第143話 銀の武器と銀聖水と!
ユリウスは返答に詰まった。
まぁ、騎士とはいえしたっぱの若造に高価な武具を与えたりはしないのだろう。辺境の警ら隊みたいなもんか。
「せいぜいがコレだな」
そう言って彼が胸元から何か取り出す。
一見するとリングに見える。
細い銀の輪だ。指輪にしてはやや大きく、親指でもゆるそうだと思った。
リングには細身のチェーンが付いていて首からかけるようになっている。
「月の意匠の御守りだ。騎士はこれを皆持っている」
階級が上がればもたらされる銀の品も多くなるらしい。
「いずれは私も銀の武具を手にするつもりだ」
ユリウスは強がった。
…いや、目標なんだろう。
コイツはコイツで夢や目標があるって事か。口に出すだけ俺よりマシだな。
「ここに女神様が現れると報告しても、援助は無いだろうか?」
「…難しいだろうな。神殿以外に女神様が降り立つことなど聞いたことがない。何故ここに奇蹟が現れるのか、せめて説明がつけばな」
そうか。
やはりそこか。
昨夜も聞こうと思いつつ、フォリアの泣きそうな表情に聞くのを
「銀の武器があれば、魔物は倒せますか?」
カリンが質問する。
騎士は勢い込んで答え始めた。俺と話す時とは態度が違いすぎる。
「もちろんです。私は
黒狼の死体に銀聖水をかけた時、白い蒸気の様な煙になって消えていったのがそれだろう。
て、ことは黒い霧に直接銀聖水をかけたら効果あるかも!
少し希望が出てきた。
フォリアに負担がかかりそうだが…。
いろいろ話していると、ふと冷たい風が通り過ぎていった。
秋が終わろうとしている。
「早く小屋にストーブを入れないとな」
「薪ストーブですね。嬉しいです。今度は小屋の中でお茶を入れたりパンを焼いたり出来ますね」
いいね。
楽しそうだ。
「私もそのパンを頂いても?」
ユリウスが口を出す。もしや小屋に入るための口実を作ろうというのか!
「…?ユリウス様、わ、私のいうパンは村で焼いた物を
もちろんカリンは料理が出来るが、ここの簡易的な竃では火力が弱いので、村で焼いたパンをもらってくるのだ。
要するにカリンが言っているのはトーストするってだけの話。
言われた方は目が点になっている。
いいね、ユリウス!
その顔好きだぜ。
つづく
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