第15話突破口

 警察の通行止めから解放された俺達は、空港へと急ヴァルハラの仲間に再度携帯で連絡を取る。


🔹🔹🔹

「こちらセイバーリーダー、有香。ライダーリーダー、オルフ応答せよ。」


「こちらライダーリーダー、オルフ。どうした有香?前の連絡から15分くらいしか経ってないぞ。」


 「今地元警察が交通事故を理由に通行止めをしていたわ。おそらくそちらも同じように止められるはず、十分警戒して。」


「了解した。ん?どうしました、霧島さん?え、息子さんと話したいんですか?......解りました。

 有香、霧島妙子きりしま.たえこさんが、そちらにいる息子の零士君と話したいそうだ、代わってくれるか?」


「ええ、了解よ。零士君、お母さんが貴方と話したいって、さぁ、いつまた話せたらか解らないから。」


「え、お母さんが?はい。」


携帯を有香さんから受け取り、なんだかどう応えたら良いか解らぬまま、俺は話し始めた。


「もしもし、お母さん?」


「零士、零士なの?良かった、なんともないのね?」


「うん。ヴァルハラの人達が護ってくれているよ。お母さん、さきとはもう話したの?」


「ええ、咲は大丈夫。でもお父さんが襲われたと聞いて心配で心配で。」


「うん。それ...」


会話の途中、誰かの声が割って入って来る。


「こちらライダーツーカリフから各車へ。」


「どうしたカリフ?……そうか、了解した。霧島さん、通話中申し訳ありませんが、状況が変わりました。通話を終えて息子さんを護衛しているグループのリーダーと代わって下さい。」


「……解りました。零士、空港で会いましょう。有香さんと代わって。」


緊張した空気が伝わって来た。


「うん。お母さん無事でね。」


有香さんに携帯を渡す。


「ライダーリーダー、オルフ何かあったの?」


「有香、どうやら連中は芸がないようだ、丁度こちらにも地元警察の車3台を確認。こちらも襲撃に備える。」


「了解。どうか無事で。」


それだけ言うと有香さんは通話を終えた。


「あ、あの.......」


「大丈夫。貴方は私達が護るわ。貴方のお母さんも心配しなくて大丈夫。防弾ベストを着て。」


「はい。」


しばらく無言が続く。すると、珍しくハンスさんが。


 「気付いているか、警察の通行止めを越えてから、対向車が通らない。そろそろ仕掛けてくるかもな。襲撃を受けるとしたら、2キロ程先にある廃墟になっているホテル辺りか。」


 「ええ、静か過ぎるものね、後続車も無い。ホテルならこの先の十字路だけど、確かにその場所なら身を隠し易いし、ホテルからこちらを狙撃するのもやり易い。ゲンさん、SRを出して。」


シートのなか中から狙撃銃SR25を出しつつゲンさんが俺に向かって話す。


「だな。坊や、ホテルが見えたら頭を低くしてな。念のためだ。」


「はい......」


「な~に。そんな深刻な顔しなさんな。大丈夫だって。」


 それだけ言うとゲンさんは砕けた表情になった。2分後、そのホテルある十字路の前に差し掛かる。ホテルは右側にあり、10階建てで廃墟とは言え、ちた感じはしない。

 有香さんは右のホテル側を、ゲンさんは左側の駐車場を警戒している。


 「見えて来たわ。こちらセイバーリーダーから各車へ、警戒を厳に。右側にホテルが見えて来るわ。ホテルと左側の駐車場は特に警戒して、セイバースリー、エドゥイン。後続車はある?」


「こちらエドゥイン。いや、ん?後方200メートル先から、猛スピードで迫る車両を1台確認!こいつはヤバイかもな。」


「来たわね。」


零士達の車列をホテルの10階から双眼鏡で確認する、ダヴィードの姿があった。


▪️▪️▪️

 「ヴァレリーが戦闘を始めてから時間も経過したが、連絡がこないな。それで例のヴァルハラとか言う奴等が来ちまった。やれやれ、だが、こいつを仕留めればポーランドともおさらばだ。」


