第29話 対決
目の前に出されたスープ。しかも添えられているのは味覚の神が宿ったスプーン。
エマ「飲みなさいよ。熱いからスプーンで冷ますとよいわ」
逢音はじっとスープを見つめた。
そしてスプーンを使わず、直接カップに口をつけた。
エマ「ふふふふ。あはははは。本当にあなたはお人よしね。店主のことをそのまま信じるなんて!味覚の神が宿ってるのはスプーンじゃなくてカップのほうなのよ」
逢音「!…そ、そんな」
エマ「さあ泥棒、覚悟しなさい」
逢音「私を殺すの?」
エマ「最初はそれも考えた。でもさ、私が全能神になってもつまらないじゃない。私は神を操る側に回ることにする。あなたはもうアンティークショップに行く必要はないの」
逢音「どうするの?」
エマ「これから私の命じるとおりに動きなさい」
逢音「はい。わかりました」
エマ「あはははは、なぜみんなこのことに気付かなかったのかしら!この命令はオールマイティなのに!リスクは一回で済むのに!」
エマ「おっと代償クリアしなきゃね」
エマは席を外し、二階から下のリビングに向かって言った。
「おばさま!玄関の雪かき、私がやりましょうか?」
母親「あ、お願いできる?」
エマ「はーい」
エマ「はい代償クリア。簡単ね。さて逢音さんあなたには五感の神になってもらって私の命令に従ってもらうわ。今からそのカップはあなたのものよ」
この瞬間、味覚の神が宿ったスプーンの所有権は逢音に移った。
逢音「……ついに、ついに手に入れた。五感の全てを…これで叶えることができる瞳美の望みを…」
エマ「逢音。あなたはこれから私の命令どおり動くのよ。神の道具を壊したりはさせない」
逢音「信じられるのは人より神か…」
エマ「?」
逢音「私はあなたの能力にかかってはいなかたんだよ。」
エマ「なんだと。おまえはカップからスープを飲んだ。スプーンを神の道具だと思って…」
逢音「私はカップに口をつけただけ、スープは飲んでいない」
エマ「なぜ?あなたはスプーンを疑っていたんじゃないの?」
逢音「私は4つの神の主人だったんだよ。神の忠告は聞くもんだね」
そう、逢音は家を出る前に自室にコートを取りに行っていた。その時にビビ達から聞いたのだ。「スプーンを疑え」と…。
逢音「でも私には5つめの神を手に入れる術はなかった。でもあなたが自らそれを与えてくれた。あなたは神のチカラを操るために神を失った。私は神のチカラを葬るために神を得た。そういう力学が働くんだよ。この世界では」
エマ「そ、そんな…」
逢音「おそらくこれが真実」
エマ「私をどうするつもり?殺すの?」
逢音「そんなことはしない。する必要もない」
逢音はコートのポケットから視覚の神のメガネを取り出した。
逢音「瞳美からもらったチカラ…これを使わせてもらう」
エマ「!!」
逢音「すべてを忘れてイギリスにお帰りなさい。そして瞳美の分まで生きてね」
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