第226話 女神様も教えたい!

「おい」


 はい。


 俺を起こすような声に反応して、目を開ける。そこは例の空間だ。


「フォリア!ちょうど良かった」


 今日のフォリアは俺達と同じくらいの年齢だ。戦装束いくさしょうぞくは変わらない。紫色の瞳が優しく微笑んでいる。


「ちょうど良い、とは何だ?」


 俺は深緑騎士グリューネ・ヴァルトのジークさんの事を話した。何しろ分隊長だからフォリアの姿を見れば騎士団本隊に働きかけてくれるだろう。そうなれば百人力だ。


「私は見せ物ではないぞ」


「ただの確認だってば。ユリウスがしっかりしてれば話は早かったんだろうけど」


 アイツはなぁ…と、フォリアもうなずく。腕は立つんだけどね。


「そのジークとやらの影響か?弓を始めたみたいだが」


 フォリアは目ざとく俺の手や指をにある傷を見つけた。


「弓なら私が教えてやるものを……なんだって女騎士なぞに頼むのじゃ!」


 えー?そこ?

 だって基本夜にしか出て来ないじゃないか。


「ぐぬぬ……。あの者の意識が無い方が降りやすいのだ。だがお前が望むのなら……」


「別にいいよ。カリンも疲れるだろうから」


「くっ!お前はいつもいつもあの者のことばかり!」


 そういうわけじゃ無いけど。


「どうせなら特訓より弓のスキルとか、魔法が使えるとか——」


「ヒロキ、お前は魔法とかスキルとかすぐ口にするが、お前の周りの者も多少は使えているのだぞ」


「魔法を?」


 お前が思い描くようなものではないがな、と女神様は付け加えた。


「近いところでは料理ができる、狩りができる、馬に乗れる——お前の言うスキルかのう」


「それじゃあ誰でも魔法を使っているってことか?」


「そうとも言える。お前が使いたいものとは違うだろうが」


 俺にも有るのだろうか?

 思い返しても特に思い当たらない。

 バスケができる?

 自転車に乗れる?

 思いつかない。


「まだ見つからないだけであろう。お前なら必ず何かを身に付けるだろう」


「予言かよ」


「確信だ」


 冗談で返したのに真顔で返された。しかも自信たっぷりに。これは俺も頑張るしかないかな。




 つづく

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