第69話 なぜに前を歩くのか?

『桜雪? そっちなの?』

 チョビさん、いつも僕の前を歩く…ので、よく肩すかしをくらう。

 クルッと振り返って、驚いた顔で鳴く。

 そして僕を追い抜いて、また前を歩く。


 ベッドへは僕より先に飛び乗る。

 そして、もちろん真ん中で丸まる。


 僕が寝ていると、ベッドに飛び乗り、僕の身体に乗り鳴く。

『起きて桜雪』


 電気を消しにベッドから降りるだけでスクッと立ち上がり僕の前へ飛び降りる。

『どこ行くの? 桜雪』

(すぐ戻るのに…)


 トイレも一緒に入ろうとする。

 だが…風呂場だけは入らない。


 ワシャワシャと洗ってやりたくなるのだが、身体を拭かれるだけで怒り出すのだ。

 素人の手には負えない。


 幾度か暗がりで尻尾を踏んだこともあるのだが、どうにも懲りないチョビさん。

 踏まれると怒って足に噛みつく。

 ベッドで先に寝ると足に噛みつく。


 なぜ猫とは、人の先を行きたがるのか?

 負けず嫌いなのだろうか…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る