第20話 上位へのジョブ変更
シーフのレベルがMAXとなりました。上位ジョブ、忍者に転職可能条件を満たしました》
大量のキラービーを倒し続け【シーフ】のレベルをMAXにさせた事で【アーチャー】と【シーフ】の合わせジョブ【忍者】の上位ジョブに転職が可能となった。
《転職を行います。ジョブを忍者に変更してよろしいですか》
(バッチコーイ!)
今までいくつものジョブが増えた。
しかし、転職可能な状態でもユイシスがオススメとしたジョブが【忍者】だった。
《上位職に転職しました。ボーナスとして習得済みスキルを3つレベルを上げることができます》
上位ジョブ転職のボーナスとしていきなり3つ貰えるのか、ジョブの転職ボーナスは今までもあったけど。
やはり特別なんだろうか。
習得済みと言うことは今持ってるスキル全部だよね、でも後々良いのが来そうだし……。
(後じゃ駄目?)
《その選択は不可能です》
駄目でした……。これは以前のシーフの時のボーナスとは違い後回しにはできないようだ。
(ま~、貰えるものに文句は言わないよ。ならユイシスのオススメスキルはあるかな?)
《攻撃スキルや支援スキルよりも、ミツ自身のステータスをアップさせている能力上昇系のスキルをオススメします》
(じゃ~前回のオーガ戦で手に入れた〈肉体強化〉〈身体強化〉〈速度強化〉この3つを)
《選択により〈肉体強化Lv2〉〈身体強化Lv2〉〈速度強化Lv3〉となりました》
《忍者にジョブが変更されました。ボーナスとして以下のスキルから3つお選びください、既に習得済みのスキルは非表示となります》
来ましたジョブボーナス!
【アーチャー】の時はスキルの取得は2つ【シーフ】の時は3つ、この数はランダムなのかな? まぁいい、スキル3つは嬉しいからうだうだ言わずに素直に受け取っておこう。
※忍術
※二刀流
※投刀
※煙幕
※残像
※感覚強化
※秘密探知
※偽造職
なんて魅力的なスキルばっかりなんだろうか!
自分は子供の頃から忍者アニメ物が大好きだった。
現実に忍者になれるなんてチミっ子様には感謝だよ、スキルの中には意味もサッパリな物もあるけど……。
一応、いつもの様にユイシスにジョブ限定スキルを聞いておくことにした。
(忍者の限定スキルってなにかな?)
《はい、忍者の限定スキルは〈忍術〉〈煙幕〉〈残像〉〈偽造職〉です。他のスキルは他のジョブで習得が可能となります》
限定スキルが4つもあるのか……。
だとしたら1つは確実に諦めなければいけない結果になる。
一つ一つスキルの説明を聞いて行きたいけど、目の前のアースベアーが〈威嚇〉スキルに慣れてきたのかジワジワとこちらに近づいてきている。
迷ってる暇はない、こうなったら仕方ない。
(ユイシス! 自分にオススメな限定スキルを適当に3つ君が選んで)
《よろしいのですか?》
(任せる!)
《解りました、選択により〈忍術〉〈煙幕〉〈偽造職〉を習得しました》
忍術
・種別:アクティブ
魔力を消化し使用できる、レベルに応じて使用できる属性が増えていく。
煙幕
・種別:アクティブ
イメージした周囲一帯が煙に隠れる、レベルに応じて煙の時間が長くなる。
偽造職
・種別:パッシブ
設定されたジョブをメインとして見せる事ができる、経験が入ればレベルも上がる。
ユイシスの選択では〈残像〉を外した他の3つが選ばれた。
これも恐らく凄いスキルなのだろう〈忍術〉も気になるが〈偽造職〉って何を偽るんだ?
そう思っていたら、直ぐにユイシスからの言葉が来た。
《偽造職のジョブを設定して下さい》
(ぎ、ぎぞう? ジョブを選べは良いのかな)
《はい、現在ミツが転職できるジョブに限ります》
(前教えてくれたのからね。じゃ~、ヒール使うところ見られたしクレリックに、支援にして誤魔化してみようかな)
あれほど大量のキラービーを矢で殲滅させてる時点で意味がないと思うが、最低限の抵抗と言うことで支援職の【クレリック】を選択した。
《偽造職をクレリックにジョブ登録されました、【支援術】を獲得しました、ボーナスとして以下のスキルから6つお選びください。既に習得済みのスキルは非表示となります》
※ミラーバリア
※速度減少
※シャイン
※エンジェラス
※回復力増加
※MP消費軽減
ユイシスのアナウンスを一瞬聞き間違いかと思った、今選択スキルが6つって言ったよね!?
