第19話 人間という脆いもの

 ごきげんいかがですか?


 とても悔しくて、残念なのですが、わたしのメンタルは完全に崩壊してしまったようです。今回、わたしに起こった多重トラブルのうち、個人情報漏洩に対しては闘争本能の限りを尽くして知略を練り、多少強引にでも平穏を取り戻そうとしました。しかし、最後に登場したベテランケースワーカー(と思われる)女性にうまく丸め込まれて、おそらく最終的には有耶無耶にされていまうような気配が濃厚になりました。結局は公権の方がちっぽけなわたしの謀略よりも強いとわかりました。当たり前ですね。もう、諦観の心境です。こちらはどうでもいいのです。


 もう一方の、上の階に引っ越して来た人物が連れ込んだ大型の動物、九分九厘大型犬であると思いますが、そちらの尋常でない騒音については、ご近所トラブルに発展して、わたしが、このアパートに居づらくなるのが怖いので、限界まで我慢しようと思いました。もう、不動産屋に電話するとか、喧嘩腰で勝負するのにも疲れてしまいました。

 しかし、わたしの趣味というか唯一の読書が出来なくなるということは、かろうじて保っていた、わたしのアイデンティティーを失うということであり、人間としての尊厳を奪われるに等しいことです。


 いまは、騒音をごまかすため、イヤフォンでミュージックを聴き続け、こちらのサイトで、他の方からみれば、なんの面白みもないくだらない文章を書いて、遊ばせてもらっている感じです。テレビはほとんど観ず、深夜のバラエティー番組を録画しておいて、のんびり観ている程度です。元来、超テレビっ子であったわたしとしては隔世の感すらあります。完全に老いぼれているようです。早死にするならそれでもいいと思いますが、いざ、本当の死期が見えてしまったら、態度を豹変させて見苦しい行動をするかもしれません。「人間だもの」みつをの贋作。


 まあ、そういうムリが精神に応えたのでしょうね、わたしは突然、時間の感覚と自分の存在、状況、現在地などの全てがゆがんでしまいました。本当です。大げさな誇大広告ではありません。もしお疑いならJAROに通報してください。ジェロに通報しても意味はありません。


 まずもって、わたしは久しく感じたことのない、深い海の底のような眠りから覚めましたが、とにかく何かがおかしいのです。深い眠りから目覚めたら、当然味わうだろう爽快感が全くなく、何か苦いものを口に含んだような、あるいはこの世界全部に対する敵愾心を強く感じました。そして入眠前の自分の行動が思い出せません。時計を見たら五時と表示されていたので、朝になったと思いました。しばし、ぼんやりと考え込んだのですが、なんの結論も導き出されないので違和感を感じつつも朝の習慣であるお手洗いと体重を計ることにしました。でも、お手洗いに行き、小窓を開いたら、前の道路が濡れています。「雨は昨日の午後にやんだと思ったけれど、また降ったのかな?」と首を傾げ、体重計に乗ってみると、前日は絶食したはずなのに全く減っていません。「おかしい」完全に混乱しています。さらにお薬置き場を見たら、睡眠薬類を服用した形跡がありません。わたしは七年前から一日たりとも睡眠薬を欠かしていません。服用しても完徹することもしばしばあります。なのにあの深い眠り。ありえないことが起こっています。夕方のお薬を四時に飲んだ記憶はあります。それ以後は、文章をちょっと書いて、イヤフォンでミュージック、久々に『杉山清貴&オメガトライブ』をエンドレス設定にして聴き出した。それ以降の記憶が全くありません。普段はギリギリまで覚えているのですが……


 この時点でわたしは自分の精神に異常が起こっていると確信しました。でも、躁でも鬱でもないことは経験上わかります。未知の精神疾患でしょうか? 「統合失調症」という言葉が心に浮かびます。とても恐ろしい感覚が全身を伝い、思わずレキソタンを飲んで、様子を見ることにしました。


 とりあえず、又しても朝の習慣、アトピー性皮膚炎の軟膏を全身に塗りました。その時、何気なくスマートフォンを覗いて、戦慄しました。スマートフォンの時計は十七時何分という表示だったのです。つまり、現在は翌日の朝ではなく、今日の夕方だったのです。これで合点が行きましたが、あの深い眠りは正味一時間にも満たないものだったのです。そんな眠りでは絶対にありませんでした。

「ああ、ダメだな」わたしは限界を感じました。なんとか方策を立てねばなりませんが、もう自力での戦いはムリです。知り合いにでも頼むか発狂するかのどちらかですね。


 あまり他人の悪口は言いたくありませんが、上の住民には「周りの人間の気持ちを考えることも出来ないガキに動物の命を大切に愛しむことは出来ない!」と言いたいです。気安くペットなんて飼っちゃダメなんです。ペットなんて甘い言葉を使ってはならない。全ては大切な生命なのですから。

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る