第227話 君の想いが気付かせたのかも!

 せっかくフォリアが来てくれたので、例のごとく銀聖水を作る事にした。ついでに俺が練習している弓矢にも力を付与ふよしてもらう。


(ちなみにちゃんと服を着てカリンに降臨している)


「俺が使うやつよりも、ジークさんの弓矢に力を与えた方がいいんじゃないかな」


 俺がそう言うと白金のフォリアはジロリと俺を見据えた。


『なんで私が女騎士の力にならねばならんのじゃ』


「グロスデンゲイルと戦う為だろ」


 まあ、そうなんだが…とぶつぶつ言うフォリアを尻目に、俺は気晴らしに外に出た。


 フォリアも疲れたのか、肩をグルグル回しながら小屋の外についてくる。


『息が白い。さすがに冷えてきたようじゃな』


「お、すごい星空だな」


 冬の星座が一番綺麗だと言ったのは誰だったか。もっともこの世界の星空は俺の知っている星座はひとつもなかった。月と北極星が同じだったけど。


 その時、コツン、音がした。


 俺の部屋のドアにぶら下げていた『シルバー・スプーン』だ。風で揺れたのだろうか。


 外に飾ったのは、このスプーンをカリンが探して俺に渡してくれたからだ。部屋に戻すと元のスプーンしか残らないから、俺はカリンの思いの詰まったをドアに小さい釘を打って、そこにぶら下げたのだった。


『なんじゃ?』


 興味深そうにフォリアが眺めているので、俺はスプーンを外してフォリアに差し出した。子どもの時の物だと簡単に説明する。


『曇っておるな』


 そう言うと彼女は右手でソレを握りしめると力を込めた。ふわっと白金色の髪が舞い上がる。


 ほの明るい光が一瞬広がり、辺りをを照らし出す。


 光が収束すると、フォリアがスプーンを俺に見せた。


『どうじゃ?』


 得意気だ。

 でも確かにスプーンは新品みたいにピカピカになっていた。それどころか少し輝きを放っている。


『ふふふ。ついでに私の力を付与したぞ。首から下げて御守りにするが良い』


 ————今、なんつった?


『御守りにするが良い』


 俺は輝くスプーンを見つめる。


「……」


『どうした?まさか私の力を疑っておるのではあるまいな?前にも言ったであろう。銀は私の力を宿して——』


 俺はスプーンから目を上げてフォリアを見る。フォリアも言葉を切って顔を向け、俺と目が合う。


「銀!!」

『銀か!』




 フォリアが見たところ、混ぜ物の無い純銀である事が判明した。


「と、言う事は——」


『武器として使える、と言う事じゃ』


「マジか⁈」


 テンションあがって思わず目の前の白金のフォリアに抱きつきそうになる。(かろうじて踏みとどまる)


 とにかくこれでグッと戦いやすくなる。小さなスプーンだが、集めて加工すればナイフでも矢尻でも作れるのではないだろうか。いや、出来る。銀聖水よりも強力な武器。斬ったり刺したりすれば魔物が霧散するといわれる銀の武器。それが手に入るのだ。


「は、ははは……」

『ふ、ふふふ……』


 思わず笑いがこぼれる。フォリアもそれは同じらしく、笑顔になる。


『まさか、あれほど手に入れにくい素材を、お前が持っていたとは!』


 ああ、うん。俺の手柄じゃ無いけどね。


『忙しくなるな』


「忙しくたって、これで奴らを倒せるなら頑張るよ」




 つづく

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