第59話 復帰する

「クロさん…」

 帰宅するとリビングのソファで丸くなる強大な『まっくろくろすけ』

 クロさんである。


『桜雪…おかえり』

 チラッと僕を見て「ンナッ」とひと鳴き。


「クロさん…玄関は飽きたんですか?」

『アソコ…最近寒いから…』


 夏が終わり、朝晩は涼しくなった、クロさんは家中を放浪する屋内野良ネコである。

 ごく狭い範囲の遊牧猫だ。


「クロさん…ブラッシングしますか?」

 僕がブラシを手に取ると目を丸くして、僕の前でゴロンと横になる。

「グルグル…グルグル…」

 僕の手足に額を擦りつけて甘噛み…気持ちよさそうである。

「痛っ!!!」


 しばらくすると、僕の足を噛む。

『桜雪、もういいよ…バイバイ』


 シタシタと部屋を出て行くクロさん。

 なぜ、クロさんもチョビさんも噛みついてブラッシングを止めるのか?

 ひと鳴きすれば止めるのに…

 久しぶりにクロさんに噛まれた。

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