第54話 合流の後

「「ミツ!」」


「ミツ君!」


 洞窟通路側から肩で息をしながら先頭にプルンとリッコ、その後ろをリックを背負っているリッケがいた。


「あっ、皆。早かったね」


「あれがミツの仲間っちゃ?」


「えぇ、皆ちょっと待ってね。今料理してるから……」


 ガバッ!


 料理をしている自分の後ろに強く抱きつくプルン。腕を回し頭に顔を当てている。


「良かったニャ! 良かったニャ! 本当に心配したんだニャ!」


 目からボロボロと涙を流し、耳元で心配をしていた事を伝えてくるプルン。

 自分は手に持つフライパンを一度置き、料理を止め、そっと首に回されたプルンの腕にポンっと手を置く。


「ゴメンねプルン、相談もせずにいきなり通路を土壁で閉じちゃって」


「本当よ! 何にも相談もしないで! しかも私の話無視して……。 バカ……。」


 リッコは強く怒りの言葉を飛ばしながらも、安心したのかその目には薄っすらと涙を浮かべていた。



「リッコ、ゴメンね。時間もなかったし皆を危険にしたくなかったから」


「バカ……」


 リッコの小さな拳がポカッっと向かい合う自分の胸へあたる。


 ポカポカ


「バカ……バカ……」


 ポカポカ


「ゴメン」


 ボカッボカッ


「……」


 ボカッ! ボカッ!


「んっ?」


 ボカッボカッ! ボカッボカッ!


「……」


「リッ、リッコ?」


「……」


 ボカッボカッボカッ! ボカッボカッボカッ!



「ちょっ、リッコさん!」


「この……バカ!」


 ボコスカッボコスカッ! ボコスカボコスカッ! 


 リッコの大きな声を上げたと同時に、自分の首に腕を回していたプルンの腕が、サッと両腕を抑えるかの様にその体を羽交い締めに腕を固めた。


「ぐすっ。リッコ、ウチの分もやるニャ!」


 鼻をすすり自分の怒りも追加と言葉を伝えるプルン。


「プルン! うっ、うげぇ」


 ボスボスボス! ボスボスボス! ボスボスボスッ!


「ちょっと二人とも! りっ、リッケ、助けて!」


 怒りを顕にする二人を止めて貰おうとリッケに救いを求めた。



「程々にしといてくださいよ」


「リッ、リッケさん!」


 しかし、リッケは笑ってない笑顔をこちらに向けるだけで二人を止める事はしなかった。

 どうやらリッケも顔には出してはいないが、二人と同じくらいに怒(おこ)のようだ。



「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁー!」


 ボコスカ! ボコスカ! ボコスカ! ……!


「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 リッコの止まらないパンチのラッシュ。

 自分は謝りながらも反省を込めて、その拳を素直に受け止めサンドバッグになるしかなかった。


 その間、突然の出来事に食べる手を止め、唖然と見つめるライム達であった。



「はぁー……はぁー……はぁー……。いいこと! 二度と勝手な事すんじゃないわよ!」


「はい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 プルンからの羽交い締めからも解放され地べたに倒れる。

 自分の洞窟内初のダメージはまさかのリッコからの腹パンであった。



「フンッ!」


「えーっと。もういいっちゃ」


「んっ? あなた達だれ?」


 自分達のやり取りが終わった事に声をかけるライム。

 リッコ達がミツの仲間だと聞かされた為に先程のやり取りも止める事も迷い、何もできなかっただけに苦笑を浮かべるしかできなかった。



「うちはライム、冒険者だっちゃ。あんた達はミツの仲間っちゃよね?」


「そうニャ。 ウチはプルン、冒険者ニャ」


「同じく……リッコよ」


「リッケです」


「ほらミツ、起きるニャ」


「うぅー、お腹がジンジンする……」


「フンッ! 知らないわよ」


 〈痛覚軽減〉スキルの効果もあってリッコの腹パンの痛みは無いが、お腹を殴られた圧迫感は感じるのだった。

 


「えーっと。実はうちら転移の扉が使えなくて。悪いけど魔力がある人に開けてもらおうと思って……」


「そうですか、なら僕が開けますよ。リッコはここに来るまで結構無理してましたから」


「そうなの?」


「フンッ!」


「えぇ、そりゃもう二人とも現れたスモールオークを速攻で倒してましたからね。ここまで来るのも走りっぱなしでしたよ」


「余計なこと言わなくていいのよ!」


 デビルオークと一人で戦う為に残ったミツを心配したリッコとプルンは、現れたスモールオークを目視すると同時に、リッコの火玉がスモールオークを襲い、プルンの凄まじい先制攻撃にてスモールオークを圧倒して来たのだ。