(えっ! 偽造職って見た目だけじゃないの? スキルまで貰えるとか……。それならスキル名はセカンドジョブとかの方が良かったんじゃない?)
《……》
(はっ!)
いけない、もしかしたらスキルの名前とかあのチミっ子シャロット様が考えてるのかもしれない、ユイシスのご主人様であるシャロットの考えを指摘したことに自分は少し焦りを感じた。
(取り敢えず【支援術】これって確か最初キャラクターを作る時に【弓術】と一緒に選択に出てた奴だよね。他にも【術】関係のって取得できるのかな?)
《はい、今のミツのステータスとスキル取得状態ですと【剣術】は条件を満たしております。よって習得可能になっております【魔力術】は条件を満たしておりませんのでまだ習得はできません》
(そうなんだ……。だったら剣士系のジョブになれば【剣術】が貰えてその時にまた6つ選べるのかな!)
《はい》
おー、何か更にテンション上がって気になってきた! 取り敢えず先ずは【クレリック】のスキルだ、恐らく支援の基本となる〈ヒール〉〈キュアクリア〉を既に習得してるので項目が半分近く無くなってるのだろう。
今回選択できるスキルは表示されてる全てを選択できる。
(全部貰おうか!)
まるで料理屋に来てメニューを右から左まで全てを注文してる気分になる。
やったことないけど……。
《選択により〈ミラーバリア〉〈速度減少〉〈シャイン〉〈エンジェラス〉〈回復力増加〉〈MP消費軽減〉を習得しました》
ミラーバリア
・種別:アクティブ
対象者の物理ダメージを軽減ができる、レベルに応じて効果が増す。
速度減少
・種別:アクティブ
対象者のスピードを下げる。
シャイン
・種別:アクティブ
不死系モンスターに聖なるダメージを与える。
エンジェラス
・種別:アクティブ
パーティメンバーの魔法防御力を上げる、レベルに応じて効果が増す。
回復力増加
・種別:パッシブ
ヒール系の回復力を増加させる。
MP消費軽減
・種別:パッシブ
MPの消費を軽減させる。
(ふむ、いきなり彼の内なる力が変わった気がする……。ふっ、面白い子に巡り合えたものですな)
「ふ~、悪いな、待たせたみたいで……」
グルッ! グルル!
「すまないけど、君には色々スキルの実験になってもらうからね」
ガアアァァァ!
スキルでは無いが、アースベアーの雄叫びが周りの空気をビリビリと響かせる。
雄叫びと共に、こちらに一気に距離をせめて来るアースベアー。
自分はアースベアーの迫りくる勢いに合わせて早速先程取得したスキルを発動した。
(速度減少!)
スキルレベルはまだ1、だが、アースベアーは目に見えて走るスピードが落ちた。
「あっ、しまった~。デスブロー試したいけどプルンに武器かしたままだった……」
武器がないと使えないスキルがあるのは仕方ない。【デスブロー】はまた別の機会に試すことにした、今は他にもスキルはあるのだから次の作へと頭を切り替える。
(ミラーバリア、エンジェラス、ブレッシング、速度増加よしこれで……)
「よし、来い!」
今かけれる支援魔法を自分に全て使い、アースベアーの攻撃に備えてみた。
グオオオ!
バキッ!
何をすることもなく、自分は拳を作り、両腕胸の前で構えた後に体を少し丸くし、その場にと動きを止めた。
アースベアーの力は見た目通りに凄く、小柄な体の自分は足を踏んばっていたが簡単に吹き飛ばされてしまった。
《経験により〈痛覚軽減Lv2〉となりました》
「ミツさん!」
アースベアーのスキルだろうか、ワザと食らった攻撃にしては普通のパンチにしては体に衝撃か走る。
「ぐっ…痛てぇ……」
痛いけどここは我慢!
