第109話 初めての伐採!

 鈍い音を立てて、斧は弾き返された。


 手が滑りそうになって、血の気が引く。


「ヒロキ、しっかりをにぎって」


「お、おう」


「先ずは水平に切り込みを入れるんです。深くなくて大丈夫。私の小指くらいの切り込みでいいんです」


 その例えはなんか怖いな。斧と小指が脳内でぶつかりそうだ。


 俺は余計な事を考えないように集中する。


 もう一度よく狙って、水平に斧をぶち当てる。


 重い手応えがあり、斧は木に食い込んだ。


「外す時に気をつけて!」


「わかった」


 ゆっくりずらして刃を抜く。力任せにやれば斧が飛びそうだ。


 もう一度、今度は上から斜めに振り下ろす。


「やった!」


 カリンが小躍りする。思い通りに刃が入ったのだ。


 しかし斧を外しても切り込みは外れない。(くの字に切り込みが入るはずだった)


「もう一度です!ヒロキ!」


「おう」


 俺は制服の上着を脱いで、白シャツの袖をまくる。


「せーのぉ」


 手に衝撃が走る。でもようやく木片が落ち、切れ込みご出来る。


「今度は反対側から同じような切り込みを入れます。ただし、位置は少し上にずらしてください」


 少し上ね。


「一度に倒れないよう、気をつけて」


 同じ手順を繰り返し、向かい合う2つの切り込みが入る。


「最初の切り込みの方へ向けて木を押して下さい」


 カリンの言う通りに幹を押すと——。


 今までそこにあった若木がゆっくりと倒れていく。


「おお!やった!」


「倒れましたね!」


 直径約15センチ。

 決して大きな木では無いが、俺の身長3つ分くらいの高さはあっただろうか。その木を切り倒してしまった。


 その後はカリンと2人で枝を落とす。

 先の方なんかほっそりしていて、なんか切り落とすのが悪い気がした。


 斧で幹を割るのには苦労しそうだ。枯れていれば折りやすいのだろうが…。


「これを斧で切り分ければいいのか?」


 するとカリンは首を振って否定する。


「ほんとは何人かで来て倒した木を村まで運ぶんです」


 そして村に1つしかないノコギリで切断して、そのあと斧で縦に割る。


「でもこれくらいなら…私達で運べるでしょうか?」


 そうだよ!

 そんなに大きな木じゃないから、運べそうだ。


 俺とカリンは先ずはまとめた枯れ枝と切り落とした小枝とを丘へ運んで、もう一度森へ。


 それから丸太(細)を2人で担いだ。まあ、これくらいなら楽勝だ。


 しかし、村へ運んだらカリンの父さんに苦笑された。


「これからは私達と行きましょう。これでは少々効率が悪いですぞ」


 そうだよなぁ。




 つづく

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