第135話 女神様の本心!

フォリアの表情は、昼間ユリウスが見せた表情かおに似ていた。


そうか、あの時ユリウスは半分困っていたのか。


人に手をかけられない、甘っちょろい『救世主』に怒りを覚えつつも、『そう言う事』をしないで生きてきた者にを無理矢理やらせる事に困惑したのだろう。


そうか、あいつ困ってたのか。


だから今フォリアも困っているのだろう。


その顔を見ているうちに、その姿がみるみるうちに大人びて来た。俺達くらいの少女の姿になって止まる。


「な、なんで?」


「ふん、私とて自らの力も持っておるわ」


この姿をされると、ちょっと見とれてしまう。


長い銀の髪。

紫水晶アメジストみたいな澄んだ瞳。

透けるような白い肌にほの紅い唇。


以前と違うのは大人フォリアのように戦装束に身を包んでいる事だろうか。


蒼鉛色の兜に、左肩から左腕を包む籠手と革製の胸当てを身につけて、その下は足元まで覆う白と青の清廉なドレスを着ている。


「フォリアも戦うのか?」


「当たり前だ。私を誰だと思うておる。その昔は——」


「その昔は戦乙女と呼ばれた、か?」


俺の言葉に驚いたようにフォリアは、


「なぜ知っておる?」


と、少し高い声をあげた。


「今、リール村に神殿騎士団テンプル・ナイツの1人が滞在しているんだ」


俺は手短にユリウスの事を説明した。

(後でユリウスの前に姿を見せてもらわねば)


「だから、フォリアがずっと昔に人間だった事は知っている。皆の為にその身をもって黒い霧と戦うための神殿のいしずえになった——」


そこで俺は口をつぐんだ。

フォリアは泣きそうな顔をしていた。


「ごめん」


「な、なぜ謝る?別に、知っている者は幾らでもいる話だ」


だって泣きそうだったじゃないか。


俺は話を変えた。

まず知っておきたいことは黒い霧の事だ。


「それより黒い霧ってなんなんだ?いや、グロスなんとかって名乗ったぞ」


「何ィ⁈奴が名乗っただと⁈」


ボッ、っとフォリアの輝きが増す。感情が高ぶったのだろう。


「グロスデンゲイル——奴は——」



つづく


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