第260話 大鴉達を救います!
「大鴉達の体の向きが、さっきとは違うって?」
「はい。今は皆こちらに顔を向けているでしょう?」
ついでに掴みやすいように脚も向けている。
「つまり——」
俺が結界に張り付いている大鴉の両脚を引っ張る。結界の反発で固定された大鴉がこちらに向けて大口を開けているので、そこへカリンが銀聖水を流し込む——。
苦しくて暴れる大鴉を抑えるのに苦戦していると、ユリウスも手伝ってくれた。
「カリン殿、黒い霧が出てきましたよ!」
「はい、ユリウス様」
カリンは銀の燕の御守りを手にすると、それで黒い霧を
浄化され、消えていく黒い霧。
気絶した大鴉は、普通サイズの鴉に戻る。俺はそれを結界の内側に引き込むと、その辺にとりあえず置いておく。クロウが喜ぶように辺りを飛び跳ねた。
「よし、手早くいくぞ!」
同じ事を繰り返す。
グロスデンゲイルからは何をしているか見えないだろう。
『???』
困惑している空気が伝わって来る。
そこへボロとダズンが飛び込んで来た。
「ヒロキの旦那!手伝いやすぜ!」
彼ら——特にすばしこいボロには、村との連絡役を頼んでいた。隙を見て丘と村の連絡をするのだ。
「頼むよ。俺達の真似をしてくれ。ダズンは一人で鴉を抑えられるだろう?ボロは銀聖水を!」
「へいっ!」
「村の方はどうだい?」
「同じ様にとらえた大鴉を水につけてやす。出て来た黒いのはあの特別な炎で焼いちまいました」
「炎?聖なる火があるのか?」
ユリウスが疑問を挟む。そう、フォリアの聖なる火そのものは無い。けれどフォリアの力を宿した『紙』があったのだ。
A 4用紙の束。
それを数枚使って燃やし、その炎で黒い霧を祓ったのだ。
「良かった!上手くいったんだな」
「へいっ!」
そうやって結界に特攻して来た大鴉は全て取り除いた。カシラの身体から憤怒の気配が漂って来る。
ここからでも、奴がブルブルと震えているのがわかった。
『……貴様らァ』
俺は奴が怒声をあげるのだとばかり思っていたから、次の奴の行動に少し驚いた。
奴は——笑ったのだ。
つづく
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