殴られた部分を見てみると骨は折れてはいないと思うけど服ごと鋭い爪で裂かれたのか血が滲んでいた。
〈痛覚軽減〉が無かったら泣いてるよこれ。
「ヒール……ふ~、もうこの実験止めとこう……痛いもん」
「大丈夫でございますか?」
体を起こし、傷ついた部分を回復していると、ゼクスが近づいて直ぐに無事を確認する声をかけてきた。
グフッグフッ
簡単に殴られてふらつきながら立ち上がる自分を見て、アースベアーの口から不敵に声が出ている、それは何だか笑われてる気がする声だ……。
「はい、大丈夫です!……次の実験に行くか……」
「さようでございますか……」
キズも治し、ゼクスに大丈夫なことを伝え、また一歩また一歩とアースベアーの方へと足を進めだした。
そして
(忍術)
《忍術が発動されました、使用する属性を選んでください》
*火
*水
*土
*風
忍術と言うから古典的な手裏剣とかを想像したんだが、ユイシスのアナウンスでは違う感じのようだった。
(えーっと、アースベアーに有効な属性は?)
《風が有効な攻撃となります》
(風か……水じゃないんだね、泳げないからそう思ってた。いや、聞いて良かった。じゃ~ユイシス、風で)
《忍術の初期属性が風になりました。風刀、風球が使用できます》
スキルの中のスキルか、何だかややこしいスキルだけど楽しめそうだ。
先ずは〈風刀〉を発動してみる。
発動と同時に手には短剣程度の大きさ、文字の通り風の刀が出てきた。
刃の部は風がもの凄い速度で回転している。
握る部分はしっかりと握れるから自分は怪我をしないようだ。
アースベアーのその硬い体には丁度良い品物だ。
では、試し切りと行きますか!
〈速度減少〉の効果も便利だった、アースベアーの攻撃は普通の冒険者じゃ避ける事も難しいほどに速い物。
しかし、今のスピードなら避けることができる。
アースベアーの左右に腕を振っての攻撃も目に見えて遅い、振り切った腕へ簡単に一太刀入れることができた。
ザシュ!
グオオオ!
振り下ろした〈風刀〉はアースベアーの硬い皮膚と大量の毛も一緒に切り裂いた!
「おぉ! あのアースベアーの体に傷をつけれるとは……。しかし、まだ剣技自体はまだまだ甘いようですな」
(ゼクスさん、聞こえてますよ……)
《聞き耳スキルか発動してます》
(事実【剣術】も無いから剣はサッパリなんだから言われても仕方ない)
次に試すスキルは〈風球〉
これも文字通り風の球その物。
日本でこんな技持ったアニメキャラが2人程いたのを思い出した……懐かしいな。
これはやはり相手の腹部に叩きつける物なのか? それとも球体なのだから投げる物なのだろうか? 〈風球〉の威力もまだ解らない状態で直接腹部へと叩きつけるのは危険かもしれない。
ならばと自分はアースベアー目掛けて野球の投球方で投げてみた。
「喰らえ!」
ズバババ!
物凄い風の切る音がアースベアーに当たった。
〈風球〉から聞こえて来る音が消えた時には、アースベアーの体の毛は全て切り落とされ、アースベアーの体はカマイタチの様にズタズタに切り裂いていた 。
ウゴオォォォ!
(これはレベル1でこの威力は凄いな……)
《レベルが上がれば全種使用できます、魔力=MPを消耗しますので今後は魔力を上げることをオススメします》
(また後で聞きたいことができたよ)
《いつでも》
「ミッ、ミーシャ……あれは風魔法なのかしら……」
「……」
「ミーシャさん?」
「知らない……あんな魔法私見たことない」
「えっ!」
「風魔法は基本自分の周りに起こす魔法……。彼は手の上に風を起こしていたわ……」
「まだミーシャが覚えてないだけなんじゃ?」
「はぁ~……。ローゼ、弓も使えて、回復魔法も使えて、風魔法まで使える人間がいると思う?」
「ミーシャ、信じたくないけど私達の目の前にいるわ……」
「ねぇ! 無事に帰れたら彼を誘ってみない?」
「なっ! ミーシャさん不潔です!」
「ちょっとミミちゃん、勘違いしないでよ。仲間よ! ナ・カ・マ。ん~、あれあれ~。ミミちゃんは何にお誘いだと思ったのかな~」
「はっ、はう……」
「ミーシャ、ミミをあんまりイジメんなよ。それに考えてみろよ、あれだけ強い奴が態々うちのパーティに来るとは思えないぜ」
「それもそうね。まっ、後でお礼は言っとかないとね……」
(彼の中で何が起きたのか……先程とはまるで別人な程の動きと力が……。いやはや、一度お手合わせしてみたいですな)
《ミツ、間もなく冒険者の援軍が到着します》
(あ~。そっか、すっかり忘れてた……。アースベアーの状態は……。うわ~、まだスティールできないのか……仕方ない)
このまま戦って援軍を待つのも良いけど、アースベアーの攻撃をいつまでも交わし続けるのも大変だ。しかし、かと言って〈風刀〉じゃまだ決め手になりそうもないし……実験もそろそろ止めて終わらせることにした。
自分はアースベアーに警戒しながらゼクスの方へと近寄った。
「すみませんゼクスさん、そのレイピア貸してもらえますか?」
「構いませんが、先程も申し上げたとおりにこれでは決め手にはなりませんぞ?」
「構いません、一撃で終わらせますんで」
「ほう……。その自信見せて頂きましょう」
「はい、ちなみにこれ高い品物ですか?」
「いえ、その辺はお気にせず、それは支給品ですので」
「わかりました!」
(名家の品物ですから、金貨80枚程度ですけど、下手に言わない方が彼の本気が見れそうですね)
ゼクスからレイピアを受け取り、アースベアーの方にゆっくりと歩を向けた。
ゼエッ……ゼエ……。
「息があがってるね、それは痛みで? それとも今からの死の恐怖に対してかい」
グルルルゥゥ!
