シナーとイリスの会話
「私を裏切るというんだな?」
椅子に座りながら、イリスは自分の部下を壁に押し付けていた。
離れた位置から、その首を掴み。
「そうだ、僕は貴方を裏切る。今のあなたは、昔よりも……弱いから」
言うと同時に、男の体は壁にめり込む。
「さすがにやり過ぎだよ、イリス」
イリスの肩をポンと叩き、背後から軽い声が聞こえてきた。
その瞬間部屋を人が埋め尽くす。
その全てが一瞬にして破壊された。
イリスは立ち上がり、背後にいる者に攻撃するが、簡単に弾かれそのまま、押されるままに、地面に膝をついた。
額に当てられた手、睨んだ先にいる少年。
「僕は今、話し合いをしに来ている。イリス、僕の話、聞いてくれるよね?」
イリスを見下ろす少年の言葉は、脅しとも取れるほどに威圧的だった。
「構わない。君の言う話し合いとやらをしようじゃないか」
イリスはシナーの手を払い除け椅子に座る。
机を挟んで向かい側の椅子に座るようシナーを促す。
シナーが椅子に座ったのを確認すると、口を開いた。
「それで、私に一体どんな話がある」
「協力して……」
「断る」
シナーの言葉を聞き終える前にイリスは拒否した。
「君にはこれから、各国に存在する死後の世界と繋がる門の破壊をしてもらいたい」
「断ると言っている」
無視をして話を続けるシナーに、もう一度否定の言葉を述べた。
「……そしてその後には、騎士団の総力を以てこの戦いに臨んでほしい」
尚も無視を続けるシナーに、イリスはついに口を閉じた。
「というのも、これが僕らの最後の戦いになるから、全部出し切ってほしいんだ」
「……何故門の破壊を行う?今までも存在していたはずなのに、なぜ今になって破壊する」
「冥府の神が、死者を使った侵略を企んでいるからだ」
「それはまだ先の話のはずだ」
「閻魔の力が弱まっている」
「……なら、お前がやればいいのでは?」
「死者の相手は得意じゃない」
「…………わかった、門に関しては私が破壊しよう。だが、この戦いで全てを出し切ることに関しては断る。もしそうさせたいのなら、私が君の言葉を信頼するだけの情報を提示しろ」
その言葉に、シナーはポケットからチェスの駒を一つ取り出した。
それを机の真ん中に乗せる。
カチッという音を鳴らし、駒は空中に映像を映した。
それはいくつもの横並びの線が次々と消えていき最後の一つとなる映像。
そして最後の一つになったのち、より詳細な映像が流れ始める。
大地が崩れるさま、天が落ちるさま、陸を海が呑むさま。
それは世界の終焉だった、世界が存続は可能となっていく数々の映像。
「この映像を信じろと?」
「あぁ、だって事実なのだから」
「こんな映像、簡単に作れる」
「それが君の本心かい?」
本心への問いかけに、言葉が詰まる。
「…………」
考えても考えても答えが出ない。
「…………」
今更本心を問われてもわからない。
「…………」
記憶の中の私は、何故笑っているのだろう。
全てを救えなかったはずなのに。
「……わからない。だがいいだろう、考えておく」
「あぁ、今はそれでいい」
イリスの答えに手応えを感じ、シナーは立ち上がった。
「それじゃあ、僕は帰るから」
そう言って扉を開けると、足を止める。
「あんまり部下をいじめるなよ」
そう言って出て行った。
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