第231話 宝くじは買いましたか、俺は買ってません!


「ヒロキ殿、はどのくらい増やしたのです?」


 デルトガ村長は妙なところに食い付いてきた。


「50本ほどですが……」


「なんと!真銀貨50枚分!!」


 目を白黒させてグルグルと部屋の中を歩き始めた。


 なんだなんだ?

 俺はスマホを取り出した。


 通信機能が無いので、写真と動画と少し音楽を聴いたりするくらいしか使い道がないのだが、メモ機能にこの世界の事を少し書き留めていたのだ。


『銀龍亭』で食べたものの事とか、売れ筋の商品とか、俺の部屋にある物の事をメモしている中に、この世界の通貨の事もあった。


 と、言っても俺の主観によるレートなんだけど。小麦粉とか玉ねぎの値段から俺がはじき出したのが小銅貨1枚が20円くらい。


 あくまでも俺の感覚なのだが、そう遠くないと思う。


 そこから逆算すると金貨1枚が10万円くらいの価値になるとメモしてあった。金貨20枚が真銀貨1枚だったはずだ。


 て、ことは——。


 真銀貨は10万円かける20枚だから——え?


 200万円。


 …………。





 に、200万円⁈


 こ、この世界で純銀がとうとばれていることが前提にあるとしても、ちょっとすごい額だ。


 だってあのスプーンが200万円って。


 うふ、ふふふ。

 ヤバイ。

 ぼろ儲けじゃん。


 いやいや、すでに50本増やしてるから、200万円かける50本?




 ……い、いちおくえん。


 うっそだー!

 俺のレートが甘いにしてもそんなにいくかな?いくか!


 デルトガさんの気持ち、今わかったよ!





 しばらく頭の中がお花畑。

 これで美味しいものたくさん買えるな。




 …………。



 いやいやいや、その為に増やしたんじゃないから!


 そもそも急に真銀貨分の純銀がたくさん市場に出回ったら、価値が崩れちゃうでしょ!


 いくら俺でもそれくらいわかるよ!



 俺はデルトガさんに「しっかりしなはれ」とばかりにツッコミを入れた。村長も我に帰る。


「おお、ヒロキ殿。すみませぬ…グスタフに加工を頼んでみましょうぞ」



 良かった。

 正気に戻ったみたいだ。


「……もし戦いが終わって、スプーンが余ったら村で使っても良いですかのう?」


 ガメツイな、村長。





 つづく

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