 勿論先行したプルンは捨て身同然に切り込む為に、スモールオークの攻撃や仕掛けられた罠を何度か食らってしまったが、その際にはリッケの治療魔法にて傷を回復し、休む事なく連戦をしてここ迄切り抜けて来たのだ。



「そんなに急いで来てくれたんだ。ありがとう」


「「~~~!」」


 感謝の気持ちも込めて笑顔と言葉を二人へと伝える。すると、二人の頬はボッと赤く染まっていた。


「所でリティーナ様達は?」


「あの人達なら、私達の走るスピードに追いつけないから後から来るわよ。どうせ出てくるモンスターは私達が先に倒してるから問題ないでしょ?」


 異常な戦闘を繰り返すリッコとプルン。

 それを見たリティーナ嬢達は自身達の進むスピードは明らかに先を急ぐプルン達の足を引っ張っているとリティーナ達は理解していた。

 そんな三人にリティーナは先に進む事を促したのだ。

 リティーナ達のパーティーには冒険者だけでは無く荷物運びの為である奴隷もいる。

 更には未だ気絶したゲイツ。

 ゲイツ自体かなり重めの鎧を着込んでおり、その体もそこそこにでかい為にゲイツは男二人で運んでいるのだった。

 その為に洞窟内通路を早く進む事はできなかった。


 そして先程のリッコの言葉通りに、先陣を切ったリッコ達が出て来たスモールオーク全てを倒す事を理解した上でリティーナパーティーとは別行動を取る事にしたようだ。


「えっ、罠とか大丈夫だったの?」


「それが、ウチらが来た方には途中から罠が無かったんだニャ」


「……あんた達。もしかしてあっちから来たっちゃ?」


「そうニャ」


「なら、そっちには罠は無いはずだっちゃ。そこらの罠はウチらが解除して火種とかに使ってたっちゃ」


「なるほど、運がよかったね」


 食料としてエイバルを討伐し食す事に問題は無かったライム達でも、流石にモンスターである肉を生で食べるのは無理だったのか。

 火種となる自身の持つ物は既に燃やし尽くした為に、5階層であるスモールオークの作った罠を解除しそれを火種としてエイバルを焼いていたようだ



「えーっと、ライムさんでしたっけ? 転移の扉はすぐに開かれますか?」


「チョット待って欲しいっちゃ。せめてこのご飯食べ終わってからお願いしたいだっちゃ」


「はい」


「ニャー! 美味しそうニャ! ミツ、ウチ達の分は!」


「はいはい、今作り足しをしてるからね」


「早くするニャ、もうウチここまで急いで来たからお腹空いたニャ」


「あははっ……遠回しに嫌味入ってませんかプルンさん」


「何か言ったニャ」


「いえ! ご心配をおかけした皆様の為に腕を振るわせて頂きます!」


「ニャ」


「ミツ、手伝うわよ」


「ありがとうリッコ」


「僕はリックを寝かせてきます」


「じゃーうち達が使ってた寝床使うっちゃ。平らな場所を選んでるから寝ていて体に負担はあんまり来ないっちゃよ」


「ありがとうございます。では使わせて頂きますね」


「だっちゃ」


 プルン達との合流も無事に済。

 改めてお昼の時間もあって皆で昼食をする事になった面々。

 人数も増えた事に更に料理を作る為にとリッコとの二人での調理を行った

 その際、ライム含む皆は次々と出される料理を喜び食べていた。

 プルンとライムの二人の食事なのだが、まるで食べ比べの様にホットドッグが二人の胃袋へと消えて行ってしまったのだ。



「では、扉を開けます」


「お願いするっちゃ」


「おい、ライム。お前は最後に通れよ」


「そうですよ、また置き去りは勘弁ですからね」


「うっ……」


 先頭に立ったライムに嫌味と共に下がる事を伝える面々。

 自身がやった事も反省しているのか、トボトボと最後尾へと並ぶライムだった。


「ありがとよ、坊主達。世話になった。外に出たら1杯奢ってやるよ!」


「子供に何言ってるだっちゃ! しかも1杯ってケチ過ぎだっちゃ!」


「ははっ」


「ミツ、また合うっちゃ!」


「また?」


「「ジー」」


