第283話 挟撃、黒狼!

 騎士団と巨大黒狼らがぶつかり合う直前に、ジークさんが魔力の矢を放つ——とばかり思っていたから、こうから二つの勢力がぶつかった衝撃に俺は驚いた。


 ——!


 折れた槍の破片がくるくると回りながら俺をかすめて飛び去っていく。


 なんで、矢が飛んでこないんだ?


 俺が疾走する騎馬の上から、本陣の方を見ると、丘の上のジークさんに何かが襲いかかっていた。


「ジークさん⁈」


 それは生き残っていた最後の黒鷲であった。空から襲いかかったようである。白く輝く銀髪を振り乱し、ジークさんは追い払おうとする。


 周りの弓隊が矢をつがえているが、ジークさんに黒鷲がまとわりついているためか、なかなか射ることができない。


「ジークさ……」


 叫ぼうとした時、乗せてもらっていた騎馬が前脚まえあし高く跳ね上がった。


「うわッ⁈」


 油断していたので、振り落とされそうになる。


「救世主殿!こちらも危険ですぞ!」


 同乗の騎士さんに注意をうながされる。


 浄化の為の矢が飛んでこなかったので、槍部隊と巨大黒狼らが乱戦になってしまったのだ。


 必死で槍を繰り出す騎士。それに身体を切り裂かれながらも鎧ごと潰そうとのしかかる黒い獣。


 槍が折れた騎士は剣を抜いて黒狼に斬りかかる。それを大きな爪で受けて、騎馬の首を噛み砕こうと牙をく黒狼。


 一瞬にして血と土埃とが舞い上がる戦場と変貌してしまった。


 そこから離れようとした俺達の背後に、別の黒狼の群れが襲いかかって来る。


「しまっ……」


 た——!!


 挟み撃ちにされたのは俺達の方だった。





 つづく

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