第223話 騎士殿のご招待!

 ユリウスが、食事を運んでくるのが村の女子達が喧嘩ケンカしないように交代で運んできているのを言いにくそうにしていたのは、訳があった。


 ジークさんに知られたくないのだ。


「ジーク様に知られたら、なんと言われるか……!」


 なんも言わないと思う。

 あの冷ややかな目で射竦いすくめられて終わりじゃ。


「それが怖いんだ!」


 まったく……。

 俺は呆れながら、肝心の事を聞くことにした。


「ジーク様の帰りが遅い?」


「うん。昨日町へ行ったから、今日にでも騎士団を連れて帰ってくると思ってたんだ」


「ああ、そう言うことか」


 ユリウスは食事が冷めるから中で話をしようと、俺を家に招いた。


 家の中はこの村では平均的な造りだった。かまどを兼ねた暖炉が一つあって、その近くにテーブルと椅子がある。椅子は4脚あるから、前の住人は4人家族だったのだろう。


 テーブルの上に食事の載った盆を置くと、ユリウスは俺を手招きした。


「ほら、お前も食べるだろう」


「あ、うん。じゃあ少し」


 この辺の村ではシェアすることが普通で、それは量の多い少ないに違いを持たない。遠慮なく分けてもらう。


 焼き立てのパンをちぎりながら、ユリウスは先ほどの会話の続きを始めた。


「お前の世界ではどうか知らんが、騎士団が本格的に魔物討伐に出るには支度に時間がかかる」


 ユリウスが単騎でリール村に駐在するにも許可を得た様に、大人数を動かすには更に上の許可が要る。


「あまり期待するな。分隊長がすぐに動かせるのはせいぜい十騎ほどだ。それだとて食糧の用意に手間がかかる。この村は食糧の備蓄が少ないから、たくさん用意がるしな」


 なるほど、それもそうか。


「その前に町へ着いた村人達の借りる家や食べ物の手配もあるだろう。働ける者には仕事も世話するだろう」


「すごいないたれり尽くせりじゃないか」


 騎士団って金持ちなんだな。


「本隊はな。辺境警備の私達は支給されるものでやりくりしている。全ては女神・フォリア様を信仰する人々のおかげだ」


 寄付で成り立っているらしい。その代わりに魔物を倒したり、警察がわりに人々の為に奉仕していると言うことなんだろう。


「焦らず少し待て。あの方は約束をたがえるようなお人ではない」


「そうだね」


 俺はいろいろ腑に落ちて、すっきりした気分で立ち上がった。


「ごちそうさま。おかげで安心した」


 ユリウスはうなずいて、それから少し逡巡しゅんじゅんしたように間をおいて、口を開いた。


「お前は、カリン殿をどうしたいのだ?」






 つづく

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