第164話 戦うために!
「用意して欲しいものがあるんだけど」と俺が切り出すと、村長のデルトガさんがうなずいた。
あんな事があった後だから少し気まずかったけど、ユリウスが女神フォリアの降臨を吹聴してくれたらしく、比較的皆好意的に接してくれる。
ありがたい事だ。
「しかしその様なものは…」
「無いですか?」
「馬の水飲み桶くらいですかなぁ」
今は村にいる馬はペルだけだから、昔使っていた桶を点検してからくれるという。俺は深々と頭を下げた。
そしてデルトガさんに謝罪する。
失礼な事を言ったのだから謝ったのだが、彼の方も謝罪を返してくれた。
そしてこの件は水に流す事とした。
今はいない者の事をとやかく言っている場合では無いのだ。
それから狩猟用の弓矢について聞いてみる。どうやら各家庭に一つはあるらしいが、矢の方が少ないらしい。
「獲物を捕らえれば回収しますが…ここの所獲物も少なく、矢を作るよりその日その日の食べ物を探す事に力を入れていましたので…」
いろいろ金欠だしなぁ。
デルトガさんには出来るだけ矢を作っておいて欲しいと頼んでおく。
「ユリウスにも騎士団の方から武器を
そのまま俺はユリウスが借りているという一軒家に行ってみた。
場所はすぐ分かった。
女子が集まっていたのだ。(チッ)
きゃあきゃあと笑い声がこぼれてくる。うらやまし…くないっ!
遠目に俺の姿を見つけた彼は、ファンクラブの女子達に手を振ってから俺の方へ歩いてきた。相手が俺なので、女子達からは文句は出ないが、エレミアがじろっとこっちを見ていた。怖い…。
「どうした?」
「ああ、やっぱり少し武器が欲しいんだけど、騎士団の方に頼む事は出来るだろうか?」
だってフォリアにも会わせたんだぜ。認めてくれても良いだろ。リール村に女神様が現れるって。
「その事だが、早く武器を手に入れたいなら、買った方が早いんじゃないか?」
「そんな金無いよ!女神の姿も見たろ?少し騎士団に働きかけてくれよ」
「だがなぁ…」
なんだ?何を渋っている?
ユリウスは口をへの字に曲げながら、腕組みをした。
「私は認める。実際にフォリア様をこの目で見たのだからな。ただ、一点わからぬ事がある」
「なんだよ」
「なぜ、
へ?
なぜフォリアがここの丘に現れるのかって事?まあ、確かに疑問だけど。
「フォルトナベルグ以外に女神フォリアが降臨した事は聞いた事がない。
うーん…。
なんでだろう?あの丘でカリンが捧げられ、俺を部屋ごとあそこに持って来たからじゃないのか?
でもそれなら他の村でもそういう事してれば、別の場所に現れる事でもあるよなぁ…。
ところで。
「ところでユリウス?」
「なんだ?」
「お前カリンが本命みたいに言ってたけど、女子みんなに言い寄ったりしてないよな?」
「ぎくっ!」
お前…いつか刺されるぞ。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます