三代目勉強家サボタージュ

よろしくま・ぺこり

第1話 オリエンテーション

 ごきげんいかがですか?


 著名なミュージシャン、故大瀧詠一氏は数多くのサウンドをわたしたちに贈ってくれましたが、長い沈黙の時期もありました。その際、自分のことを「勉強家」だとしていました。たしかにミュージシャン、大滝氏も、き:ち:っ:りとまとめる、というはミュージックだけではなく、様々なジャンルの知識を持っていたようで、特に芸能関係には詳しかったみたいです。サブカルチャーの先駆者小林信彦先生との対談なども興味深いです。


 わたしはここ、孤雲庵というところで、長いか短いか、自分でもよくわからない余生を送っています。死ぬまで寝て過ごすというのも妙案ですが、ちょっともったいない気もします。さらにここに来て、読書欲、知識欲、好きなものだけを学びたい。いえ愉しみたいという気持ちが大きく膨らんで来ました。しかし、興福寺の貫首は「歳をとるということは欲を削ぎ落としていくものだ」というようなお話をされていますので、わたしなど欲にまみれた餓鬼畜生の類なのかもしれません。


 さて、「勉強家」を名乗ったのが大滝氏が初めかどうかとか、大滝氏に続いて「勉強家」を継承して名乗っている人がいるかもわかりませんが、わたしは、大滝氏を勝手に師と仰ぎ、ここに「勉強家」を襲名したいと思います。ただ、わたしは大滝氏の直系の弟子でもなんでもありませんので、あえて、「三代目」にしたいと思います。はあ、そうですね。それなら「四代目」だろうというご意見もよくわかります。でも「四代目」はあまりにも縁起が悪い。これらは、ご存知ですか? 最近で言えば、落語家の故立川談志師匠は本当は「七代目」なのに「語呂がいい、ちょうどいい」「師匠の小さんも五代目だ」と勝手に五代目にしてしまったそうです。意味合いは違うかもしれませんが、大相撲の横綱だって初代から三代までは実在の人物かどうか本当はわかっていません。実存が確認されているのは四代谷風梶之助からです。おそらく、幕府に書類か何かを提出するときに、箔をつけるためにでっち上げたのではと言われています。初代明石志賀之助などはほぼ神話か伝説の人で「日下開山」と呼ばれていました。現在、横綱のことを「日下開山」という人がいますが、わたし的にはちょっと違う気がします。

 さらに言えば、歴代天皇も曖昧なところがたくさんあります。しかし、どちらにしても宮内庁や日本相撲協会が「コレだ!」って言い張っていますので、歴史研究家がいくら、証拠を出しても変わることはたぶんないと思います。

 このように「何代目」というのは結構いい加減なのです。だから、わたしは「三代目」を名乗り続けるつもりです。


 さて、前置きでほぼ埋まってしまいましたね。わたしのパーソナルデータは皆さんご存知だと思いますので割愛します。

 もし、ご存知なかったら、よろしくま・ぺこり氏の「駄文エッセイ」という下手くそなモノをご覧ください。いや、ご覧にならない方がいいかもしれないですね。

 さて、孤雲というのは「はぐれて一つ浮かぶ雲」のことだそうです。実はわたしも知りませんでした。でも、現在のわたしの境遇に、まさにぴったりな言葉ですよね。ああ、孤雲を逆に読んでは決していけません。天にある物が地に落ちてしまいます。まあ、それもまた、わたしの真実なのかもしれませんね。ああ、逆から読みましたね? いいですよ。人は読むなと言われれば、絶対に読んでしまう生き物です。熱湯風呂と一緒。「押すな、押すな」は「押せ」の合図。読まれたなら、わかりましたね。そういうことです。この物語は所詮いつものギャグなんですよ。

 孤雲庵の場所を十日市場と明記しなかったのは、なんか追い立てられる気がして仕方ないからです。まあ、今の所、十日市場から徒歩十分の騒々しい住宅街としときましょうか。


 当庵は途中入場退場自由。お代も頂いておりません。お好きにどうぞ。土産物や胡蝶蘭とかも要りません。置くところがありませんから。


 そういう感じです。

 では、ごきげんよう。

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