第21話 ねこというかわいくて計算高くて愛らしいけれど脳みそちっちゃい生き物

 ごきげんいかがですか?


 Tポイントとかいうよくわからないものがありますね。TSUTAYAなどを運営しているカルチャーコンビニエンスクラブが取り仕切っているという認識でよろしかったでしょうか? ご一緒に徳間書店はいかがですか? 的な感じでいいのでしょうか。間違えていたら申し訳ございません。各自、記憶から消去していただきたいと願います。わたしはC.C.Cが大嫌いです。書籍を冒涜する輩です。その傘下に落ちた徳間書店の文庫の紙質は、今以上に悪くなるでしょう。


 ソフトバンクのスマートフォンの通信量が引き落としされると、毎月30ポイントぐらいついてくるんですが、一回だけ120ポイントもついたことがあって、理由がわからないので「詐欺か?」と勘ぐりましたが、今のところ銀行口座から不正な引き出しなどはありませんので、まあいいかという感じなのです。

 以前はYahoo!でトトビッグを購入するときに利用していたのですが、いまの生活になってからは「市民の血税をいただいているのに、それを賭け事に金を使っちゃいけない」と思って、トトビッグや宝くじの購入をやめました。前のケースワーカーは「自分の好きなようにお金を使っていい」と言いましたが、保護されている身でギャンブルはおかしいと思います。ギャンブルって胴元だけが儲かるように巧妙なインチキをしているのは明らかですよね。宝くじだって、本当に高額賞金を当てている人がいるのか、いささか猜疑的です。全部、官房機密費になっていたりして。でも、保護費でパチンコやってる者がたくさんいるそうですね。パチンコができるなら働けそうな気がするのですが……


 わたしには以前、夢がありました。宝くじ等で大金を得て、それを元手に『NPO法人 どらねこくらぶ』というものを作るということです。この組織について説明する前にわたしの昔話を聞いてください。

 わたしはペットという名の家族と一緒に暮らしたことがなかったので、元の嫁さんが飼っていたねこが初めのうちはとても怖かったのです。チビという名のねこでした。元嫁がねこじゃらしやヒモで挑発(?)すると野生の本能をむき出しにして走って来るのを見て、軽くパニックを起こしました。なので結婚当初はわたしが一人でいるとき、チビを軽くいじめていた過去を告白します。

 ところが、そんな状態だったのにもかかわらず、チビはだんだんわたしに懐いて来ました。とても不思議でした。わたしも懐かれれば、次第に恐怖心から愛おしい気持ちになって来ました。ねこはまるで赤ちゃんのようです。若くして亡くなった甥が赤ちゃんだった頃を思い出してしまいました。いえ、泣いてはいません。

 チビのわたしへの感情が完全なる信頼に変わったのは、元嫁が二匹目のねこ、アビを連れて来てからです。アビは怪我で片目を失ったため、勘が強くて、わたしなど本気で威嚇されたり、噛まれたり、引っかかれたりでたいへんでした。のらちゃんの方がよっぽど愛想がいいくらいでしたよ。一方のチビはお昼寝をしているわたしの太鼓腹に乗っかって一緒になって寝ていました。こうなると愛おしくてたまりません。

 しかし、私たち夫婦は十年ちょうどで離婚してしまい、わたしには財力もねこトイレの始末をする力もないので二匹とも元嫁が引き取りました。その後、元嫁との関係が若干修復されまして、わたしは元嫁の家に遊びに行きました。わたしが玄関に近づくと、トコトコという足音がします。そして扉を開けたら、チビが、チビがわたしの顔を見つめて甘えるような声を出しました。いいえ。泣きません。泣きません。

 その後、チビはアビとの折り合いが悪すぎて、元嫁の実家に引き取られました。そして数年前に大吐血をして亡くなりました。死の数日前に会いましたが、もう動くこともままならず、わたしのことも忘れているようでした。脳みそちっちゃいねこだから仕方がないです。しかし、抱っこをさせてくれました。四、五数日経って、わたしは戸塚斎場まで元嫁母娘と一緒に行ってお骨を骨壷に入れました。悲しいですよ。悲しい。でも涙は一滴も出ませんでした。わたしは冷酷なのでしょうか?

 いまチビは元嫁の実家の庭に眠っています。アビも昨年亡くなりましたが二匹のお骨は離して埋めたそうです。本当に相性が悪かったのですね。親戚かもしれないのになあ。


 わたしの『どらねこくらぶ』構想は、広大な敷地を買い、そこで保護ねこらを育てる。動物を遺棄したい人が来たら一律十万円で引き取る。ねこが欲しい方がお見えになったら避妊手術やワクチン接種費用に少しだけ上乗せした料金をいただくというものでした。しかし、再三言っていますようにわたしには金運がないのです。運そのものがないのかもしれません。

 どなたか、わたしの構想を実行してはいただけませんか?

 Tポイントは動物保護団体に寄付したいのですが、どうも、どこも信用が置けなくて考えてしまうのです。

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。

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