「ミツ君何か約束したんですか?」


「いや、別に何も?」


 言葉の意味はミツは理解できなかったが、ライムの残した言葉は二人の女の子の視線を受けるはめとなった。


「ところでミツ?」


「何かなプルン?」


「ニャンで転移の扉をミツが開けなかったニャ?」


「うん、まぁ。あの人達の勢いもあったんだけどね、そのままお昼の話したら流れで後ででも良いかなって」


「そうだったニャ」



∴∵∴∵∴∵∴∵




「プッハー! 寝起きの飯はうめえぜ!」


「いや、寝起きでその量は食べすぎだよ」


「全く、あんたが寝てた時の方が静かで良かったわ」


「リック、もう体は大丈夫ニャ?」


「おう! 傷はもうねえしな。何だかスッキリして体も軽いぜ!」


「おかわり沢山あるからね」


「ありがとよミツ!」


 ライム達一行が転移の扉で外に出た直ぐにリックの意識が戻ると、先程食べ残ったミツとリッコ含む三人での昼食となった。

 

 リックの状態を食事前に鑑定してみると体には異常状態は出ておらず、リックの体力もリッケの治療術で完治となっていた。



 そして昼食後、暫くすると。



「あっ、リティーナ様達が来たみたいだね」


「ニャ?」


 自分の言葉を聞いた皆は自身達が先程来た通路を見るとゾロゾロと集団の足音が聞こえて来た。



「っ! 皆さん!」


「あら貴族さん。随分来るのが遅かったわね」


 スープを入れたコップを片手にリティーナに声をかけるリッコ。



「ミツさん! ご無事でしたのね!」


「はい、ご心配をおかけしました。リティーナ様達はお怪我はありませんか?」


「えぇ、貴方のおかげて……。ありがとうございます、あなたのおかげてゲイツは無事で済みました」


「ミツ……」


「ゲイツさん。気づかれたんですね!」


「あぁ、少し前にな……」


 先程デビルオークとの戦闘でリティーナを守る為に破壊され飛ばされた壁の一部を頭に受けてしまったゲイツ。

 傷は直ぐにミツの治療術で治せたので、問題はなかったのだが頭部への衝撃かリック同様に気絶してしまったのだ。

 そんなゲイツは今は誰の手も借りずに自身の足でその場に立っていた。



「んっ? どうされたんですか?」


「いや……不甲斐ない。俺の判断でお前らも危険にしてしまった。本当にすまなかった」


「いえいえ。皆無事だったんですからそれで良かったじゃないですか」


「そう……か」


 ゲイツは一歩前にでると頭を下げ深々と謝罪の言葉を言ってきた。

 

 ゲイツの謝罪が終わると後ろからルミタが声をかけてきた。


「あっ……あの」


「どうしたのルミタ?」


「いえ、その……、あの……。デビルオークは?」


「デビルオークですか? 安心して下さい、ちゃんと倒してきましたから」


「「「「……。」」」」


 その後、皆は沈黙に動揺とざわざわと話し込んでいるので、ライムの時同様にデビルオークの亡骸を見せて納得させた。


 納得と言うか、皆それを見た瞬間に絶句していた。

 そんな中何故か一人、ゲイツだけは手を顔に当て、クックッと笑いを堪えていた。


 追伸。食事中のリックから飯中にそんな物を出すなとクレームが入った。


 荷物を下ろし、リティーナは汚れた衣服と下着を着替え身だしなみを整えて戻ってきた。

 

 程よい岩場に座る面々。

 手には自分が作った木のマグカップを各自持ち、中にはコンソメスープを入れて皆は飲んでいた。



「ミツ、お前のおかげで俺達は生き残った。生き残ったこそやらなければ行けない事ができた」


「やる事ですか?」


「ここに来る迄にお嬢には話は済ませている」


「ミツさん……。私達はこの洞窟から出る事にしました」


「えっ? 出るって、剣術の修行を取り止めるって事ですか?」


「ふぅー……。俺の依頼はお嬢の護衛任務だ。しかし、今回の事で依頼は失敗も同じだ……。俺自身剣には自信が無い訳ではない、ある程度の魔物ならお嬢を守りながらの洞窟での訓練も難しい事ではないのだがな……」


