第137話 女神様、しばし休憩を!


「抵抗?…戦って黒狼を倒した事か?」


「うむ。今までは奴らは少しずつゆっくりと侵食を行って来た。人々は不安な気持ちや恐怖から、住処を捨て逃げ出すばかりであったが…」


「俺達が立ち向かった、と?」


「奴にすれば意外であったのじゃな。いつもの手——作物を実らせず、植物を枯らし、狼に襲わせる。これが通用しなかったのだから」


なるほど。

しかもそれは奴が負のエネルギーだけではない事を示している。思考しているし、感情らしきものがあると言う事だ。


「だから手を変えて来たって訳か」


「……それだけではない」


「何?」


「私がいる事に気がついたのかもしれぬ」




心なしかフォリアの輝きが少し落ちた。本人も少し落ち込んだ顔をする。

もしかしたら、俺達を戦わせた事で更に奴を引き寄せてしまったと思ったのか。


「気付かれたっていいじゃないか。もう一度戦おう」


「うむ。心強いな、お前」


フォリアは笑いながら俺を小突いた。


「よいか、ヒロキ。奴は此処ここがこの地のかなめ——護りの拠点と気がついた。私の加護が強かろうと乗り込んで来るのはそのせいじゃ。しかと心得よ」


よし!

わかった!


「わかったから、何かスキルというか力をくれないか?」


「お前のっ、スキルはっ、あの部屋のっ、転移でっ、使い切っておるッ!」


ダメか…。

基本、銀聖水と武器しかないか。


でもなぁ、人を斬るのはちょっとなぁ…。


「仕方ない。フォリア、とりあえず銀聖水を増やそう」


「よかろう」


そう言って女神は姿を消し、俺は目覚めた。





正直なところ、カリンと融合した白金のフォリアを目にするのは好きだ。カリンに似ていて可愛さが増していると思う。


ただ、今夜の白金のフォリアは辛そうだ。力が足りていないのが、俺にも伝ってくる。


それでも、村を守るための銀聖水を作ってくれている。


たまにふざけることもあるけど、やっぱり人々を守る女神なんだなぁ。


『ふぅ…』


「どうした?やっぱり大変か?少し休んだらどうだ」


『ふ…そうしよう』



なかなか素直じゃないか。




つづく

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