第126話 大商人の疑念!

オットーさんは大分サービスしてくれたらしい。けど、ここは素直に受け取っておこう。


豚一頭分の加工肉——ウインナーやベーコン、ハム。干し肉。

スーパーで売ってるようなスライスされてないヤツだぞ。

塊だ、肉のかたまり!


以前買った時は国語辞典くらいの大きさだったから、今回はケタ違いだ。


「良いんですか?」


俺の問いに、オットーさんは「むふふ」と笑った。


そうか、菓子パンを5倍で売るんだもんな。


「ところで相談だが、来週の市に200個は用意出来ますかな?」


わお。

頑張れば出来るかな?

欲が出てくる。


「も、もちろんです。よろしくお願いします!」


俺と大商人はガッチリ握手する。


「今度の支払いは何がよろしいか?」


「あっ!オレ、麦酒エール!!」


カールが飛び込んでくる。


えー?麦酒エール

いや、それよりも大事な物があるじゃないか。


「豚をで欲しいです」


オットーさんの目がキラリと光る。


「ふうむ?リール村には家畜がいないと見えますな」


その通りだ。

俺は手短に飢饉のことを話した。


「……飢饉の村で菓子パンが作れるのですかな?」


しまった!

正直すぎたか。

村に来たいと言われたらどうしよう。


そこへ可憐な声が響いた。


「家畜は全て女神フォリアに捧げたのです。そしてその見返りに奇跡を頂きました」


カリンが真摯な態度で答える。

それを見た大商人は無言で考え込んでいたが、


「まあ、良いでしょう。豚ですな。任せてくだされ」


と引き受けてくれた。





「良かった…」


とにかく次回の商談もまとまった。


「あー麦酒エールが良かったなぁ」


「今から飲みに行けばいいだろう」


「あっ、『銀龍亭』ね!」


ワクワクしている俺とカールに、エレミアが容赦ない言葉をかけて来た。


「何言ってんのよ!まずこの荷物をどうにかしなきゃ!!」


そうでした…。



つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る