「少々この洞窟の状況がおかし過ぎるんじゃよ」


「お前達も戦ったから解るだろ。3階層のバルモンキーの群れ、4階層のスケルトンとゾンビの集団。更には5階層の居るはずのないデビルオークとハイオーク」


「この先何があるか今ではもう解らんぞ」


「俺はこの事を洞窟の管理者と冒険者ギルドに報告に戻るつもりだ」


「そうですか……」


 ゲイツの言葉に続けて他の冒険者が声を出し、自身が思っていた違和感を意見として次々と喋りだす。



「ミツさん。厚かましいと思われますが、貴方方も一緒にもう洞窟を出ませんか? 助けて頂いた身分でこの様な言葉を失礼とは思いますが。いえ、助けて頂いた恩が御座いますからこそ是非共にこの先を考えるなら」



「……。」


「ミツ、お前が決めろ」


 リックはスープのおかわりと立ち上がり、火をかけている鍋の方へ歩きだした。


「リック……」


「俺達は冒険者だぜ。貴族様とは行き方は違う。危険に挑むのも回避するのも自由に選ぶことができる、俺はお前が決めた道。お前達の前を守ってやるよ」


 そう言ってリックはマグカップに口を当て、そそいだスープをまた飲みだした。


「リック……。そうですね……。僕の力では皆を守ることはできませんが、傷付いた体を癒やすことはできます。ミツ君、先を選んで下さい」


「フンッ、好きにしなさい。但し今度一人で戦おうなんて考えようなら今度こそただじゃおかないからね」


「ニャッ、ニャッ。そうニャ! ウチらは仲間ニャ。ミツ、もう一人で戦う事は止めるニャよ!」


「皆……。ふぅー、リティーナ様、ゲイツさん」


「……」


「はい」


 自分は皆の言葉を受け、一つ大きく息を吸うと目を開き、真面目な表情を浮かべてゲイツ達へと気持ちを伝えた。


「ご心配でのお声がけありがとう御座います。自分は取り敢えず予定通りに8階層までは頑張ってみようかと思います。その後はゲイツさんの言うとおりに外に帰ろうと思います」


「……フッ。そうか」


「厚かましい言葉と失礼しました……」


「いえ、そのお気持ちありがとうございます」


 お互いに心配し合っての言葉、その場の皆は返答に気分を害する者はいなかった。



「いっ、いえ! ミツさん達に助けられたのは本当ですし!」


「いえいえ、運が良かったんですよ」


「「「……。」」」


「はぁー、あんたのこれが運が良いって言うなら、その逆で運が無かった時ってどうなるのよ……」


「ニャハハハ。リッコ、今更ニャ今更ニャ」


 リッコの背中をバシバシと叩きながら笑うプルン。それを見た皆もやっと今までの緊張の糸が切れたかのようにワハハと笑い飛ばしていた。



「ねぇ、リッケ君。洞窟から出たら皆でご飯でも食べない? 助けてもらったお礼もしたいしさ」


「そんな、お礼だなんて」


「そんなこと言わないでさー」


(ここで約束を絶対に取り付けないと! このままじゃ男っ気の無いオバサンになっちゃう。戦いで傷付いた私をあの優しい光で助けてくれた男性! その人が今目の前に! しかも顔も性格も最高! ここで私の理想の人を逃すなんてできないわ! 絶対に物にしてやる! なーに、お酒でも飲ませて私の大人の色気で悩殺してやる、グフっ、グフっ、グフフフ)


