第27話 ニセモノ

エマが瞳美に命じた代償がなんだったのか。それがエマに能力を知られるきっかけとなったのか。

これ以上の推論は無駄だった。

(エマが祭壇で遺影を抱きしめて流した涙。あれは本物だった。エマは本当に瞳美を好きだったのだ…だとするとちゃんと事実を話し、自分が瞳美の意思を継いでいることを理解してくれるのではないか)

一瞬、逢音はそう思った。だが店主のあの言葉が頭をよぎる

「手は触覚の神のチカラ以外にも君にない武器を持っていることを忘れないことだ…」

「現実と真実の違い。君は現実を理解しているが、知らない真実があるんだよ」

(まだだ、まだ私は真実にたどり着いていない。全てを…全てを知ったうえで五感の神のチカラを手に入れるんだ。だからエマと会おう。神のチカラを頼らずに…)

ビビ「逢音…どうする?」

逢音「明日、エマと会う。あなたたちは連れていかない」

ビビ・ガガ・ネネ・テテ「ええええええー!」

ガガ「危険だよ!逢音」

逢音「わかってる。でも私がスプーンを使わなければいいこと。五分の条件でないとエマは真実を語ってはくれないと思うんだ」

ビビ・ガガ・ネネ・テテ「……」

逢音「まだ、冬休みの課題に手をつけていなかった。今夜は勉強する」

ビビ「逢音…なんか変わったね」

逢音「瞳美や園子に比べたらまだまだ劣等生だよ」

ビビ「いや、そういう問題じゃ…」

その時、リビングから母親の声がした。

母「逢音―!晩ごはんだよぉー!今夜はお寿司だよー!大トロなくなっちゃうよー!」

逢音「いやあああああー」

シャーペンを放り投げて、リビングへと駆け下りていく逢音。

ビビ「あ…変わってねーや」

ガガ「ふふふ。逢音らしーや」

テテ「あのさあ、ちょっと気になってることがあるんだよ」

ビビ・ガガ・ネネ「??」

テテ「店主が見せたあのスプーンな。あれ本物かな?」

ネネ「どしてどして?ちゃああああんとRiRiって刻まれてたよ」

テテ「それくらいの細工はできるだろ。あのなあ…倉庫で一緒にいた時のRiRi感覚があのスプーンからは出てこなかったんだよ」

ビビ・ガガ・ネネ「!!!」

ビビ「ニセモノってか?」

ガガ「ありうるな。現に店主はあのスプーンで能力使わなかったし…」

テテ「だとしたらやばいぜ」

ネネ「逢音に知らせなきゃ」

ビビ「ニセモノだとしても本物の味覚の神はどんなモノに宿ってるかだ…」

ガガ「普通にコーヒーカップとかお皿とかじゃないの?」

ネネ「そうそう。基本私と同じ容器の構造だと思うよ」

ビビ「まあ食事に一切手をつけなきゃいいんだが…なんか悪い予感がする」

テテ「いずれにせよ。逢音一人で行くのは危険じゃないか」

ビビ「説得してみよう」

その夜、寿司をたらふく食べた逢音は、曽宮家からのいただきもののお菓子にまで手をだし、満腹状態でリビングのソファで寝た。

4神たちのいる二階に上がってくることはなかった。

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