゃん、本気で魔法撃ちやがった!?」


「ちょっと! 二人とも止めなさいよ! あなた達もその子を止めて!」


「おっ、おう! リッコ、止めろ!」


「そうですよ! 冒険者同士の争いは禁止です、ギルドに知られたら大変ですよ!」


 ローゼの言葉に反応するようにリックがリッコを羽交い締めに、リッケがリッコの前に出ては手を広げ前を塞ぐ様に言葉を飛ばす。


「うるさいうるさい! あんた達は黙ってミツとプルンをパーティーから仲間を取られても良いって言うの!? 」


「解ってる。そりゃあいつが抜けるのは俺も嫌だぜ。でも、ここでお前が争い事を起こしてギルドに罰を受けてみろ! あいつ、自分の事が原因と聞いたらどう思う!?」


「!? うっ……」


 リックの言葉に、目尻に少し涙を浮かべていた彼女の動きが止まる。


「はぁ……落ちついて下さいリッコ……。リックの言うとおりですよ。ミツ君を仲間として大切に思うなら結果を直ぐに出すものでもありません。最低限彼をこの話場に入れるべきですし、僕達が勝手に決めていいことではありません……」


「その人の言うとおりよ。ミーシャ、あんたもミツ君の意思も聞かずに話をすすめる物じゃないわよ!」


 ローゼはミーシャの動きを止める為にと彼女へとコブラツイストをかけては完全に動きを止めていた。

 彼女の慣れた動きにミーシャは悲鳴を上げている。


「痛たたたた!! ローゼ痛い、痛いのよ~! もう、腕が折れるかと思ったわ。……ふぅ~。ローゼの言うとおりそうね。でもね、私は今回ばかりは本気なのよ。あの戦いを見て、心に決めたの……」


「ミーシャ?」


「絶対に将来の玉の輿になってやるんですもの!」


「「「……」」」


「まあ……。目的は人それぞれだよな……」


「そうですね……。あっ、さっき言ってた計画って……」


「ミーシャ、まだそれ考えてたのか……」


「ミーシャさんの……夢? なのかな……」


 呆れるリック、言葉に納得するリッケ、苦笑いのトトとミミであった。


「ニャ……(ミツなら、ウチも皆も驚くような解決方法言ってきそう)」


 ピリピリとした場の空気は無くなったが、それでもミーシャを警戒するリッコだった。

 ちなみに、先程のリッコとミーシャ、二人の魔法がぶつかった際に起きた小爆発にて、直ぐに近くまで来ていたシューが通報で駆け寄ってきた衛兵の足止めをしてくれていたのか、衛兵にはリッコ達の争う姿を目撃されることはなかったそうだ。

 勿論その話を聞いた皆はシューに感謝し、理由を話すとシューはシシシッと笑うだけであった。

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