第72話 家族が増えるよ。

 プルンと家の中へと戻ると、ロウソクの明かりを灯した部屋の中から、オギャーと赤子の鳴き声がしてきた。


「ニャ? サリー、どうしたニャ?」


「あら、プルン。五月蝿くしてごめんね。よしよし。大丈夫よ、ママはここにいますからね……」


 プルンが部屋の中を覗き込むと、赤ん坊をあやしながら言葉を返してくるサリー。

 だが、サリーがよしよしとあやすも、赤子は顔を真っ赤にして、涙や鼻水を垂らしながらも泣き止むのが止まらない。


「サリー、ウチにかしてみるニャ」


「ええ……」


「ニャ~。泣き止むニャ~。どうしたニャ? お腹空いてるニャ? それともおしめが濡れたかニャ?」


 プルンがサリーから赤子を受け取り抱っこし、同じようになだめるが泣きやんでくれない。

 プルンはクンクンと赤ん坊の匂いを嗅ぎ、おしめが汚れてる訳ではないと解ると、サリーに振り返り食事のことを聞いてきた。


「サリー、この子にちゃんとお乳をあげたかニャ?」


「ええ……でも、最近乳の出が良くないのか、この子にお腹いっぱいにはあげれてないの……」


「ニャ~。それは泣いても仕方ないニャ……。この子、きっとお腹すいてるニャよ」


 サリーとプルン、二人して困ったと悩んでいる姿を見て、自分は台所の方へと足を勧めていた。


「腹が減っては何とやら。あの子を鑑定して病気とかはしてないみたいだけど……さて、どうしたものか……」


「ミツさん、どうされました?」


 台所に立っていると、夜となったので教会を閉めてきたエベラがやってきた。


「あっ、エベラさん。いえ、実は……」


「まぁ、あの赤ん坊のためにですか……」


 先程のサリーとの会話をそのままエベラへと伝え、今から赤子用のご飯、つまりは離乳食を作ろうと思っていたことを伝えた。


「ええ、流石にお腹空いているのにそのままってのは赤ちゃんにはできませんからね。母乳を作り出すことはできませんが、幸いにもあの子はもう結構な大きさですから、ドロドロにした食べ物なら食べれるんじゃないかと思って。でも、赤子の食べ物なんて作ったことないのでどうしようかと……」


「そうですか……。では、私がお教えしますのでご協力させてもらっても構いませんか?」


「本当ですか、それは助かります。流石に自分達が食べるような物は出せませんからね」


「ミツさん、あの子達の親として、本当に心よりお礼を。ありがとうございます……」


「いえ、どの道自分達のご飯も作らないといけませんからね。プルンの食べる量と比べたら些細なものですよ」


「まぁ、ふふふっ」


 料理を始めるために、アイテムボックスからエベラが欲しいと言った材料を取り出す。

 出したのはお米、カボチャ、人参、等など野菜をメインとした食材。

 カボチャや人参に似た食べ物はこの世界にもあり、他の野菜なども前にエベラに説明をしたことあるので食べれることを理解してくれている。

 ただ、食べるのはミミより小さい赤ん坊。

 カボチャは茹でた後にペースト状に食べやすく、人参は一度茹でて甘みを出し細かく微塵切り。

 お米はおかゆにした後、粒が解らないほどにドロドロ状に潰しながら煮詰める。


「取り敢えず野菜とご飯だけでいいんですかね?」


「ええ、まだお魚やお肉は赤ん坊のお腹には合いませんからね。ご飯もお粥をすり潰して粒が小さくなるようにしたほうが、子供には食べやすいですよ。後、味は本当に薄味で構いません。塩なども一摘みで十分です」


「なるほど。流石ですね」


「ふふっ。プルンもこれを食べてたんですよ」


「へ~。でも、今これをプルンに出したら、足りないとか、肉は無いのかとか言ってきそうですね」


「ふふっ。確実に言ってきますね。でも……そんな事を言える程に、あの子も大きくなってくれて本当に良かったわ……」


「エベラさんは立派な母親ですね」


「そんなことはありません……。あの子達がここまで大きく慣れたのは、まわりの皆様のご協力あってのことです……。私ができたのは本当に些細なことです……」


「エベラさん……」


「さて、ミツさん。これをあの子達に持っていってあげて食べさせてあげましょう」


「はい!」


 完成した離乳食をお椀についで、プルン達のところへと持っていく。

 おまけだが、離乳食を作っている際、味見役としてミミに食べてもらったが、作った離乳食は薄味でも素材の味がしっかり出ているので、ミミは美味しいと笑顔で言ってくれた。



「サリー、取り敢えず乳を咥えさせとくニャ。少しづつでも出るかもしれないニャ」


「そうね……」


 サリーが服をはだけさせ、赤子に自身の胸を当てると、赤子はチュパチュパとサリーの胸に強く吸い付いてくる。赤子はやはりお腹が空いているのだろ、必死に吸い付くがサリーの胸からは乳が出ている感じがしない。


 そこへコンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。


 コンコンコン


「はい?」


「サリー、入るわよ?」


「エベラ? どうぞ」


「ニャッ! ミツは入っちゃ駄目ニャ! 今はサリーがお乳をあげてるニャよ!」


 サリーの言葉の後、エベラが扉を開けて中へと入る。

 続けて自分も入ろうとすると、直ぐにプルンが声をかけ、待ったをかけてきた。

 授乳中に中に入ることもできないので、自分は手に持つ離乳食をエベラへと渡し、台所へと戻っていく。


「おっと。授乳中だったのね。ごめん、自分は戻ってるね」


「ごめんニャ」


 プルンには気にしないでと言葉をかけ、自分はその場を後にする。


「エベラ、それは……」


「ふぅ……。サリー、あなたが突然帰ってきた理由や、その子の事は今はいいわ……。取り敢えずこれをその子に食べさせてあげなさい」


「うん……エベラ。ありがとう……」


 お椀に入った子供用の離乳食、それをサリーが受け取り、小さい木のスプーンに少しすくい赤子の口元へと運ぶ。赤子はいやいやと食べるのを拒んだが、少し口に入れると食べ物だと理解したのか、スプーンの離乳食をジッと見始めた。

 これは大丈夫と、サリーが少しづつ、少しづつと赤子へと食べさせることができた。


「食べたニャ! ちゃんと食べてるニャ!」


「ええ、ええ……ありがとうエベラ」


「お礼ならミツさんに言いなさい。そのお野菜もお米も、彼からのいただき物よ」


「うん、解った……」


 初めての離乳食にも関わらず、赤子は大さじ一杯もの離乳食を食べることができた。


「取り敢えずこの子はもう大丈夫ニャ。は~。見てたらウチも腹減ったニャ。エベラ、ウチらのご飯は?」


「もう……。今下の方でミツさんが私達の分を用意してくれてるわよ。プルンもご飯を頂くときは、ミツさんに感謝をしなさい」


「解ったニャ。飯ニャ~飯ニャ~。今日の飯は何かニャ~」


 赤子はもう大丈夫と解ったプルンは、飯は何かと鼻歌交じりに台所の方へと行ってしまう。 

 そんなプルンが行ってしまった後、サリーが数年前、最後に見た時のプルンの様子とは違うことに少し驚いてしまっていた。


「……プルン、あの子随分と明るくなったわね」


「ええ……。ミツさんが来てからね。たまに言い争いもしてるみたいだけど、二人仲良くしてくれてるわ」


「エベラ、ごめんね……。無理にここを出て行ったのに、私、勝手に帰ってきて……」


「……いいのよ。あなたも色々とあったのでしょ? ここはあなたの家でもあるんですから、あなたが帰ってくるのは当たり前なのよ」


「うん……ごめんね……ただいま……」


「おかえりなさい」


 サリーはエベラの胸に頭を押しつけ、ごめん、ごめんと、今は呟くことしかできなかった。



「ウミャー! 肉は最高ニャ!」


「プルン、野菜も食べなよ。モント君、口が汚れてるね、よし、綺麗になった。ミミちゃんはおかわりいるかい?」


「えへへ、兄ちゃんありがと」


「に~に。おしゃかな、ちょうだい」


「はいはい、ちょっと待ってね」


「ミツ、ウチは肉おかわりニャ!」


「プルンは自分で注ぎなさい」


 ここ数日教会を離れていたが、ヤン達は以前と比べて食欲も増し、以前より肌色もよく見える。

 エベラに渡していた食料、これをしっかり食べていたおかげか、プルンに負けない程に三人の食事量は増えている。自分は味見などしていたせいか今は空腹はないので、腹ぺこ四人の胃を満たすことを先に済ませることにした。

 今日の晩御飯はチーズリゾットにサイコロステーキとマッシュポテト、甘く煮込んだキャロットを添えて、ブロッコリーを小さな木のように盛り、スープはコーンスープをコップにそそいでいる。

 肉だけでは足りないと、オリーブオイルで香り付けした魚のムニエル、子供が大好きなオムライスとかなりの量の料理がテーブルを囲んでいる。


 エベラの作る料理も十分美味しいのだが、魚や青野菜の新鮮な食材をあまり口にはできないのだろう。

 子供達はプルンのように肉中心的な食べ方ではなく、滅多に食べれない食べ物を興味津々と口に運んでいた。


 と言っても、先に解ったのだが、この世界の人達は生魚を食べる習慣が無いのだろう。

 先に魚のカルパッチョをテーブルへと出していたのだが、子供達は手を付けずに、お兄ちゃんこれ早く焼いて食べさせて、と言ってきたのでミミ達はカルパッチョを調理途中の食材としか見てなかったようだ。

