第60話 必死なのは解る

 チョビさん、寝ぼけた…

 僕が足をかけている足置きから、いつも足を橋の代わりに渡って僕の腹の上へ移動するのだが…

 踏み外した…

「んぎゃっ…」

 落ちまいと爪を出すチョビさん。

 四肢から飛び出す容赦ない凶器。

 僕の脛から太ももに爪を立ててしがみつくチョビさん。

「チョビさん、落ちて…ていうか30cmくらいじゃん!!」

『桜雪、ぼく落ちないよ、頑張る』


 なんだかんだで登ってきたわけだが…

 もう僕の足は血だらけである。


 猫の運動神経…侮りがたし…。


 というかホントに痛い。

『僕、落ちなかったよエライ?』


 撫でろと頭を突き出すチョビさん…。

 悪気はないんだよな?

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