自分の問にうねり声で返してくるアースベアー。
「自分はね、むやみに実はモンスターは殺したくはないんだ。今までの倒してきたモンスターは全てそっちから手を出してきたからね」
自分の拘りだが今までもプレイしてきたゲームでのモンスター、自分ルールとして、ノンアクティブモンスター(攻撃してこないモンスター)は全てスルーしてきた。
「悪いけど今回もそっちから来たから、抵抗の為に倒させてもらうよ!」
ゴオオオォォォ!
覚悟を決めたか、アースベアーは溢れる血も気にせず腕を振り上げて鋭い爪を出しながら自分に攻撃をしてきた。
しかし、〈速度減少〉の効果でワンテンポ動作が遅い。
攻撃は自分の方が先に当たる事になった。
(即毒! 刺す! シャープスラッシュ!)
ダッ! ダッ! ダッ! ダッ! ダッ!
お前に一撃だけと言ったな、あれは嘘だ。
バッフッ!
連続で突き刺さるレイピアの先端。
ガクッと膝から崩れるアースベアー、刺された部分からは止まることもなく血が流れ出して来る。
《敵の体力が一定以下になりました、スティールが可能となります》
(よし、スティール!)
膝を崩し動かなくなったアースベアーに〈スティール〉を使用した。
《〈土石流〉〈土石落とし〉〈岩石砕き〉〈感覚強化〉〈打撃強化〉〈攻撃強化〉を習得しました》
土石流
・種別:アクティブ
土や砂利などを大量に流しだす事ができる、平地では効果は薄い。
土石落とし
・種別:アクティブ
魔力で成形した土石を振り落とす事ができる、レベルが上がると作れる大きさも大きくできる。
岩石砕き
・種別:アクティブ
拳を岩石のように硬くし攻撃できる。
感覚強化
・種別:パッシブ
感覚を強化できる、レベルが上がると小さい物にも反応する事ができる。
打撃強化
・種別:パッシブ
殴る攻撃力が上がる。
攻撃強化
・種別:パッシブ
攻撃力が上がる。
あなたのスキル頂きます!
ドッシーン!