 結果、香辛料を少し追加し、焼いてムニエルに変更になったが、ミミ達は美味しそうに食べてたので問題ない。

 


「そう言えばミツ、蜘蛛の足はいつ食べさせてくれるニャ」


「あ~。そうだね。一本試しで何か作ろうか?」


「クモしゃん?」


「うげー。プルン姉、蜘蛛なんか食べるのかよ!」


「うげー」


「ヤン、モント、そんなこと言うと後で後悔するニャよ。ミツの飯の美味さは知ってるニャよね?」


「う~。確かに兄ちゃんのご飯は美味いけどよー」


「クモだよ?」


「ははっ、二人とも、もし食べれそうもないなら無理しなくていいからね。取り敢えず一本出すよ」


 アイテムボックスの中からスパイダークラブの前足一本を取り出す。

 改めて台所などの狭い空間で取り出すと足の大きさがよく解るものだ。

 スパイダークラブの胴体だけでもゴーカート並の大きさがあったが、例えるなら足の大きさは掃除機などのホース部分の大きさと長さはあるだろう。



「デカッ! それ何だよ兄ちゃん!」


「フフン、どうニャ。これはウチが倒したモンスターの足ニャよ!」


「うわー。こんなデカイのをプルン姉が倒したのか! プルン姉、凄え!」


「凄い!」


「ねーね、つよい!」


「そうニャそうニャ、もっと言うニャ。ニュフフフ」


 子供達は蜘蛛の足の大きさを見て驚いていたが、それを姉のプルンが倒したと知ると、興奮気味にプルンに凄い凄いと言葉を飛ばしている。

 弟妹のそんな言葉に、プルンはサイコロステーキをパクリと食べながらもドヤッとした表情をしていた。



「そうだね……。この足を取る時のプルンの顔は凄い物だった……」


「ニャッ! ミツは変なこと言わなくていいニャ!」


「はいはい。取り敢えず素材の味を確認しないと」


「何作るニャ!?」


「ん~。取り敢えず焼こうか」


「ニャ」


 先ずは中身を取り出すために足の関節を反対に折る、するとパキッっと音がし、簡単に足の皮をズルリと剥くことができた。

 使っている素材がモンスターの足だけに、いつ食べれない状態になるか解らないため、素材には常に鑑定をしつつ調理をすすめる。

 皮から取り出した身は半透明となっており、触るとコンニャクの様な強い弾力があった。鑑定では生食不可と表示されているため、必ず火を通す必要があるのだろう。


 先ずは大きくぶつ切りにしたやつを塩コショウで軽く味付けしつつ焼いてみる。

 焼いているフライパンからは香ばしい匂いが漂い、プルンだけではなく子供達も食べてみたいと声を出し始めてきた。


 味見を兼ねて先ずは自分が一口……。


(ん~……。随分と淡白な味……魚の白身に近い? いや……もうアレだ……カニだよこれ。しかも自分が日本でも食べたことない程に肉厚なカニだ……。はっ! もしかして胴体の方には蟹味噌があったんじゃ! いや……。蜘蛛なんだから蜘蛛味噌か……。食う気にならないからいいや。これが蟹と同じ味となると調理は簡単にできる。蟹料理なんて作ったことないけど、専門店のお店では食べたことはあるからね。スキルで調理法はイメージできるからこれなら行ける!)


