第99話 銀聖水とは!

 ようやく村の人々から解放されたユリウスを連れて、俺とカリンは丘へ向かった。


 村の入り口の門のところは、村中の女性達でいっぱいだ。みんなしてユリウスを見送っている。


 さりげなく彼女達に手をあげる仕草しぐさも絵になるから腹がたつ。


「…あれがリール村の聖なる丘か」


 遠目に見れば麦畑のつづく平地に、ぽこんと出っ張った小さな丘だ。


 頂上に俺の部屋。


 少し離れてカリンの小屋。


 カリンの小屋の外には作業台があるし、物干し台もある。


 聖なる樹とか石碑とか、そういうものはない。


 ユリウスも不思議そうな顔をしている。そしてカリンへ疑問形を投げかける。


「なんの変哲も無い、ただの丘の様ですが…?」


「まずは銀聖水を見てもらおうか」


 俺がそう言うとカリンもうなずく。そして小屋からペットボトルを持ってきてくれた。


 それは元はただの水が入ったペットボトルだったが、女神・フォリアが力を込めて今は魔を払う水になっている。


 薄く光る水に、ユリウスは目が釘付けになる。


「そんな馬鹿な…!」


 本物を見るまで銀聖水を信じていなかったのだろう。すごく驚いている。


「私は本物を見た事がある。銀聖水とは呼ばれてはいないが、フォリア様直下ちょっかの神殿においてのみ生成される聖なる水と同じ輝きだ…」


 前に聞いたことがある。

 神殿で清められた火や水は清めの力を持つのだと。


 ユリウスがツカツカと近づいてきて、俺の肩を乱暴につかむ。


「君はわかっているのか?これは重大な事だぞ!?」



 つづく

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