第120話 騎士の武勇伝!

ユリウスがやたら丘に来るようになった。


初めはカリンが目当てなんだろうと警戒していたが、どうもそうでは無いらしい。


いや、カリンがお目当てではあるのだが、どちらかというと村にづらいのが大きな理由であるようだ。


俺と一緒にいれば女神・フォリアの調査をしていると思われて、女子も仕事の邪魔をしないようにするのだが…いかんせんこの丘も市に出す商品を作るために村の女性が集まってくるから効果のほどはわからない。


そういうわけでここ数日、この丘はご婦人方の集まりが良い。少し年上の女性はたくみにユリウスを手伝わせようとしたり、いつもは裁縫をしないエレミアも参戦したりと騒がしい。


「おい」


「何だ?」


声をひそめてユリウスが話しかけてくる。珍しい事もあるものだ。


「何で此処ここにも女性たちが集まるのだ?」


「村の為に商品を作りに来てくれているんだ。あー、ありがたいなぁ」


「お前ふざけてるだろ」


「いやあ、本当だって。今やこれが村の生命線だぞ。裕福な町の騎士様には分からんだろうが」


「俺だとて仕事で来ている。これまでも様々な町や村を見て来ている」


「仕事…騎士は魔物とも戦うのか?」


俺の質問にユリウスはキラキラの金髪をかきあげて「ふっ」と笑う。


「愚問だな。当たり前だ」


「ええっ?今までどんな魔物を倒して来たんだ?」


ちょっと興味がある。

いやかなり。


だって俺が見たのは変貌した狼だけだもん。他にどんな魔物がいるのか、興味ある!


俺がよほど目を輝かせていたせいか、ユリウスがたじろぐ。


「いや…その」


ん?


「魔物と戦うのは騎士の仕事ではあるが…」


おい、もしかして。


「もしかして、まだ戦った事が無いとか言うんじゃないだろうな?」


図星ィィィ!!

ユリウスの端整な顔が歪む!


「わ、私は機会に恵まれていないだけだッ!」


取りつくろい始めた。

慌ててるなあ。


「そもそもフォルトナベルグは神殿を据える街。魔物なぞおらん」


あー、あれか。

仕事としては魔物退治はあるんだけど、魔物が出てこない、と。


「でも剣は扱えるんだろ?」


「ふっ、当たり前だ」


お、立ち直った。




つづく

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