 スパイダークラブの身はカニの味がした。

 クラブと言う名前からもしかしてと思っていたが、そのままだった。

 しかし、海にいないスパイダークラブの身から何故ここまでカニの身に近い味がしたのかは謎だが、考えても無駄なので、そのうち自分は考えるのを止めた。



「えーっと。皆はまだ食べれるの?」


 試しで焼いてみたスパイダークラブの足。

 焼いた量も少なかったが、皆は既にオムライスなどを食べているのでお腹いっぱいのはず。

 だが美味いものは別腹なのか、子供達は雛鳥の様にまだ食べれることをアピールしている。


「勿論ニャ!」


「もっと食べてみたい!」


「僕もー!」


「あたちも!」



「ははっ、似た者姉弟め。よし、あっさりとした茶碗蒸しでも作ろうか」


「茶碗蟲?」


「プルン、字が違う。ってか文章でしか解らないボケは止めてね……」


「ニャハハハ。取り敢えず速く作ってニャ! それまで肉食って待ってるニャ!」


 この世界には蒸し料理や揚げ物が無いのか、台所には蒸籠などは置いていなかった。

 まぁ。こんな時は大きめの鍋の中に小さめの鍋や皿をひっくり返し入れ、簡単な蒸し器ができるのでそれで作ってみる。

 作っている間、エベラとサリーが2階から降りてきた。赤子は寝ているようなので、隣の部屋に簡単なベットを作りそこで寝かせている。

 エベラとサリーが席につき料理を二人へと出すと、エベラは料理の美味しさに喜び笑みをこぼし、サリーは目の前に広がる料理の数々に驚いて箸が止まっている。

 だが、一口食べると美味しいと絶賛し、次々と料理はサリーの口の中へと消えていく。

 流石プルンの姉に当たるのか、食べ方が少し似ているかな。


 最後に出した茶碗蒸しを一人一人に出し、皆の感想を聞いてみる。

 勿論茶碗蒸しの入れ物もスプーンも自分が物質製造で作った物。ちゃんと口当たりが大丈夫な品物に仕上げている。


「美味いニャ! これヤバイニャ! ミツ、これ美味すぎるニャ!」


「美味しいー!」


「美味しいね!」


「おいちー!」


 子供達は茶碗蒸しを美味しいと絶賛し、エベラとサリーもその美味しさにその顔は満面の笑みだ。


「うん、上手くできてよかった。ちょっと気泡ができて口当たりが気になるけど、初めてにしては十分かな」


「ミツさん、こんなに美味しい料理を、本当にありがとうございます」


「いえいえ、材料はプルンが取ってきたので、お礼はプルンにも言ってあげてください」


「あら、そうなの。プルン、ありがとうね」


「ニャハハハ。ウチの鼻に間違いはなかったニャ! 婆に譲って少し惜しいことをしたかニャ」


「プルン、まだまだあるから数本くらい気にしなくても大丈夫だよ。これならリック達に食べてもらっても余裕もあるし」


「そうかニャ。ニャら、約束通りリックにこれを食わせてやるニャ。絶対喜ぶニャよ!」


「ははっ……リックが食べるかは解かんないけどね」


 食事も終わり、赤子も寝ているので子供達は2階の部屋へと戻り遊ぶことに。

 テーブルに残ったのは大人だけ。プルンがエベラの分と買ってきた焼き菓子を食べながら紅茶を皆で飲んでいた。



「でっ? サリーは何で帰ってきたニャ?」


「はぁ……あんた、随分とストレートに聞いてくるわね……」


「いや、どうせ聞かなきゃダメニャ。エベラも居る今言うニャ」


 サリーとプルンの視線がエベラへと向くと、エベラはコップをテーブルに置き、サリーへと身体を向き直した。


「あっ。自分席を外しましょうか?」


「いえ、大丈夫よ……」


「そっ、そうですか……」


「ふぅ~。美味しいわね……。私達ね……離縁したのよ……。あの子は私が半年前に産んだ子なの……」


 落ち着きながらもサリーはその重い口を開き、自身が離縁したことを話し始めた。


「離縁って……。サリー、向こうで何があったニャ? その前に、あの子名前何て言うニャ?」


「……あの子の名前はカッカよ」


 鑑定した時に名は知っていたが、赤ん坊の名前はカッカ。名前の頭にはデーモンなどの名前はついて居なかったので、10万歳ではなく本当にただの0歳の男の子である。まぁ、第一声がお前を蝋人形にしてやろうかとか言ってきたら閣下だけどね。


 サリーはカッカの父、夫との出会いの話から説明しはじめた。


 サリーと元旦那のカースの出会いはこの教会。

 カースが祈りを捧げに来たとき、偶然サリーが懺悔室の相手をした時だ。

 カースは自身の過剰な夢や目的が周りを迷惑にして間違っているのではないかと懺悔しに来たのだ。

 その時のサリーの言葉に揺れ動いたのか、数日数回と教会へと通い、自身の想いを少しづつだがサリーへと伝えていたようだ。

 そんな熱の入った行動に、サリーの心もいつの間にかカースに傾き、彼が教会に来ることを楽しみにしていたと言う。

 これだけで済めばいいが、サリーは教会に仕える者。

 この世界でシスターが結婚が駄目と言うわけではないが、身分差が更に二人の愛を高めていた。

 サリーも孤児として幼い頃に教会に預けられた人。

 しかし、カースは貴族として一番下だが男爵家の次男だったと後に発覚した。


 家自体はカースの兄である長兄のリップスが引き受けるので家自体は問題はない。

 だが、その時は旦那の義母のディセマルはサリーが孤児と聞くと結婚を強く反対した。

 しかし、義兄のリップスの後押しもあり、結婚する条件として、表舞台に出さなければと様々な貴族関係にはかかわらせない事を条件とし、何とか二人の婚約を許してくれたそうだ。

