第51話悪の秘密

黒崎が取り出した写真は5枚で、其処には赤龍会組長氷室の姿もあった。


更に零士や彩、ゲンの写真も。


「こいつは……確かに。ありがとうございます黒崎さん。期待に応えてみせますよ。それで、もう1人は氷室の側近の長門として、他は誰なんです?」


「ああ、若い男は霧島零士と言って、氷室の頼りにしている殺し屋だ。教団の情報網にやっと引っかかってね。髭の奴は仲間、女も恐らく仲間だ。氷室を潰すことでバックにいる政治家への警告になる。


住んでいる場所は写真の裏側に書いてあるから、必ず仕留めるように。それと、無関係な人間を巻き込むと警察が動く」



「黒崎さん、教会の力を使えば何とかなるんじゃ?」



「それがそうも行かんのさ。阿賀野が警察官僚達を再び掌握してしまったからね。先月の人事でこちら側の人間は殆ど入れ替えさ」



「分かりました。それで銃については……」


「装備については一考しよう。いつものバスを使う。良いかね?場所を押さえて周りを巻き込まないようやるんだ。期待に応えてくれたなら、横浜は再び君達に任せるよう、宇多田大司教にもお願いしておく」



「任せてください!」


(けっ、なにが大司教だ。似非えせ大司教が。世界平和統一教会自体バチカンに認められてないカルト宗教じゃねぇか。俺達でさえ知っているってのにな)


笑顔で部屋を出る李を見送る黒崎。

「成功すればそれで良し、失敗しても此方に火が付かないよう手は打ってある。せいぜい頑張ってくれ。傭兵達の初仕事が、彼等の始末に成らなければ良いがな」



————————————————————

李は仲間達の集まる池袋の雑居ビルに着くなり、説明を始めた。


「教団から氷室の始末の依頼が来た」


室内には男が他に3人。


「おー!マジか!待ってたぜ李さん」

「やったぜ!氷室の野郎ぶち殺してやる!」

「教団も氷室が目障りになったか」



「ジャオ、マー、グゥオ、仲間を集めろ。氷室以外に長門、更に此奴らを殺す」


黒崎から預かった写真を見せる李。



「寝床は写真の裏に書いてある。油断するなよ、相手はプロだ。装備は教会から楽団のバスで届く」



「お、今回は女も居るのか、それは俺に任せてくれ」


「ジャオ、遊びじゃないぞ。分かっているな?」


「李さん信じてくれって」


「まぁ良い。赤龍会を横浜から追い出すチャンスだ。しくじるなよ」


皆一斉に。

「おう!」


(さて、氷室の情報が必要だな。大使館に当たるか)

————————————————————

その日の午後、銀座フィリップスホテル。

各国の大使館職員も利用しているイギリス資本の高級ホテル。


そのホテル内にあるバー、ブリストル。

やや緊張気味のスーツ姿の李に、近づく男が1人。

「久しぶりに連絡が来たかと思えば、ヤクザの情報が欲しいとはね。李、情報は安くないぞ」


「王さん、分かっていますとも。今回はバックに教会が付いています。金は心配なく。それで電話で話した赤龍会の氷室についてですが」


王が取り出したスマホの画面に映っていたのは、李には見慣れない建物だった。


「ここは?」


「なんだ、横浜を縄張りにしていたのに知らなかったのか?東風医院って言う小さな診療所さ。氷室って男は毎月20日にここを訪れている。次に、ここの関係者と写っている画像だ」



「年配の男に女子高生か。しかし、短時間でよく分かりましたね」


「レッツトックと言う動画投稿アプリは知っているだろう?あれは我が国の政府が資本投下して作った企業だ。

 

入力した情報は勿論、撮った動画もサーバーに送られて国の情報局が管理している。 

 

まぁ間抜けな事さ、此方としては有り難いがね。そこで君から送られた写メを元にサーバーのデータベースで調べた」


「なるほど、それは凄い。ありがとうございます。謝礼はいつもの所に」



「ああ、頼むよ。それではこれでな」


「はい。また宜しくお願いします」.


立ち去る王に頭を下げる李、その表情に笑みが込み上げる。

「このガキと爺を人質にすれば、氷室は手も脚も出ないだろうよ。みじめったらしく殺してやるぜ」

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