可愛いきょうだいに愛されすぎてて困ってます

馬瀬暗紅

橘 楓という人物について

とあるきょうだいの朝の風景

「おはようございますお兄様。昨夜はあんなに激しくされるものだから、朝からくたくたになってしまいました。責任取ってください」


 朝起きると僕の上に薄いピンクのパジャマを着た人物が居た。といっても何も思わない。なぜなら目の前の人物ー橘楓たちばな かえでとこの僕、橘椿たちばな つばきは「きょうだい」だからだ。世の中には兄妹を題材にした小説が数多あるようだが現実でそんなことがあるわけがない。だから楓が何を言おうとそれは事実無根の妄言である。そんなわけで僕がとるべき行動は一つ、いつもどおり何事もないように振る舞うだけである。


「おはよう楓、とりあえず起きあがるのに邪魔だから僕の上から降りてくれないかな」


 僕はそう言ってベッドを降りてクローゼットに向かう。その時「きゃん、どこさわってるんですか。もうお兄様ったら朝から積極的ですね」という楓の言葉は聞かなかったことにする。着替えようとシャツに手をかけたところで視界の隅に楓がカメラを構えているのが見えた。


「とりあえずこの部屋から出て行け」


「いいじゃないですか。別に減るもんじゃないでしょう、それにここは私の部屋でもあるんですよ。どうして出て行かなくちゃ行けないんですか?」


「いいから出て行け、さもなくば実力行使にでる」


 こんなに脅しても僕の生着替え見たさに部屋に居座る楓に容赦なく蹴りをかまして部屋から追い出して即座に部屋の鍵をかける。一歳という年齢の壁は大きい。どうやら、昨日ホームセンターで鍵を買ったのはどうやら正解だったようだ。これがあるだけでいとも簡単にプライベートな空間が得られる。僕は鼻歌を歌いながらのんびりと着替えるのだった。


 僕が着替え終えてリビングに降りると楓が朝御飯の用意をしていた。いつも仕事で国内外を飛び回っている両親に代わって僕たちが家事をしている。楓が炊事で僕が掃除、洗濯も掃除の一環として僕がやっている。本当は洗濯も楓に押しつけようとしたのだが「お兄様の下着を私がお洗濯出来るのですか?何という至福なのでしょう」とかいって気持ち悪かったので熟考し洗濯されるよりは自分でしたほうがまだダメージは少ないと判断した結果、僕が止むなくする羽目になった。


「お待たせいたしました、お兄様。楓特製朝御飯です」


 食卓に次々と料理が並んでいく鮭の西京漬け、お味噌汁、白米、千枚漬け、デザートに枇杷が添えられている。


「「いただきます」」


 手を合わせて食べ始める。mgmg


「うん、今日のご飯もおいしいよ、楓」


 そう言って手を伸ばして楓の頭をなでててあげる。同じシャンプーを使っているとは思えないほどにサラサラな髪はあにの目から見ても相当に羨ましい。でもいつまでもなでる訳にはいかないので手を放す。


「もっと撫でてください、お兄様」


 楓の誘惑に耐えて食事を再開する。その後は何の問題もなく食事を終え身支度をし学校に向かう。楓とは一歳しか離れていないので去年こそ離れていたものの今年は同じ中学に通っている。つまり一緒に登校しなくてはならない。楓のような一見美少女と一緒に登校する男へ向けられる視線は耐え難いものがある。しかも楓のを知る人には生暖かい視線を向けられる。


 さあ、地獄の始まりだ。


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