 カースの方は結婚の許可は何とかおりた。では今度はサリーがエベラに相談し、何とか結婚の許可を得なければならない。

 カースの家の事、自身の気持ちをエベラに伝えると、エベラもサリーの相手が貴族と聞いて不安もあったが何とか結婚を承諾。

 そして少し離れた街へとサリーは移住し暮らし始めたそうだ。


 結婚した二人、数年と何事もなく日々を過ごしていた。

 そして、サリーに子供が産まれ数カ月が経った時だった。

 カースの兄、リップスが馬と共に崖の下に落下してしまい死亡。リップスはまだ結婚もしておらず、子供などいない。そのため、家を継ぐのは次兄であるカースに権利が移ったのだ。そうなるとディセマルはサリーの存在と孫であるカッカの見方を変えてしまった。

 男爵夫人となると、表舞台には顔を出さなければいけない。そうなると、自身の家が孤児を嫁に取ったなどの噂にディセマルは耐えきれなかったようだ。

 ディセマルはカースとサリーを呼び出し、二人に別れるよう告げた。

 勿論二人が賛成するわけもなく、その時点で離縁とは行かない。

 だが、ディセマルはカッカを話に持ち出してきた。

 母親は孤児でも子供に貴族の血は流れている。

 子供は引き取り、母親であるサリーは病死として死んだと教え育てると提案したのだ。

 サリーには別れることに対してと、カッカを手放すための多額の金を前に突き出された。

 自身の結婚を心から喜んでいるとは確かに言えなかった義母のディセマルだが、まさか金で自身から全てを奪い取る人とは思ってもいなかったサリーは泣き崩れたと言う。

 その日以降、サリーはカッカと共に部屋にこもっていたという。

 赤子の世話もあるので、メイドなどの側仕えが部屋に入るも、サリーは一度も息子のカッカを手放すことをしなかった。

 一度子供を手放してしまうと、連れて行かれてしまうのではと不安が彼女を襲ってしまい、食事もあまり通らず、眠ることもできない日々、彼女の目の下には日に日にクマは広がり、病人のようにも見えてしまうほどになったと言う。

 カースはそんな彼女を見て心裂けそうになってしまった。ならば、三人でこの屋敷を出ようとカースは提案するが、それはサリーが断った。

 男爵家がどれ程の力を持つのかは孤児であるサリーには解らないが、今のサリーが貴族から逃げ続ける自信もないし、愛する旦那も困らせるのも嫌だったそうな。

 結果二人で話し合い、サリーからカッカを奪うことをしない条件と離縁を承諾した。

 リップスが生きていれば、跡継ぎが他にいれば、自身が貴族であれば、様々な想いを思わせながらサリーは旦那の屋敷を後にした。

 貴族の服装では野盗等に襲われるかもしれないと言う言葉もあり、服は庶民の服に着替えた。

 赤子も一緒と言うことなので歩いて教会に帰るわけには大変すぎるので、結果、ディセマルから貰った手切れ金を護衛と馬車代に使用して教会へと帰ってきたそうな。

 

 話が終わった頃には、サリーの目にはボロボロと涙が溢れていた。


「そう……。サリー、辛かったわね……」


「うっ……うぁああ、エベラあぁ……。私嫌だったの、でもあの子とも離れたくなかった……」


「そうね、これからは皆と過ごしましょう……」


「そうニャ! サリーもカッカも家族ニャ! ここにいてもいいニャよ!」


「うっうっ……うわあぁぁ……ああぁぁ」


 泣いて落ち着いたのか、サリーはごめんと謝りながらも、今日はカッカの寝ている隣の部屋で寝ると言って入ってしまう。

 疲れていたのだろう、時間もおかずにサリーは泥のように寝てしまい、エベラもカッカの世話をすると、共に部屋で寝ることに。

 皆が飲んでいたコップを片付けたその後、自分はその場から席を外し、部屋へと戻った。

 すると、階段では子供達が先に2階に上がったプルンにどうしたのと聞いていた。

 子供達には大丈夫、家族が増えるニャと伝えると、皆は納得して部屋へと戻って行った。


「家族か……」


 自分の家族と言える人は祖父しかいなかった。

 家族と言う言葉に、父と母が生きていたら、また違う感情が出たんだろうと思ってしまう……。


 外は雨が降り始めたのだろうか、屋根に雨水が当たる音が聞こえてくる……。


 色々とあったが、自身の部屋へと戻り、分身の言っていたとおりスキルのレベルアップの特訓を始めることにした。

 と言っても、雨が降っているので外にはいけない、やるなら部屋の中。だが、部屋の中で攻撃系のスキルは使えないし、使うとしたらまた〈ヒール〉等の支援スキルしか思いつかない。