そこに男の携帯電話に連絡が入った。


「ん?ヴァレリーじゃなくてファリドか、どうした?」


「まずいぜ、サッヴァの奴が先に攻撃するって、止めるのも聞かずに出ちまった!」


「なんだと!?あのバカ、これじゃあせっかく包囲配置したのが意味ねえじゃねぇか!仕方ない。駐車場狙撃班聞こえるか?」


「こちら駐車場、何かあったのか?」


「ああ、トラブル発生だ。サッヴァの奴が抜け駆けしやがった。予定を早める。駐車場前にヴァルハラの車が来たら撃て。戦闘開始だ!」


「はは、奴はトラブルメーカーだからな。了解だ。」


次に屋上にいる仲間に指示を出すダヴィード。


「ゲーニャ、攻撃開始だ!」


「速くないか?」


「サッヴァのバカのせいだ、良いからやれって!」


「へいへい。」


▫️▫️▫️

ゲーニャはヘッケラー&コッホ社製のPSG-1を構えた。


▪️▪️▪️

「ファリド、聞こえてるな?お前も仕掛けろ!」


「了解だ。フォロー頼むぜ。ダヴィード。」


「ああ、任せておけ。」


有香さんが大きな声で指示を出す。


🔹🔹🔹

「セイバーリーダーから各車、戦闘準備!セイバースリーは後方から迫る車に対応を、武器が見えたら撃って!セイバーツーは駐車場を警戒、狙撃主をか確認したら即攻撃!

ハンス、スピードを出して!

一気に突っ切るわ!」


 派手な赤い色合いのジャンパーを着た男は、カラシニコフコンツェルン製AK74を構えながら車の中で奇声を挙げていた。


「はーっはー、ちんたらやってないで、一気に仕止めちまえば良いのさ!行けー!」

[ダダダダダ!]銃を連射。


🔹🔹🔹

 後ろから高速で迫る車、だが、有香さんは気にも止めていない、後ろに付く車の仲間を信頼しているからだと思う。


 「後ろの奴撃ってきたか、構わずこのままで。恐らく駐車場に伏兵ふくへいがいる、私はルーフから出てホテル側の攻撃にそなえるわ。後ろはバートに任せておけば大丈夫。ゲンさん、エドヴインへの指示は任せるわ。」


「了解だ。」


ゲンさんはゲンさんで、マグプルで応戦しつつ既に次の脅威に気付いていた。


「セイバーリーダーから各車へ、ホテル側から車1台出現、バートン対応頼む。」


「了解。任せろ。」


 襲撃側の車から放たれる銃弾が、次々俺の乗る車に命中する。[ガンッ!ガンッ!]車体はあまり揺れないが、ガラスにヒビが入り、やはり恐怖感はある。

 だが、やはりこの人達はプロなんだと俺はすぐさま理解できた。


「なんだ?!弾は当たっているのに、なんともないだと?糞が!完全防弾かよ!とにかく撃て!フロントガラスを狙え!」


後ろから迫る車は、諦め悪く激しく銃弾を浴びせてくる。だが。


 [バシュッ!]「うぐっ!」

正確な射撃が、その車を捉えた。車はかなりの高速を出していたせいもあり、フロントガラスに命中弾を受けるとコントロールを失い、そのまま駐車場左隣りの廃墟となったレストランに突っ込んだ。

 ホテル側屋上からも銃弾が放たれる。

[ダンッ!ダンッ!]


「やはり居たか。狙いは良いけど甘いわね。」


有香さんは狙撃銃をサンルーフから出て構える。そして次々とホテルの屋上に向けて撃った。[バシュッ!バシュッ!バシュッ!]


▪️▪️▪️

「なんて奴だ。あのスピードで正確に当てやがる。ファリド応答しろ!」


忙しく複数の携帯電話で呼び掛ける。しかし、反応は無かった。


「バカな、殺られたのか?駐車場応答しろ!そっちに行くぞ、通すな!」


「解った!攻撃開始だ!」


「こちらセイバーツー、ホテル側屋上は沈黙。残るは待ち伏せしている駐車場だけだな。」


「了解。みんな流石ね。」


「まぁ、プロとアマの違いだわな。だがまだ油断できないぜ。」


「ええ、駐車場前を突っ切る。」


更にスピードが上がる。案の定駐車場奥に隠れていた男達が銃でこちらを狙っていた。

「来たぞ!撃てー!」

[ダン!ダン!ダン!]

 

[バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!]有香さんと仲間の人達は、冷静に一人一人仕止めていく。ダヴィードは驚愕していた。


「マジかよ。始まって3分も経ってないぞ。なのに12人いた仲間が、ぜ、全滅う?....3分足らずで?ば、化け物か.....こんなの割り合うわけねえだろうが.....そうか、ヴァレリーから連絡が来ないのは——」


 ダヴィードは力なく膝から崩れおちた。

俺達の車列は駐車場を越え、そのままホテル横を出て十字路右道路に突っ込む。


「どうやら脅威はもうないみたいね。」


「ああ、だが連中の中には射撃は正確だった奴もいた。元軍人もいたのかもな。」


「その可能性はあるな。ライダーとアーチャーも気になる。お嬢、連絡を取れないか?」


「そうね。」


 この人達なら大丈夫だと俺は安心した。


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