「絶対に……」


「えっ? ゼリさん、何か言いました?」


 内心下心マックスのゼリ。

 歳も既に結婚していても可笑しくない年頃、若干焦り気味で日々を過ごしている女性だった。



「んーん、何でもないわよー。ねぇ、お義兄さんも義妹さんも皆でどうかな!」


「おっ、おう。まぁー飯が食えるなら別にいいんじゃないか?」


「え、えぇ? 別に私も構わないけど」


「皆で行くニャ!」


「ゼリ……。諦めてなかったのね」


「当たり前よ!」


「では、その時の代金は私が出しますわ」


「いいんですかいお嬢様!」


「おぉ! 酒場を貸し切りじゃ!」


「お前ら早く出てこいよ! お前らが居ないと宴会もできねえからな」


「ははっ。はい、解りました」


 話し合いも終わりゲイツの言葉でルミタが転移の扉を開いた。

 一人一人感謝とまた後でと言う言葉を残して扉へとくぐっていく。


「では皆様。また後程に」


「ミツ……。いや、何でもない。無理はするな」


「はい!」


 ゲイツは何か言葉を残そうとした。

 自身がかける言葉以上に目の前の少年が言葉をかける必要もない程の人物だと考えると簡単な言葉しか出てこなかった。

 ゲイツは恐顔の中にほんのりと笑顔を作り、少年の頭をポンッと手を置くのを最後に扉を潜り抜けた。


 最後にルミタがまた後でデビルオークとの戦いを教えて下さいと言い残し、ペコリと頭を下げ自身も扉へと入っていった。

 すると扉を開けたルミタが入ったと同時に、ゆっくりと扉の明るい光は消えていったのだ。


 リティーナ達が居なくなり、スープを入れていた鍋や料理の後を片付けている時にフッとプルンの方を見ると、何やら腕組みをしながら考えてる様に見えた。


「ん~」


「どうしたのプルン?」


「ニャ? いや、これに何か思い当たるニャ……。それが何だったのか思い出せないニャ……」


「これって、ライムさん達が食べてたエイバルの残骸?」


 ライム達の食べ終わったエイバルの甲羅や骨の後、これは放っといてもいつの間にか消えてしまうとの事でライム達はそのままにしていったのだ。

 現に地面に付着している部分の甲羅は色を抜いたかのように真っ白になり、触ると簡単にボロボロに崩れ壊れた。


 そんなエイバルの亡骸だった残骸を見て更に考えるプルン


「エイバル……エイバル……エイバル……。ニャ! 思い出したニャ!」


「何?」


「爺ニャ!」


「爺?」


「ミツ。爺にナックル頼んだニャ! その時の材料の一つニャよ!」


「ナックル……あっ! あー、あー。そうだ、そうだガンガさんだ!」


「ニャハハハ、ミツもすっかり忘れてたニャね」


「ははっ、本当だね、まさかこんなところに居るなんて思っても見なかったよ」


 以前武器を購入を考えた時にプルンの案内で鍛冶屋のガンガの処に行った事だ。

 ガンガは材料を購入希望者に集めさせると言う珍しい鍛冶師な為、自分の希望するナックルも製造の際に材料を集めて来るように言われていたのだ。


 その材料の一つがこのエイバルの甲羅なのだった。


「ニャー、でもこれは流石に使えないニャ」


「そうだね。でもこの階層で獲ってたってライムさん達が言ってたよ」


「そうニャ? ニャら爺が納得する分倒して持って帰るニャ!」


「うん」


《ミツ。先に進む前にジョブの変更をしますか?》


(あっ、そうだね。何だかんだで偽造職のジョブも早く変えておけばその分経験入ってたから少し損してたわ)


 自分はまだもう少し休憩を皆に伝えると、皆は簡単な返事をし、自身のジョブを変更する為にと岩場へ腰を下ろした。



《では、偽造職【ウィザード】サード【エンハンサー】フォース【ヒーラー】フィフス【ソードマン】全てを変更でよろしいですか?》


(あれ? メインの忍者はまだかな?)


《メインジョブの忍者は今Lv14となっております。残念ながらジョブMAXには後1足りません》


(残念。しかし、上位ジョブはここまで時間かかるのか……)


《新しい上位ジョブや多数のジョブが解除されました》


(おっ、どれどれ)


《ご主人様に見習い私も見やすい様に配慮いたします》


(ありがとうユイシス)



前衛職


【ランサー】【ガード】

【モンク】【ウォーリアー】


New【狂戦士】

New【クルセイダー】


上位

New【パラディン】

New【ドラグーン】

New【魔法剣士】

New【セイントナイト】


後衛職


【ハンター】【ボウマン】

【シューター】【イリュージョニスト】

【アルケミスト】【サマナー】


上位

New【マジックハンター】

New【ダークメイジ】


商人職


【ペドラー】


盗賊職


【ローグ】【アサシン】

【カットパース】


支援職


【プリースト】【タクティクスシャン】


上位

New【セイント】

New【ダークプリースト】


その他


【ジョングルール】【アオイドス】

【テイマー】【料理人】


New【ミミック】


(新しいのが全部で11個、その内上位が8個も出たんだ)


《はい【剣術】【魔力術】を開放した事により転職可能ジョブが増えています》


(あー、でもこれまだ増えるんだよね。確かジョブって全部で200以上あるんだっけ?)