 スキルの特訓をするならと、効率を少しでも上げるために〈影分身〉を恐る恐る使用して分身を出す。


 出てきた分身は以前と違って、出会い頭に毒を吐くこともしない分身が現れた。


 ホッとため息を漏らすと、分身はクスリと笑った後、今からやる事を理解しているのか、ベットに座り、スキルのレベル上げをし始めた。

 自分も分身に続いてスキルのレベル上げを始める。

 やらないよりは少しでもやった方が自身のためと、〈ブレッシング〉〈速度増加〉〈ミラーバリア〉〈エンジェラス〉〈ハイヒール〉〈プロテス〉とこれをローテーションにMPが無くなるまで使用し続け特訓。


 結果は〈ハイヒール〉を除く他のスキルをLv4まで上げることができ、〈ハイヒール〉はLv3となった。

 おまけ的だが〈料理〉と〈魔力増加〉スキルも1つレベルが上がっていた。

 分身に感謝を伝え、スキルを解除。

 疲れが出てきたのか、ベットに横になるとスッと意識が消えていく。


 翌朝


 皆で朝食を済ませ、エベラに昨日作った井戸小屋を見てもらうことに。

 完成した井戸を見てエベラは驚き喜んでくれていた。

 子供達が井戸小屋に間違って入って遊ばないようにと、大人の手が届く位置に鍵をつけておく。

 鍵と言っても、木の棒を扉の横から入れ、扉を開けなくする簡単な鍵だ。

 これだけでも子供達への安全性も上がるし、風で扉が勝手に開閉することもないのでこれに決まった。

 それと、プルンが提案した井戸小屋でお湯を沸かせるようにとする話だが、それも採用された。

 それは昨日の夜、雨が降ったにもかかわらず、小屋の中に雨水が溜まっていなかったことが決めてだったようだ。

 話が進み、井戸小屋での水浴び、ようはここの隣りをお風呂にしてしまおうと話が決まった。

 作るのは問題ないのだが、材料となる粘土も木材もアイテムボックスには入っていない。ならばと素材金を受け取るついでに購入してくることになった。

 金はエベラ、つまりはプルンが払うという事なので大丈夫だろう。


 サリーもカッカを抱っこしやって来ると、井戸の変わりように驚きに言葉を失っていた。まさか久しぶりと教会へと帰ってきたら、こんな物ができていたのだから驚きだろう。

 まぁ、できたのは昨日なんだけど、サリーへの説明はエベラに任せた。


 しかし、この家族は自分が物質製造などのスキルを目の前で使っても、歓声をあげたり凄いと言葉を飛ばすが、スキルを使う自分に対しての態度が気味悪がったり、怪訝そうな視線を一度も送ることはしない。

 プルンはもう慣れっこなのか、驚きのリアクションも薄くなっているのがちょっと寂しい。

 

「行ってくるニャ~」


「「「いってらっしゃ~い!」」」


 エベラとサリー、子供たち皆の見送りを受け冒険者ギルドへと移動。

 プルンはこの後貰える予定のモンスターの素材金を楽しみにして居るのだろう。プルンの足取りは軽く、少し早めにギルドへと到着した。


 そして、開閉ドアをバンッと勢い良く開け、カウンターにいるナヅキへと声をかけるプルン。


「ヘイッ! ナヅキ! ウチが来たニャ!」


「プルン、他の人に迷惑でしょ」


「ニャハハ! スマンニャ、スマンニャ」


 ギルドに入ると同時に、声を上げてナヅキを呼ぶプルンに注目が集まる。恥ずかしい……。

 そんなプルンを見ては、またあの子かと呟く人や、興味もない人々は視線を直ぐに外してくれた。



「リック達はまだ来てないニャね?」


「流石に早すぎたんじゃない?」


「いや、そんな事ねえよ」


 ギルド内を見渡しても三人はまだ来ていないのか、姿が見られない。

 すると、入り口の方からリックとリッコ、二人が入って来た。


「ニャ! ビックリしたニャ」


「ははっ、すまねえ。別に驚かせるつもりじゃなかったんだけどな」


「おはよう、リック、リッコ。あれ? リッケは?」


「おはよう。んー。リッケなら、朝からお父さんに剣の訓練受けてるわよ。時間かかりそうだったから私達だけできたの。多分、あの様子ならお父さんの仕事の時間まで付き合わされるんじゃないかな」