アースベアーは膝を崩し自分の重さに耐えきれなかったのか、そして毒の効果で足の力も無くなり立つことが出来なくなった。
そして、大きな音を出しながら、とうとうアースベアーは倒れた。
トドメを指してもいいが、どの道毒の効果もあり、アースベアーはジワジワと命を削り取っていく姿が目の前にある。
ビク! ビク! ビク……。
動かなくなったアースベアーを鑑定すると亡骸と表示されていた。
「終わりました」
「「「「「「おおおぉぉぉ!!!」」」」」」
戦いの終わりを告げると周りから湧き上がる歓声。
戦っていた皆の表情が絶望に青ざめていた顔、今では喜びと笑顔と変わっていた。
パチパチパチ
「お見事です、ミツさん」
「ゼクスさん、ありがとうございます。後、これも助かりました、やはり剣先が折れてしまって、すみません」
借りたレイピアを返すが、アースベアーを刺して抜く時に失敗したのか、先がくの字に折れている。
スキルを載せて攻撃をしても、自分の腕が悪いのか、銀色のレイピアは鞘に戻すことができない状態になってしまっていた。
「いえいえ、このレイピアでアースベアーにトドメを刺すとはミツさんは素晴らしい腕をお持ちですな」
「そんな、冗談やめてくださいよ、ははは!」
「はい、冗談です」
「なっ!」
人を褒めて落とすタイプの人なのか、この人は。
「アースベアーを倒した事とレイピアを破損させた腕前で……そうですね、10点ってところでしょうか」
「厳しいな……」
(まぁ、10点満点中ですけどね)
援軍が来るまでに少し時間があったので、アースベアーとキラービーでの戦闘で怪我した人を近くに見かけたので回復し、回って暫くすると、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい!」
「おや、援軍が来たようですな」
「ミツ~!」
「あっ、プルン」
援軍の冒険者の先頭に立っていたのはプルンだった。
自分の姿を確認すると、真っ直ぐにこちらへと向かって来る。
「ミツ! 大丈夫かニャ! 援軍を連れてきたニャ!」
プルンの指を指した先には30程の数多くの冒険者達だ。
「あ~、そうなんだ」
「残りのキラービーとアースベアーは何処ニャ、皆でかかれば怖くないニャ!」
「キラービーならあそこに、アースベアーならあっちだよ」
「……ニャ!」
自分の指指す方には、動かない大量のキラービーと傷だらけのアースベアーが倒れている。
「ゴメンね、急いで戻って来てくれたのに」
「ニャい……いや、大丈夫ニャ」
「お話中失礼します、プルン様でしたでしょうか? ロキアボッチャまは今何方にいらっしゃいまでしょうか?」
「あの子なら、冒険者ギルドの支援部隊が保護してくれてるニャ。親が解らなかったからおじさんに聞きに来たニャ」
「ちょ、プルンおじさんは失礼だよ」
「ホッホッホッ、いえいえ、ボッチャまの為にここまで来てくれたのです、感謝いたしますプルン様」
「プルンでいいニャ。え~と」
「ゼクスさんだよ」
「ゼクスおじさん、ロキアが待ってるニャ、早く行ってあげるといいニャ」
「ありがとうございます。ミツさん、プルンさん、本日はボッチャまをお救い頂けたこと、後日お礼を持ってお伺わせて頂きます。本日はこれにて失礼いたします」
「お礼だなんって、気にしな……」
「待ってるニャ!」
「ホッホッホッ、では」
一般的な礼儀としてお礼は断ろうとしたが、プルンはそんなことはお構い無しの言葉を飛ばしている。
そんなことしなくてもゼクス程の執事ならロキアのことを考えると言わなくてもくれると思う。
「ボッチャま! 今私が参りますぞ~~~!」
「凄い人だったね……」
「ニャ……」
物凄いスピードで支援部隊に保護されているロキアの方へ走って行ってしまった。
時間的にも〈速度増加〉の効果は切れてるはずなのだが、ゼクスは土埃を巻き上げながら走り去って行った。
ゼクスと入れ替わりに、ローゼ達が話しかけて来た
「君」
「んっ。あっ、ローゼさん、大丈夫でしたか」
「ええ、私達に怪我はないわ。それよりありがとう」
「君カッコよかったよ!」
「すっ、すごっ、すごかったです!」
「ほんとだぜ!」
「いえ、運が良かったんですよ」
「「「「……」」」」
いつもの様に運だけで片付けた様に誤魔化したが、皆の視線がそれは無いと伝えていた。
「ミツ、それは逆に嫌味に聞こえるニャ」
「あれ?」
謙虚な言い回しをしたつもりだったんだけど、嫌味に聞こえたのか、プルンの呆れた言葉に周りを見渡すと、なんとも言えない苦笑いしかできない皆だった。
「コホン……取り敢えず、今日は私達も引き上げるわ」
「君には色々聞きたいから、またね……チュッ!」
「ニャ!」
アメリカン的な頬へのソフトキッスをしてくるミーシャ、少しドキッとしたが口じゃないならそれ程に気にする程でもないのだろう。
この世界だとどうなんだろう?