《条件ジョブの解除にはステータス、スキル、それに関連するジョブ。そして経験が必要とします》


(経験?)


《例えますなら、新しく出ました上位ジョブの【ダークプリースト】此方は治療士系のジョブ時に治療回数よりも敵を倒す戦闘回数が上回った時出現するジョブです》


(まっ、確かに。あの時はバルモンキーの群れとか倒してたからね)


《はい、今回の【ダークプリースト】のジョブの出現条件を満たしておりますのでジョブの解除となりました》


(ちなみにさ、モンスターを何百匹倒したらとか、回復何百回とかも条件に何か入ってるの?)


《はい、ございます》


(おー、楽しみが増える増える!)


《多数のジョブが御座いますが、一つミツの取得が無理……いえ、難しい物があります》


(無理って、えっ? 何で言い直したの? 何そのジョブ)


《はい……。釣りにて、一定時間内に魚30匹釣り上げると【釣り人】のジョブが解除されます》



(……)


《……》


(えーと……。新しく出たジョブの説明してもらっても良いかな?)


《はい》


(新しく増えたのは全部で10個だよね)


《では上から【狂戦士】斧を扱いに優れ攻撃力を上げるスキルを持っています。但し、攻撃に集中したスキルは防御面が低下しますので使用時は注意して下さい》


(狂戦士、つまりバーサーカーって奴かな。んー、防御面が下がるのは怖いな)


《次に【クルセイダー】少量の治療魔法を使いこなし前衛として防御に優れたジョブです。防御スキルが多く攻めるより守る事をメインとしたジョブです》



(これは確か、冒険者ギルドの副ギルドマスターのエンリエッタさんがこのジョブだったかな。試験の時の戦いを見ても確かに防御面が高そうだったな)



《次に【パラディン】此方は防御に優れ、多くの治療を得意とするジョブです。また、パーティーである仲間の受けたダメージを自身に受けるスキルを所持しております》


《次に【ドラグーン】槍に優れたジョブです。別名竜騎士、竜をも従える程の力を持ち、槍術であるスキルを多彩に持ち合わせてます》


(竜騎士か。槍のスキルも欲しいから考え物だな)


《次に【魔法剣士】剣と魔法を合わせ持つ魔法術を扱う事ができます》


(これは良いね、忍者にも少し似てるから戦闘も慣れやすいかも。戦いのスタイルは違うかも知れないけど、それもそれで楽しめるだろうし)


《次に【セイントナイト】聖法魔術である武器での攻撃術に優れたジョブです》


(聖法魔術とかまた新しい言葉きたね)


《聖法魔術。ヒールやシャインなどの【支援術】とは別となりますが。聖法魔術は基本強い聖と光のスキルをメインとしてます》


(なるほど、なるほど)


《次に【マジックハンター】魔力の矢を生成ができ、その威力は術者の魔力に依存します、弓の技量と魔術を合わせ持つとても攻撃力の高い攻撃ができます》


(魔弓術士って奴かな、スモールオークから矢の製作スキル貰ったけど、そんな方法でも矢は作れるのか)


《次に【ダークメイジ】高い魔力を所持し、広範囲魔法をメインとして取得できます》


(おっ、これか、以前ユイシスに聞いた奴は。広範囲かー、バルモンキーやスケルトンの集団の時見たいな時がまた来るかもしれないからな、後々考えると必要かも)


《次に【セイント】此方は先程の【セイントナイト】とは違い、魔法での戦闘をメインとしたスキルを取得とし、此方も同様に聖法魔術を取得できます》


(セイントナイトが剣でセイントが魔法って感じかな)


《次に【ダークプリースト】治療等のスキルは殆ど持ちませんが。呪い等の敵へのデメリットスキルを多彩に取得できます》


(まぁ、治療人数より敵を倒した数が多いと出てくるジョブだもんね。うん、だろうね……)


《最後に【ミミック】別名ものまね士となります。相手の動きや仕草を真似ることができます》


(確かにミミックって宝箱とかに化けて冒険者とか襲うモンスターのあれ? ものまね……確かに、ものまねではあるな。その、ものまね士って何処までものまねするんだろうか?)


《変更するジョブを4つお選び下さい》


(さてと。どれにしようかな……)

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