「一応リッケに行くことを言ったんだけどな……。親父が行くなら二人でいけってよ。まぁ、確かに金受け取るだけだし、問題もねえがな」


「リッケ、早速しごかれてるね」


「残念ニャね~」


 リック達三人の父であるベルガーは、元剣を扱う冒険者。ベルガーは自身の剣で息子のリッケを教え鍛えられると解って、今朝から早朝トレーニングを始めたようだ。


「まあ、あいつが自身で親父に訓練してくれって言ったせいもあるがな」


「そっか。なら大丈夫かな」


 少し四人で話していると、カウンターの方から、ナヅキとは別のカウンター嬢のエイミーが話しかけてきた。


「それでは皆様、昨日預かりました素材品の報酬をお渡しいたしますので、どうぞギルド長の部屋までお願いします」


「えっ? あ、はい?……えーっと。ここでは受け取れないんですか?」


「申し訳ございません。ギルドマスターと副ギルドマスターがお話もあるそうなので、皆様には一度部屋の方へ来てもらうようにと連絡が来ております。お手数でございますが、2階の部屋でギルドマスターがお待ちですので、どうぞ、こちらへ」


「話って、何だろうね?」


「いや、大体想像つくだろ……」


「そうね、またアンタにいくつか質問が来るんでしょ」


「ニャハハハ。ウチもそう思うニャ」


「でも、昨日渡した素材の情報はちゃんと話したけどね?」


「行けば解るわよ」



 2階へと上がり、奥のギルドマスターの部屋の前へと移動する。

 2階にあがる際、数人の冒険者が此方に視線を向け、ヒソヒソと話していたが、内容は〈聞き耳〉スキルで聞こえていた。話の内容はそれ程気にする程でもないと言っていたので大丈夫だろう。

 

 コンコン、コンコン


 エイミーがドアを数回ノックすると、部屋の中からギルドマスターであるネーザンの返事が帰ってくる。



「はいよ」


「失礼します。お客様がいらっしゃいましたのでご案内いたしました」


「んっ。入りなさい」


 ガチャリと扉があけられたので部屋に入る。

 その際、入る前には一礼と挨拶を入れた。礼儀として解ったのか、リックもリッコも続けてネーザンに言葉を伝えている。


「失礼します」


「おはようございます!」


「お邪魔します」


「うい~すニャ!」


 まぁ、約一名は軽すぎる挨拶に、自分達はガクリと足を崩しそうになるテンションだけど。


「おはよう、皆。おや? 一人足りないようだね? 5人で来なかったのかい?」


 ネーザンはプルンの挨拶はいつものことだけに、それ程気にもしていないようだ。

 そして、部屋の中に入ってきた数を数えてはおやっと首をかしげた。


「すみません。弟は今、親父。いえ、父に剣の訓練を受けてまして席を外してます。報酬を受け取るだけと思い、俺達だけで来ました」


「す、すみません」


 リックはネーザンの言葉に焦りながらも、今リッケが来ていない理由に謝罪を入れると、リッコも続いて頭を下げていた。

 冒険者ギルドはリック達にとっては会社であり、ネーザンはギルドマスター、つまりは会社の社長である。

 別に疚しい気持ちがある訳ではないが、突然振られた言葉に、リックの気持ちが焦るのも解る。



「いやいや、頭を上げな。別に後で君達から弟君へ話してあげてくれたらそれでいいさ」


「はい。必ず伝えます!」


「うむ。取り敢えず皆席に座りながら話そうかね……。エイミー、皆の分もお茶を頼むよ」


「はい、かしこまりました」


 席に座り、プルンの向かいに座っているエンリエッタの様子が変と思い、プルンは声をかけた。

  

「ニャ? エンリ、どうしたニャ? さっきから黙り込んでるニャ」


「……はぁ。いえ、少し武道大会の準備に疲れてね……。毎回のことだけど、選手同士の揉め事、報告もなしに貴族の街歩き、大会の警備の配置ぎめ……言い出したらキリがないわね」


「それは、気苦労も絶えませんね……」


「むっ……。そ~ね~。大会の準備に一先ず一段落したと思ってギルドに帰ってみたら、大量の素材を見せられ、高ランクのモンスター、更には見たことない状態の素材。一体誰のおかげで私の休みが減ってるのかしらね~」


「あははは。お手数おかけします……」


「ふ~。取り敢えずあなたのお陰で徹夜作業よ。全く、あなた達だけで、このギルドの何日分の素材を持ち込んだと思ってるの」


「いっぱいありましたからね。1週間分くらいですか?」


「はぁ……」


「くっくっくっ。エンリがここまで参るのは久しぶりに見たね~」


「ギルマス! 他人事じゃないんですよ!」


「解っとる、解っとるよ。さて。坊や……。エンリが先程言ったがな、昨日お前たちが持ち込んだ量は、まぁ、そうだね……。大体冒険者数がチームを組んだとして半年~1年分かね」