「ミーシャさん! 不潔です!」
「そんなこと無いわよ、ただのお礼じゃない」
「あのさ……さっきはごめん…」
「いえ、結局はトトさんにも一般人の避難をお手伝いしてもらったんですから、こちらこそありがとうございます」
トトが罰の悪い顔で謝罪に来てくれた、言葉は少なくてもちゃんとその言葉の意味は理解できる。
「いや……」
「トト! 早くしなさいよ!」
「っ! わかってるよ」
「?」
「あのよ、またパーティ組んで狩りにでも行こうぜ!」
「ええ、喜んで」
「あぁ、またな」
ローゼ達は最後に軽く手を降って街の方角へと帰って行った。
それに続く様に次々とその場を後にする人達も見える。
「さて、ウチらは帰る前にコレを回収するニャ」
「コレってまさか……」
「勿論。ミツが倒したキラービーだニャ! せっかく倒したんだから、素材として持って帰ってギルドに渡せばウハウハニャ!」
流れる川の方へと視線をやると、先程の戦いで倒したキラービーの亡骸となる残骸が無数に散らばり落ちていた。
全てのキラービーに〈即毒〉の効果もあり矢の先端が当たった程度のキラービーでさえも綺麗に落下死している。
「でもさプルン、川に落ちた分引いてもコレ結構いるんだけど」
「フフッ、皆で集めれば早いでしょ」
声の方をする方にと振り返ると、そこにはエンリエッタが武装した格好で立っていた。
「あっ、エンリエッタさん」
「エンリも援軍で来てくれたニャ」
「まぁ、援軍と言うか、結果を見に来たと言うか……」
「「?」」
「取り敢えず二人とも大丈夫そうで良かったわ。先ずはキラービーを1箇所に集めます、目撃者の証言から倒したのは君、ミツ君の所有権となります。キラービーの亡骸とアースベアーはミツ君のアイテムボックスに入れてください、入らない場合はこちらで運びますので」
あれだけ見てる人がいたんだ、誰が倒したかバレバレである。
「ありがとうございます、助かります」
「それとあなた達はギルドにそのまま来なさい、話があるわ」
「「え?」」
「話の内容はだいたい想像つくでしょ」
「明日じゃ……」
「駄目です」
「はい……」
何だろう、思い当たる事が多すぎてなんで、呼ばれるのがが解らない。
面と向かって冒険者ギルドの副ギルドマスターから来い言われたし、聞いてませんでしたは駄目だよね、呼び出しってなんか嫌だよね
取り敢えず、待たせるのも失礼だしアイテムボックスにキラービーの亡骸とアースベアーの亡骸をさっさと収納した。
ポイポイッとどんどんアイテムボックスにモンスターの亡骸をいれていく。
「呆れた……。君のアイテムボックスには限界はないの?」
「どうなんでしょうか……。あんまり使ってないので気にしなかったですね」
「そう……」
(アイテムボックスの容量はその人の能力とも言われてるのに……この子相変わらず凄いわね)
キラービーとアースベアーをアイテムボックスに入れ終わり、残ったのはアースベアーに荒らされた川辺だけ。
ここの処理はギルドが依頼を出して冒険者に片付けさせるそうだ。
自分がやったことだから自分が片付けてもいいのだが、まぁいいと言うならそのままにしておく。
帰りはエンリエッタが乗ってきた馬車に便乗と言うか……強制に乗せさせられた感じで街へと帰えることになった。
ゴトゴト……ゴトゴト……
帰り馬車を襲ってくるモンスターもおらず、静かに揺れる馬車にウトウトと眠くなってきた……。
プルンは自分の肩に頭を乗せている、時々ピクピク動く耳は何かドキドキしてしまった
「ゴロロ……。ゴロロ……」
「んっ、あれ? 雷、雨でも降ってくるんですかね?」
「フフッ、いえ、今のはプルンの喉鳴らしよ。君に安心しきってるのね」
昔猫を飼っていたことがあるが、喉を鳴らすあれかな。
「これって確かスキルですよね? 効果ってなんですか?」
「効果って言える物は無いわ。ただ意味はあるわよ」
「意味、ですか?」
「さっきも言った[安心]他にも[信頼][共鳴]何か色々と意味はあるわよ」
「へ~、眠りながらでもするもんなんですね」
「普通は起きた状態なんだけど、珍しいわね?」
「……つまりイビキですか」
「あはははっ。確かに寝てる状態じゃイビキよね」
相当急いで救援のところまで行ってくれたプルン。
休むことなく彼女は直ぐに援軍を自分の場所へと連れて戻ってきてくれた。
プルンも流石に疲れてるんだろう。
このまま寝かせといてあげよう……。
ゴトゴト……ゴトゴト……。
「ゴロロ……。ゴロロ……」
自分の耳には馬車の車輪の回る音。
プルンの声だけが耳に入り、自分もいつの間にか瞼を閉じて寝てしまっていた。
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