「ニャ~。そんなにあったニャ……」


「ふむ、しかもその殆どが優品となる程の素材品ばかり。ギルドとしてはとても助かるよ。ありがとうね」


「いえ。あまり多すぎて、買い取りはできないとか言われるのかと思ってました」


「はっははは。大丈夫じゃよ。それを気にしていちゃ、冒険者ギルドを動かすなんてできないからね」


「はぁ……。できれば、今度からどれだけあるか前もって教えて頂戴ね」


「善処します」


 エンリエッタは一息ため息を入れ、疲れた表情を浮かべながら言葉をかけてきた。


「よろしい。では、報酬の話の前にいくつか質問をします」


 エンリエッタに返事を返すと、その表情はキリッとしたいつもの仕事モードの顔になり、スッと姿勢を正した。

 そして予想道理と言うか、エンリエッタからはいくつかの質問の言葉が飛んでくる。


「やっぱり」


「思ったとおりニャ」


「エンリ」


「はい、使わせて頂きます……」


 ネーザンが名を呼ぶと、エンリエッタは懐からある物を取り出した。


「んっ? エンリさん、これはなんですか?」


「これは無の砂。これを使用してる間、一定範囲の音を外に漏らさないようにできる品物よ。使用回数に限りもあるので、そんなに使えないけど……。これを使用する意味を皆は解るわね?」


「えーっと。他言無用の話をするんですか?」


 エンリエッタが取り出したのは魔導具の一つ、無の砂。

 見た目はスノードームのように球体の玉だが、玉の中にキラキラと星の砂のような物が沢山入っている。

 エンリエッタはそれを皆の前へとテーブルの上へと見えるように置いた。

 そして、使用する前に一度自分達、一人一人と視線を合わせて言葉を続ける。


「そうよ。もし無理だと言う人がいるなら、彼を除いて部屋から出ていってもらうわ」


「なんでミツだけ残るニャ?」


「いや、エンリさんの言う理由も解るぜ……」


「むしろ私達が聞いても良いんですか?」


「ええ、でも先程言ったとおり他言無用の話になるわ。もし話したら重い罰を受けてもらうことになるわね。それでもいいなら残りなさい……」


 希少な魔導具を使ってでも話さなければいけない内容、その言葉に皆は戸惑いに顔を見合わせている。



「えーっと。自分に拒否権は?」


「無いわよ」


「そうですか……」


 何故自分だけが拒否権がないのか。話す内容によっては、またユイシスに直ぐにサポートしてもらおう。

 そう思っている内に、皆はエンリエッタの話を聞くか聞かないかを決めたようだ。

 一人も席を外すことなく、皆はコクリと頷き、聞く姿勢とエンリエッタの言葉を待った。

 


「では、皆の意思を受け取ります」


 エンリエッタは無の砂を一度手に持ち、無の砂に魔力を込めたのか、砂の色が真っ白に変色する。

 色が変わったことを確認するとまたテーブルへとコトリと置くが、砂の色が変わったこと以外別に変化を感じなかった。


「ん~。これで音が聞こえないんですか?」


「ええ。この砂の色が戻るまではこの部屋の音は聞こえないの。さて、時間もそれほど長くはないから質問するわよ」


「はい」


「まず一つ。あなたが倒したと言ったリッチに関してです。私もその目で確認するまでは信じられなかったけどね。あれは間違いなくあなたが倒したのかしら?」


「はい」


「そう……。では、あのモンスターは作られたリッチだと知っていたかしら?」


「作られた? 洞窟の魔力が作ったと言う事ですか?」


「いえ、人的によ……」


「はっ!」


「えっ!?」


「ニャ? モンスターを人が作ったニャ? ってか作れるニャ?」


「これはまだ一部の人しか知らされてない情報よ。魔石を利用してその魔力でモンスターを増加させたり、そこに生息しないモンスターへと進化させるの……」


「魔石ですか?」


「そう。魔石自体は金を払えばある程度の人なら直ぐに買える品物ね。でも、それは日常で使用したりと生活に使うために買う人が普通よ……」


「それをモンスターに与えたってことですか?」


「そう。実験として様々な結果が解ってきてるの。それでも、態々魔石をモンスターに与えて自身を危険に晒す意味も理由も解らなかったわ……。これを……」


 エンリエッタはまた懐に手を入れ、ある物を取り出し、コトリとテーブルに置いた。それは自分が最近見たことある品物だった。


「エンリさん、これって何ですか?」


「透明な石ニャ?」


「これって。カセキですか?」


「あら、君は知っていたのね。そう、これはカセキ。元は魔石だった奴ね。中の魔力が全て抜けてカセキになった物よ」


「ニャ。ミツはこの石を知ってたニャね」

「う、うん。昨日出店でいくつか買ってみたんだよ。ほら」


 自分はアイテムボックスから捨て値状態に買い取ったカセキの入った皮袋を取り出し、皆に見せた。


「確かに、エンリさんと同じ物だな……」


「それで、このカセキ? これが何か」


「これがあなた達がもって来た素材、つまりはリッチとデビルオーク、この二体に入ってたのよ……」

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